13.郷と守の体験談
白虎から人間に戻った郷が守と徒歩で、橋を渡って大きな城門を通ると、広場に出た。
広場の手前では、言い争っている、隼人と南、そして慎と雪の姿があった。
隼人と慎は、郷が人間の姿で現れると、すかさず傍にやってきて、肩に腕を回すと、まず隼人が挨拶がてら、拳を一発腹にぶち込む。
すぐに、その後、慎にも同じように、拳を腹に一発くらった。
「おい、何するんだよ。二人とも。」
郷はお腹を抑えて、痛みに顔をしかめる。
「「いいか郷、非常時以外は、ぜったい南(雪)の前で、白虎になるな!!!」」
「はっ???」
郷が疑問顔でいる間に、二人は城の中に行ってしまった。
見ると南と雪も、今度はなぜか、微妙な顔で郷を見ていた。
「なんなんだ???」
守は大きな溜息をつくと、城に入って行った二人の後を追うように、雪と南の後について歩いて行く。
「取り敢えず行こう、郷。」
「ああ、でも、なんで俺が殴られるんだ?」
「僕からの忠告。男の嫉妬は怖いから、確かに非常時以外は、白虎にならない方が良いよ。」
「ああ、別にそれはかまわないが、何でこうなるんだ、納得いかん。」
郷にはまったくわからないらしく、しきりに頭を傾げていた。
二人が話ながら南と雪に追いつくと、二人は突き当りの部屋に入った。
郷と守が部屋の中に入ると、そこには魔術師らしい服を着た白髪の人物が待っていた。
テーブルには、隼人と慎がすでに座っていた。
「はじめまして。私はこの城の筆頭魔導士で、メリクリンと申します。」
メリクリンは、守、郷、南の順に挨拶した。
三人もそれぞれ挨拶を返す。
席を勧められ、メリクリンが準備していてくれた食事をとりながら、まずは守が、みんなと別れて洞窟に入った後の事を話を始めた。
「僕たちが洞窟に入るとすぐに、何でか入ってきたところが閉じてしまって、仕方なく先に進んだんだ。」
雪が何か虫とか蛇とか危ないものに、遭遇しなかったか心配して聞いたが、守たちの洞窟には、何も出なかったようだ。
ただ何でか延々と洞窟が続いていたようで、かなり歩いた所で、やっと神殿らしい所に出たそうだ。
二人もそこで、光っているテーブルを見つけ、その上を見る。
雪や慎と同じように、何やらミミズが這い回ったような、文字が描かれていた。
当然、二人はそれを見た。
「「汝、欲するものを思い描け!!!」
なんで読めるんだと、二人が驚いた途端に、光に包まれていた。
気がつくと、物凄い量の情報が、頭の中になだれ込んできた。
郷はその量に圧倒されて、その場に座り込んだ。
気がつくと、自分は今以上にがっしりした体つきで、地方の領主館にいた。
民は一生懸命に働き、自分もそれを助け、自分でいうのもなんだが、領民に慕われるいい領主だったようだ。
その領主館には、年の離れた妹がいて、俺はその妹が可愛くて、しかわいくてしかたなかった。
自分でいうのもなんだが、まぁ、これは重度のシスコンだな。
でも俺から見ても、小さくてめちゃくちゃ可愛いいのなんの。
妹でなけりょあ、嫁にしてしまいたいっていう、あいつも気持ちが手に取るようにわかったよ。
郷の告白に、話を聞いていた他のメンバーが若干引いていた。
「おい、隼人あいつ妹いたか?」
「いや、確か、兄貴しかいないはずだ。」
二人はこそこそと話して、それは良かったと安堵していた。
郷は二人のひそひそ話に気がついていないようで、先に話を進めていた。
そんな仲がいい兄妹のもとに神殿から、使いが現れたんだ。
どうも俺の妹に、聖女様の力があるみたいで、神殿に迎えたいって、それはもうしつこくてな。
最後は、王命で無理やり、連れて行かれてしまった。
あいつは、結局、妹が心配で、まだ若い息子に領主の座を譲ると、神殿を警護する騎士になったんだ。
それで最後まで妹のそばを離れなかった。
まっそんなところだ。
「その妹さんって、まさか・・・。」
雪が聞きにくそうに、郷に話をふる。
「いや、流石に俺の方が年が上だったんで、老衰でなくなった。亡くなるときに、妹に手を握られて、天にも昇る気持ちのまま昇天したよ。妹もその時は、確か60歳は超えていたと思うぞ。」
雪はこけた。
なんか心配して損した。
みんなの目が守に向く、守は溜息を吐くと、
「僕も郷と同じように、物凄い量の情報が、頭の中になだれ込んできて、気がつくと、・・・。」
守はチラリと郷を見ると、
「「「「「気がつくと」」」」」
「領主館にいたんだ。」
なんでか、郷がびっくりしている。
「えっ、もしかして郷が言っていた領主館?」
南が信じられないという顔で聞いてきた。
「そう、今まさに郷が話していた領主館だよ。」
郷の目が信じられないものを見たように、見開かれている。
「じゃ、守はもしかして、郷の息子だったとか。」
隼人がさりげがなく聞いて来る。
「いや、息子じゃない。」
「わかった、じゃ、父親か?」
「もうあの時の領主館には、父親はいなかった。」
郷がさりげなく否定した。
「ま・・ま・・・まっ、まさか、郷のお嫁さん。」
雪が飛んでも発言をする。
「おい、守は男だぞ。」
慎がとなりから突っ込んだ。
「はずれ。みんな聞きたい?」
5人は頷いた。
「郷の年の離れた妹だよ。」
4人は固まった。
郷は唖然としたまま、硬直している。
しばらくして、やっと一言発した。
「うそだろ。」
「本当だよ。だからあの時、そのーー、姿を見せたく、なかったんだ。」
「お前、俺をからかって、楽しんでいるんだろ。」
郷が必死に否定している。
慎と隼人は郷のその気持ちがなんだかわかって、そのまま、だまって二人のやり取りを聞いていた。
守は目線を下に向けた後、目をつぶると、その後には、小さくて可愛い女の子が現れた。
その子は郷が言う通り、華奢で滅茶苦茶かわいい。
まさに男が守ってやりたい、可愛い女の子ナンバー1だった。
「俺のガイア。」
守はいつの間にか、金髪碧眼のがっしりした男になって、ガイアを抱きしめていた。
『ウワー、頼む勘弁してくれ、アポロン、もう離せ。』
郷は、元が守のガイアに抱き付く、アポロンを必死に宥めた。
「アポロン兄さん。」
元は守のガイアが潤んだ瞳で兄を見る。
他の4人は、美しいはずの兄妹の再会の場面を、とーても複雑な心境で、見ていた。
「美しいはずの兄妹の再会なのに、元が郷と守だと思うと・・・。」
隼人がぼそりと呟く。
「「「確かに。」」」
後の3人も同意した。
しばらく抱擁した後、アポロンはガイアを腕から離すと、
「何かあれば俺を呼べ、ガイア。どんな望みも、すべて俺が叶えてやる。」
「ありがとう、アポロン兄さん。」
アポロンはガイアの笑みに、微笑み返すと郷に戻った。
「ウワー。守相手に愛しい気持ちとか、いやだぁー。勘弁してくれー。」
戻った郷は、慌てて守を離すと同時に、頭を抱えている。
座っていた慎と隼人が立ち上がると、郷の肩を叩いた。
「「気持ちはわかる。」」
それと同時に、二人は心の中で思った。
『南(雪)が女の子で良かったぁー。』
「僕だってイヤですよ。」
守はそう言うと、南の隣に腰かけると、お茶をすする。
南は守のその様子を、見て複雑な気持ちだった。
自分達は、あの洞窟に入りながら、何も守護するものを得られなかったのだ。
「そう言えば、メリクリン筆頭魔導士さん。」
唐突に守が、メリクリンに話しかけた。
「メリクリンで結構です。」
メリクリンは、冷めてきたお茶を啜ると、そう答えた。
「じゃ、メリクリン。今、神殿はどうなっているんですか?」
メリクリンは、溜息を付きながら答えた。
「はっきり申し上げます。もう神殿の組織自体は残っていません。何百年も前に、なくなりました。」
「そう、やっぱり。じゃもう一つ質問。メリクリンは、あの遺跡をなんだと思ってる?」
「えっ、それは、私たち魔術師が、使役する使い魔を得る場所だと、師匠に伺っていますが?」
メリクリンは違うのかと問いかけている。
「そんなことに、なっているんだ。」
雪は守の発言に、目を見開いている。
「えっ、てことは、あの遺跡がなんの為のものか知っているの?」
「もちろん、ガイアが知っているからね。」
守は今すぐに真相を話せと言う目で、自分を見ている雪に、ちょっと待って、というと、南たちに声をかけた。
「僕たちと別れたあと、南さんたちはどうしたんだい。」
守の質問に、南が語り始めた。




