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~番外編 海蘭擬~

番外編です。

未鍵さんの話が出てきたので、補足を入れようかなと言う事で、ノリで書きました。


いつもより短いですが、読んで頂ければ幸いです。

薬事さんの過去を聞いてから次の日、俺はふと疑問に思ったことを薬事さんに聞いた。

「そう言えば、薬事さん。」

「何でしょうか?」

「ここに生けてある花って、どこから仕入れてくるんですか?」

「やっぱり、気になりますか?」

いつかは聞いてくるだろうとは思っていたと言うような顔で、俺に問い返してくる薬事さん。

「気になりますね。」

頷きながらそう答えれば、薬事さんは苦笑した。

「立ったままで話すのはなんですし、厨房の方に移動しましょうか。あそこなら、椅子がありますし。」

「はい。」

俺がまた頷くと、それにこの時間帯は、お客様が来ない時間帯ですしと薬事さんは続けて言った。

その言い方に俺は苦笑する。

「すっぱりと言いますね。」

「そうですか?本当の事ですし、別に嘘を付く必要はないでしょう?」

「まぁ、そうですよねぇ。」

正論を言われてしまい、俺は言い返すことが出来なくなり、苦笑しながら妥当な言葉を返す。


* * *


「さて、いつから気になってたんですか?」

椅子に座ってすぐに、薬事さんは聞いてきた。

「えっと、絶滅危惧植物であるはずの松葉菊が、この“Lösung”に飾られていたと言うところで。」

「昨日の事じゃないですか。……って、まぁ松葉菊が出てきたら、そう思いますよね。」

俺は大きく頷く。

「えっとですね……。なんと言うか……二階の説明からしましょうか。」

「は、はぁ……。」

こんなに言葉を濁す薬事さんは初めてなので、俺は戸惑って間抜けな声で返す。

「……着替え室へ行くための廊下の奥に階段があるのは知っていますよね?」

「はい。それぐらいは。」

当然ですと目で伝えれば、薬事さんは頷いた。

「この店……“Lösung”の二階はとても不思議でして、花の栽培室になっているんですよ。」

「……はぁ?」

俺は驚いて、素っ頓狂な声を上げた。

「まぁ、そう思いますよね。でも、本当なんですよ。」

「……なんかもう、ここは……“Lösung”は不思議過ぎますね。……二階丸々栽培室なんでしょう?」

ええと薬事さんが頷く。

「私も未鍵さんに栽培室があると言われて、二階に連れて行かれた時は、驚きましたね。」

「……なんか未鍵さんらしい。」

俺が思ったことをそのまま口に出せば、薬事さんに苦笑された。

「まぁ、未鍵さんは行動パターンが読めないお茶目な人でしたからねぇ。」

「それ、褒めてるんですか?」

「ふふ。どうなんでしょう?」


ーー薬事さんの目が笑ってない気がする。


俺は言葉をどう返せばいいか分からず、唯々苦笑を浮かべるしかなかった。

「……すみません。少し、過去の事を思い出してしまいまして。」


ーー一体何をしたんですか未鍵さん!


心の中で突っ込みを盛大に入れながら、俺はそうですかと言葉を返す。

「……まぁ、あの頃は未鍵さんに振り回されたお陰で、学んだ事は多かった気もしますね。」

「……本当に、何をされたんですか。」

多分俺の今の顔は、呆れ顔になっていることだろう。

「そうですねぇ。私が“Lösung”に働き出して、一週間ほどたったある日……。」


* * *


「薬事君!新しいメニュー作ったので、薬事君が作ってくれませんか?」

僕がカウンターを布巾で拭いていた時、急に未鍵さんが話しかけてきた。

「そんなに慌てて……まぁ何時もですけど、どうしましたか?」

「だから、新しいメニュー作ったから、薬事君作って下さい。」

僕はため息をついて、未鍵さんに向き合う。

「僕は学校の調理実習でしか、料理を作った事が無いので、作れません。なので、未鍵さんが自分で作ってください。」

「それは知っていますよ。前に聞いていますし、自分でも味は確かめてます。でも、薬事君の料理上達のきっかけになると思いまして……。もし失敗しても、自分で食べれば問題無いですし。」

「……今さらっと、重要な事言いませんでした?」

冷静に冷静にと心の中で、自分に言い聞かせながら、未鍵さんに聞く。

「言ってないですよ。じゃあ、厨房に行きましょうか。」

「えっ?どうして、僕が作る事になってるんですか……って、未鍵さんが教えてくれるんですか?」

珍しい事もあるものだと未鍵さんを見れば、未鍵さんはきょとんとした顔になっていた。

「そんな訳無いじゃないですか。料理なんて、独学ですよ。独学。」

「……ですよねぇ。」

期待した僕が馬鹿だったと、大きなため息をつく。

「どうしたんですか?……もしかして、悩みですか?」

未鍵さんが僕の顔を覗き込んでくる。


ーー悩みの原因は未鍵さん、あなたですよ。


そんな事を頭の隅で思いながら、僕は違いますよと返す。

「そうですか?……じゃあ、厨房にいきましょう。」

「え?……うわぁっ!」

未鍵さんは僕の後ろに回って、背中を押して厨房に連れて行かれた。

「ちょっ、未鍵さん!強引ですよ……って、物凄い数の材料!」

厨房の入り、キッチンの方を見れば野菜やら何やらが沢山置いてあった。

「ふふ。はい。ここにメニュー表置いて置きます。」

未鍵さんの声を聞こえ、机の上に紙の置く音がしたので、後ろを振り返ると、厨房のドアが閉められていた。

「未鍵さん!」

焦ってドアノブを回すが鍵を掛けられており、ドアが開かない。

「頑張ってくださいね?上手く作れたら、教えて下さい。ここ、開けますので。」


* * *


「……とまぁ、こんな事がありましたね。」

「結局どうなったんですか?」

「そりゃまぁ、上手く作れるまでずっと厨房でしたよ?」

薬事さんが苦笑する。

「……なんか、こう……はい。」

俺はなんとも言えず、言葉が出てこない。

「気にしないで下さいね?今となっては、いい思い出なので。」

「そうなんですか?」

ええと薬事さんは、大きく頷いた。

「そんな事があったお陰で、料理が上手くなったのも事実ですしね。」

「あぁ、なるほど。」

俺は複雑な気持ちで、頷いた。

「……他にもそんな事が、あったんですか?」

「週に一回は、必ずありましたね。」

俺は苦笑する。

「ふふ。……他の話、聞きますか?」

「薬事さんに差し支えがなければ、聞きたいです。」

薬事さんは、苦笑している俺を見ながら、優しく笑って未鍵さんとの過去を話し出した。


結局栽培室の話は、何処かに消えてしまっていたが、栽培室に俺が入る事になるのは、また別の話。


今日は、未鍵さんと薬事さんの過去の話をずっと聞いていた……。

誤字、脱字、感想などあれば、コメントよろしくお願いします。


海蘭擬の花言葉は、正直、偽りのない心、包容力、過去の思い出、ですね。

今回は過去の思い出として、この小説を書けせて頂きました。

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