換金=鱗
さて、ここは街中なのだけど。
先ほどの話し合いに口を出さなかったのが幸いしたのか、あの後すぐに熊巨人さんとはお別れし、オッサンと二人のんびりと街をお散歩中です。
「マジュ、何が食べたい?この国は魚介類が新鮮でねぇ……っと先に洋服や靴を買った方が良いかもしれないね」
うぅん、まぁ確かにね。私この世界に来たときに来てた服しか持っていないし……自分で言うのもなんだけども、はっきり言って灰色まっしぐら!!
「オッサン、じゃなくてビエネ?お金はどうするの?」
繋いだままのぷにぷにの手のひらを撫でながら、問いかけつつ……ちらりと右手首を見ればそこに光る銀色の腕輪が一つ。
「お金かぁ、でも……お金は此処には無いからねぇ」
「え?」
「今手元にあるのは、いつの間にか住処の床へ傷んで剥がれ落ちた鱗が二枚。これを換金します」
お金無いの?!っと驚いてオッサンを振り返るのと、奴が繋いでいない方の手をポケットへ突っ込むのは同時だった。そしてごそごそしていたかと思ったら、指に挟んでつまみだしたのは二枚の鱗。
「鱗?傷んでるのに、売れるの?」
まぁ、これだけ近くで見ても傷んでる風には見えないから大丈夫なのだろうと思うけど。
「マジュ……竜の鱗って言ったら武器や秘薬の材料にもなるし、とっても高いんだよ?」
ふぅん……そんなふうには見えないけどねぇ?
「じゃあまずはギルドに行こうか?」
見渡す限り屋台型の店が何軒も立ち並び、人の賑わいもお昼時なのでピークっぽい。
「ビエネはギルドのある場所知ってるの?こんな人ごみの多い所を長いこと歩くのは正直嫌なんだけど」
だって……見た限りじゃこの世界の人間って皆背が高いし、迷子になったら小さい私はもう見つけてもらえないような気がする。
「それじゃあ、こうしようか?」
っえ?いやいやそう言う意味じゃあ無いのですが……と主張する前に抱き上げられ
「……気が付けば、ビエネの柔らかな腕に腰掛けて居りましたトサ」
じゃなくて!
「ちょっとオッサン!?恥ずかしいから下ろして!!」
いくら自分がミニマムサイズだとしてもこれはない!街中で、しかも腕輪のせいでなんとなく目立っているっぽい状況の中オッサンに抱き上げられたら私だけ頭一個分飛び出てさらに目立つじゃん!!
「え?何か言った?最近は年のせいか耳が遠くて……」
「……あ、そう」
……そもそも普通に聴力が衰える生物には絶対、竜は含まれないと思うんですけど。
どうせ何を言ったところで聞きやしなそうなオッサンに文句を言うのはもう諦め、私は気が付けば街の真ん中でぽっちゃり系の夫(氷竜)に抱き上げられドロ甘な視線で見つめられたまま……目的地に到着するまでの間は、どこまでも続く青空を見上げ現実逃避に勤しみましたトサ。




