表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぽっちゃり氷竜  作者: 草紅葉
7/22

空と休憩と約束


 「……ふぁ」


 あぁ、つまらん。

 ここは上空数千メートル雲の上で、ビエネの首に吊るされた籠の中にいる私は一人……正直暇すぎて暇すぎて眠くなってきた。


 「籠って、蓋付きだし……ビエネトールも空も見えない」


 視界には、中身が少し減った骨付き肉の飛び出た革袋と自分の入っている籠の内側だけ……。


 「何てつまらない空の旅……」


 何もすることがないと言うのもある意味疲労がたまると思うし、雲の上で吹きかう風が強すぎて、思い切り叫ばないとお互いの声も届かないものでまったく色んな意味で疲れます。


 「マジュネッタァ!!そろそろ休憩しようかぁ!?」


 自宅、と呼べるかは分からないけどあの洞窟を飛び立ってどれほどの時間が過ぎたのか……うとうとしていた時間の方が長すぎてあまり覚えていないけど、やっと知らない国へ降り立つときがやって来たらしい。

 

 「了解!!」


 あ、ちなみにあの熱地帯はもう通り過ぎたので氷も解けてなくなってしまった。と、言うわけでどこかの国のどこかの町へ食事をとりに行くらしい。


 「……普通、あんなに大きな竜が町へ降りたらパニックになると思うんだけど」


 大丈夫なのだろうか?







_____






 どぉしん、とか、ずどぉん、とか……降りた時の衝撃音はそんな感じだったと思う。


 「……おぉい、ビエネトール?早く出たいなぁ」


 返事はない。


 「放置……?」


 もう少ししたら自力で這い上がって出てやろうとか考え始めた頃……何かが籠にぶつかった。

 しかも何か話し声も聞こえて来たし、え?ビエネトールだよね?


 「……」


 どきどきと波打つ心臓を押さえ上にある籠の蓋が開くその瞬間を待つ。

 すると以外にも簡単に、かぽっと気の抜ける音が聞こえたかと思えば……籠の中にはポカポカと暖かな日差しが差し込んできた。


 「マジュ、待たせてごめん。今出してあげるからね」


 ……散々待たせておいて、マジュ?そんな呼び方を許可した覚えは……


 「オッサン、その呼び方」


 「あぁ、前にも言ったと思うけど僕ら以外の生物が存在している空間では」


 話しながら器用にも私の両脇に手を添えて引っ張り上げるオッサンは、わざわざ視線を合わせ


 「絶対に、名前を呼んではいけないよ?」


 「……あ、うん」


 私は、文字通り地に足のついていない状況のまま……ゆっくりと頷いた。


 「誰に聞かれるかもわからないし、外では愛称で呼び合うことにしよう。名乗るときは、氷竜の妻ですと言えば良いからね」


 あ、はい。

 オッサンの妙に真剣な眼差しを向けられ、私は反抗など出来るわけもなく。


 「じゃ、これは夫婦の約束だからね?」


 「……はい」


 そう返事をしてやっと、私の両足は大地を踏むことが許されわけだ。





 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ