竜番室
「あの、この服……やっぱり止めません?」
「あら、どうなさったのですか?とてもお似合いですのに」
お似合いですのにって…どこがだよ!
「いや、でもこれ」
どう見ても、サイズが子供用じゃね?! 一見お姉さんが着ているドレスと同じもののようにも見えなくはないが、わたしが着て隣に立つとその差は歴然で。
「本当にお可愛らしい限りですわ」
うぅん、お姉さんは本気らしい。
「はぁ……も、良いです。良いんで、おっさ……じゃなくて、ビエネでもなくて、氷竜はどこにいます?」
「まぁ!そうですわね、蜜期ですもの。旦那様を恋しく想うお気持ちは私も同じですわ」
「……あ、はぁ」
「けれど氷竜様は現在、私の夫と別室にてお待ちいただいておりますの」
ん?お待ちいただいておりますの?と言うか良くおっさんが言うこと聞いたな。ある意味凄い偉業だと言える。
「あの、良くおっさ、じゃなくて氷竜が貴女の言うこと聞きましたね。良ければコツなんかを教えて貰えれば……」
こんな機会、次にいつくるか分かんないからね。
今のうちに聞いとかないと、
「大人しく……とは参りませんでしたが。世界中、どこの家庭の幸福も、妻がいかに上手く夫の綱を操るかにかかっております。相手が竜族ならば、特に必要不可欠な技術ですわ」
え……?
「そして、新しく竜の伴侶となった方には竜族の教育をさせて頂くことが仕来たりてございますので」
お姉さんは、一旦そこで言葉を切り片手を出入り口へ向け
「準備は整っております。参りましょう?」
だから、どこへ?
ポカンと口をあけ、お姉さんを見上げたまま
「これより数日は、私と共に竜番室へ篭り必要な知識や竜族特有の礼儀作法などを学ぶこととなります」
はぁ、そうですか。それで、オッサンとはいつ会えるわけ?
「故に、数日は決して旦那様にお会いすることはなりません」
「……」
えっと、会えないって、オッサンに会えないの?
疑問は多くて頭の中は え? とか ん? とかそんな感じだったけど、体格差故か私は腕を掴まれ引きずられるまま室外へ連れ出され
「さ、此処が竜番室です。美しいでしょう?竜は伴侶を得て住処を改める際、敷地内に必ず一つこの竜番室を用意します」
お姉さんは、それはもう幸せそうにこの部屋の素晴らしさを語り続けているけど……私には結構派手すぎるかも。
だって、壁は真っ白な……なんだろ?貝殻みたいなものが敷き詰められて、真ん中に金で模様が刻まれている。ここまではまぁ、可愛いけどさ。床は何の動物の毛か知らないけど絨毯のせいで足が埋まるし、歩きづらっ!