大金
「ん、そりゃあ皆厄介ごとには極力関わり合いになりたくないからねぇ」
厄介って、オッサンは自分のことだろ!!
「でもお蔭で誰もマジュに関わろうとする生き物がいなくて僕は嬉しいけど」
……あ、そうですか。もうこの話については諦めよう。
「それで?どこか良さそうなお店聞けた?」
自分の腕にはめられた、私には若干大きめの銀色の腕輪をくるくる回しつつ聞けば
「うん。ここを出て少し歩くけど、まずは食事をして、それから服屋さんへ行こうか?」
柔らかな口調と共に差し出された手のひらを見て、あ、繋ぐのね?はいはい。
「お金は受け取った?」
手を繋いで二人でギルドの出入り口へ進み、オッサンの反対側の手を見れば……
「え?」
「どうしたのマジュ」
何それ、オッサンはサンタクロースにでもなるつもりなの?
「ビエネの鱗って、二枚しか無かったよね?しかも少し傷物で」
「そうだよ?それがどうかした?」
え?どうかしたってオッサン……少しは遠慮しろよ。それいくらあるの?
「……別に、私は良いけど。それ持ったまま移動するの?」
「これ?うぅん、預けられる所もないしねぇ…知り合いの家についたらそこに置かせてもらおうか?」
何でもない事のように何かの皮で出来た大袋を片手で持つオッサンを見て、頭を抱えたくなる。銀行とかないのか?まぁ周囲を見てもあまり文化が発達している感じでもないしなぁ。
「盗まれないように気を付けてね?」
「…うん。でもマジュ?竜から何かを盗むのはまず無理だと思うけどなぁ」
う、確かに。どんなファンタジー物の小説を思い出しても人間やその他の生き物が竜相手にどうこうなんて話は、あったとしても命を懸けた大長編系が多いかも。
オッサンも若干呆れたような表情をしてこちらを見ているし。何となく恥ずかしくなってきた。
「ビエネ!もういいから早くご飯食べに行こう!」
無理やり話題を変えて、私はビエネのぽってりした暖かな手を力を込めて握り直し、歩き出した。
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