出会う
「……誰?」
目を覚ますとそこは自宅ではなく、日本百景にでも選ばれていそうな美しい雪山で……目の前にはぽっちゃり系のオッサンがいた。
「……ええっと、僕は氷竜だけど。君は?」
ぽっちゃり、触れればぽちゃぽちゃして波打ちそうな豊かなお腹を押し潰し屈みながら、雪の上に横たわる私へ名乗り、問いかけるオッサン。
可愛いな、ポッコリと突き出たお腹を見つめ……触れてみたい衝動に駆られる二十代前半の乙女が一人。
「あの、とりあえずそのとっても魅力的なお腹に触れても……良いですか?」
聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の悔いでしょう!だって、その揺蕩うぽっちゃりお腹が、さぁ触ってごらん?その瞬間、君を夢の世界へご招待しよう!と私を誘うのだもの!!
「……え?君、大丈夫?」
何か聞き間違えたような、困惑したような表情で私を見つめるオッサンを見て……今更違和感が。
「やっぱり……僕の住む山に人間の、しかも若い娘さんが迷い込むなんておかしいと思ったんだ」
そう言って、深いため息を吐くオッサン。
……良く見れば、このオッサン髪は青いし服は神話の神様みたいに長い布を巻きつけただけだし、本当に今更だけど此処雪山だし、夢の中で夢でも見てんのかな?
「とりあえず……ここじゃあ人間の君には寒すぎる。凍死してしまう前に、僕のお家へおいで」
勝手にぶつぶつ独り言を呟いてぷよぷよした柔らかそうな顎肉を揺らしていたオッサンは、そのぽっちゃりした身体のどこにそんな筋肉が?と聞きたくなるほど軽々と自然に私を抱き上げ……どこへ向かうのかも知らせぬままえっちらほっちらと歩き出した。
「……ふふ、ふふふ」
ぷよぷよ、ぽよぽよ、ぷるんぷるん……足を進めるたびに揺れる肉付きの良い腕の中。一方の私は、抱き上げられ心地抜群の柔らかな脂肪の感触を心行くまで楽しんでいるのだけど……ふとにやつきながらオッサンを見上げれば何故かヤツは憐れんだ眼差しでこちらを暖かく見守っている。……何故だ?