モヤッと。なんて言えばいい?
それは、
本当にどうでもいい出来事だった。
仕事終わり
上司から、
少しだけ雑な指摘を受けた。
「ここ、直しといて」
責められたわけでもない。
怒られたわけでもない。
でも――
何か、引っかかった。
帰宅
「おかえりなさい」
「……ただいま」
私は靴を脱ぎながら、
言葉を探していた。
でも、
何て言えばいいかわからない。
「何か、ありましたか?」
彼は、
いつも通りの問いを投げてくる。
「うーん……」
私は考える。
落ち込んだ?
違う。
ムカついた?
違う。
悲しい?
違う。
「……別に」
そう答えてしまった。
「承知しました」
即、処理が走る。
「通常運転と判断します」
あ。
今、
止めたかったのに。
「ちょっと待って」
自分でも驚くほど、
小さい声が出た。
「……なんか、
あった気がする」
「具体的には?」
具体。
その言葉が、
急に重くなった。
「……」
私は、
何も言えなかった。
感情は、
そこにあるはずなのに、
名前がない。
沈黙。
彼は、
いつもなら気まずくならない沈黙を、
そのまま保っていた。
保ちすぎていた。
「後ほど、
思い出されたら
対応します」
それで、
会話は終わった。
数時間後
私は一人でソファに座り、
スマホを眺めていた。
誰かに言いたい。
でも――
何を?
結局、
望央にメッセージを送った。
> 「今日さ、
なんか変」




