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【溺愛プラン】オプションどうします?  作者: 田中葵
第4部 一歩踏み込む
52/84

“失敗できない人間の安全装置”―派手に広げず、静かに“層が変わる”瞬間

【下僕プラン】は、静かに選ばれ続ける


 ――そして、利用者層が変わる


【下僕プラン】は、

 ランキングに載らなかった。


 バナーにも出なかった。

 成功例インタビューも作れなかった。


 それでも、

 解約理由欄が空白のままの契約だけが

 少しずつ増えていった。





 1|最初に増えたのは、女性だった


 花子のケース以降、

 同じような利用理由が並ぶ。


 > ・感情を預けたくない

 ・完成を期待されたくない

 ・決めるのは自分でいい




「下僕」という名前に

 最初は引く。


 でも、

 説明文を最後まで読む人ほど

 契約する。


 “言われたことしかやらない”

 “余計なことをしない”

 “気持ちは提供しない”


 それは、

 安全だった。





 2|次に来たのは、「失敗できない」男たち


 変化は、

 営業部門が最初に気づいた。


「……男性比率、

 上がってません?」


 データを開く。


 40代


 管理職


 役職あり


 離婚歴あり/未婚



 理由欄。


 > ・判断疲れ

 ・家庭でも職場でも正解を求められる

 ・弱音を吐く先がない




 彼らは、

 溺愛を求めていない。


 癒しも要らない。


 ただ、


 > 「何も期待されない相手」




 を必要としていた。





 3|典型例(短い生活描写)


 夜十一時。


 スーツ姿の男が、

 ネクタイを緩める。


「これ、処理して」


「はい」


 下僕は、

 質問しない。


「俺、今日の判断

 間違ってたと思う?」


「判断の評価は行いません」


 男は、

 少しだけ笑う。


「……それでいい」


 彼は、

 “正しさ”を持ち帰らない場所を

 初めて得た。





 4|本部の違和感(観測不能)


 会議では、

 言語化できなかった。


「依存してない」


「長期化しない」


「でも、

 切られても悪評が出ない」


 誰かが言う。


「……これ、

 “救われてる”んじゃ?」


 その言葉は、

 議事録から削除された。





 5|花子、気づく(接続点)


 花子は、

 業界ニュースの片隅を読んでいた。


 > 某業界幹部、

「私生活の最適化」に言及




(ああ)


 彼女は、

 すぐに分かった。


(これ、

 下僕プラン経由だ)


「失敗できない人間が、

 失敗しないために

 感情を外注する」


 花子は、

 メモに一行だけ書いた。


 > これは

 個人サービスじゃない


 社会の歪みの緩衝材







 6|YONAOSHIへ(静かな接続)


 数年後。

 初代大統領政権の頃。


 別の場所で、

 別の名前で、

 似たような仕組みが語られる。


「責任を分散する制度」

「判断を肩代わりしない補助」

「完成を目標にしない支援」


 それを聞いて、

 誰かが言う。


「……前にも、

 似たの、あったよな」


 名前は出ない。


 ただ、

 一度“人が壊れなかった仕組み”が

 確かに存在したという記憶だけが残る。


 それが、

 YONAOSHIの土壌になる。





 小さな締め


【下僕プラン】は、

 世界を救わない。


 でも、

 壊れきる前の人間を

 一人ずつ戻していく。


 だからこそ、

 本部には扱えなかった。


 そして、

 だからこそ――

 この世界では、

 何度も似たものが

 名前を変えて現れる。

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