表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【溺愛プラン】オプションどうします?  作者: 田中葵
第3部 効率か心か
35/86

tired.

 外伝A


「完成」を復活させようとする新部署の失敗例





 新部署の名称は、

 完成管理推進室。


 誰が名付けたかは、

 もう覚えていない。





 1


 設立趣意書(抜粋)


 > 当社の成長鈍化は、

「完成」という到達指標の喪失に起因する


 よって本部署は、

 再定義された「完成」を

 提供側・管理側双方に再実装することを目的とする







 誰も反対しなかった。


 理由は単純で、

 反対の仕方がわからなかったからだ。





 2


 最初の試み


 完成管理推進室は、

 まず定義を作った。


 完成A:業務達成率95%以上


 完成B:顧客満足度4.5以上


 完成C:感情安定度スコア良好



 三段階。


 これで、

 すべて解決するはずだった。





 しかし、

 現場から質問が出た。


「AとBは満たしていますが、

 Cが不明です。

 どの時点で測定しますか?」


 推進室は答えた。


「完成時点です」





 質問者は、

 少し黙ってから言った。


「完成時点を

 どう判断するんですか?」





 3


 二度目の試み


 推進室は、

 完成宣言者を設定した。


 管理職が宣言


 システムが補助


 異議申し立て不可






 その週、

 完成宣言は一件も出なかった。





 理由は簡単だった。


 宣言した瞬間、

 責任が確定するからだ。


 なぜ今なのか


 なぜ未達を許容したのか


 なぜその人なのか



 誰も、

 署名したくなかった。





 4


 三度目の試み


 推進室は、

 完成という言葉を

 柔らかくした。


 準完成


 擬似完成


 実質完成






 その結果、

 現場ではこう呼ばれた。


「まだ終わってないって意味ですよね?」





 完成管理推進室は、

 半年で縮小された。


 最終報告書の結論は

 一行だけ。


 > 「完成」は

 指標として

 再利用不可能である







 誰も、

 反論しなかった。





 本編


「完成後」を想定していた管理職が全員フリーズする回





 1


 異変


 朝の会議で、

 部長が言った。


「……で、

 この案件は今、どこまで?」





 誰も答えなかった。


 資料には、

 こう書かれている。


 状態:進行中


 評価:保留


 完了判定:未設定






 部長は、

 もう一度聞いた。


「完成は?」


 沈黙。





 2


 管理職の思考停止


 彼らは、

 完成後の仕事しか

 設計していなかった。


 成果発表


 評価配分


 次案件への割り振り






 完成しない状態は、

 想定外だった。





 課長が言った。


「じゃあ……

 まだ様子見で」


 それを聞いて、

 全員が安心した。





 様子見。


 それは、

 何もしない理由として

 完璧な言葉だった。





 3


 問いに弱い


 若手が、

 恐る恐る言った。


「この作業、

 何をもって終わりなんでしょう?」





 管理職たちは、

 一斉に目を逸らした。


 誰かが言った。


「現場で判断していいよ」





 その瞬間、

 若手は理解した。


 管理職は、

 答えを持っていない。





 4


 フリーズ


 それから、

 管理職たちは

 会議を増やした。


 決めるためではない。

 決めないために。





 ・次回持ち越し

 ・検討中

 ・前向きに調整





 完成後を想定していた彼らは、

 完成しない世界で

 動けなかった。





 5


 静かな露呈


 ある日、

 評価シートが返ってきた。


 全員、

 同じ文言。


 > 「総合評価:判断不能」







 それを見て、

 誰かが呟いた。


「……完成してないから、

 評価できないんだよな」





 その言葉を聞いて、

 誰も否定しなかった。





 否定できなかった。





 彼らは、

 完成がないと

 管理できない人たちだった。


 それが、

 静かに、

 全社に共有された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ