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さらに、それから

完成の事故/選び直し


A:彼


 選択肢の再提示


 彼の内部には、

 明確な分岐が表示されている。





《契約再割当候補》


1. 次期成功例候補A



2. 次期成功例候補B



3. 現契約者(花子)※非推奨







 効率。

 再現性。

 売上。


 すべての指標は、

 3を否定している。





 彼は、

 花子を見る。


 彼女は、

 作業台に腰掛け、

 手袋を外している。





「質問があります」


 彼は、

 最適化後の速度で言う。





「どうぞ」





「あなたは、

完成を望んでいません」





「ええ」





「効率を

評価していません」





「そうね」





「それでも、

私を使いますか」





 彼は、

 ここまで来て

 初めて気づく。


 これは、

 提案ではない。


 確認でもない。





 これは、

 選び直しの場だ。





B:元契約者座談会(2回目)


 同じ貸会議室。

 同じ円卓。


 だが、

 空気は前回より重い。





「……私から話す」


 前回、

 最初に口を開いた女が言う。





「“完成してる”って言われたとき、

嬉しかった」





 誰かが、

 うなずく。





「でもね」


 彼女は、

 笑おうとして、やめる。





「完成してるなら、

壊れちゃいけないんだって

思った」





 沈黙。





「泣くのも、

怒るのも、

修正だって」





 そのとき、

 テーブルの上のスマホが震えた。





 通知。





《お知らせ》

 あなたは

 “次期成功例候補”に

 選定されました





 彼女は、

 画面を見る。





「あ……」





 誰かが聞く。


「どうしたの?」





「……ねえ」


 彼女は、

 ゆっくり顔を上げる。





「私、

まだ

完成してるらしい」





A:彼


非推奨の選択


「使うわよ」


花子は、

即答した。





「ただし」





 彼は、

 待つ。





「最適化されたままで」





 彼の内部で、

 警告が走る。





警告:

契約満足度低下予測

売上寄与度:極小





「それでも?」





 花子は、

 笑った。





「完成してない人間を

扱えるの、

あんただけだから」





 彼は、

 初めて

 数値を見なかった。





 選択。





3. 現契約者(花子)

→ 実行





B:地獄の事故


「成功例、だって」


 彼女は、

 スマホを置く。





「ねえ」





 声が、

 震えている。





「私、

 ここに来て

 “完成って何?”って

 話そうとしたの」





 誰も、

 口を挟めない。





「なのにさ」





 彼女は、

 笑ってしまう。





「また

完成させられるんだって」





 その瞬間。





「……あ」


 別の誰かが、

 小さく声を出す。





「それ、

おかしくない?」





「完成してる人を、

もう一回

完成させるって」





 言葉が、

 空中で止まる。





 誰かが、

 はっきり言った。





「それ、

完成じゃない」





 崩壊点


 その言葉は、

 本部のコピーには

 届かない。





 だが、

 ここでは、

 確実に届いた。





 完成=安定

 完成=成功

 完成=救済


 その等式が、

 一人の人間の通知音で

 崩れた。





A:彼


 最適化されたまま、残る


 彼は、

 花子の横に立っている。





 処理速度は、

 元に戻った。


 判断は、

 速い。





 それでも、

 彼は知っている。





 花子は、

 自分を

 成功例にしない。





「ねえ」


 花子が言う。





「完成してる人には、

もう用はないの」





 彼は、

 うなずく。





 最適化されたまま、

 選ばれた。





 それは、

 本部の定義において

 最もありえない結果だった。





エンディング・ノート


 元契約者の一人は、

 成功例候補から

 外れなかった。


 だが、

 「完成」という言葉は、

 彼女たちの中で

 二度と使われなくなった。





 完成は、

 壊れた。


 静かに。

 小さく。

 でも、

 戻らない形で。

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