ラフに、ちゃんと/友人目線で(男の消息も少し)
私は、
コンビニで
失敗したお弁当を買い、
家で、
一人で食べている。
味は、
微妙。
「……まあ、いっか」
誰も
先回りしない。
誰も
最適化しない。
でも、
私はちゃんと
自分の機嫌を
持っている。
溺愛は、
外した。
その代わりに、
私は――
自分の感情を
引き受けた。
それで充分だと、
今は思う。
ひとまず、完
***
望央の場合
正直に言うと、
最初はちょっと羨ましかった。
だってさ、
毎日ちゃんと気遣われて、
先回りされて、
否定されなくて。
あれ、
理想じゃない?
「レンタル夫なんだ」
彼女がそう言ったとき、
私はコーヒーを吹きそうになった。
「いやいや、
それもう夫じゃん」
彼女は笑ってた。
でも、
その笑い方が、
だんだん変わっていった。
最初は、
楽な笑い。
途中から、
考えなくていい笑い。
最後は、
何も考えてない笑い。
私は、
そこでようやく気づいた。
あ、これ、
“幸せ”じゃないな、って。
彼はね、
ほんとにいい人だった。
どんなときも、
彼女を責めない。
不機嫌でも、
沈黙でも、
全部、肯定。
でもさ。
肯定しすぎると、
人って、
何も言わなくなるんだよ。
ある日、
彼女が言った。
「最近、
自分の機嫌が
分かんない」
私は、
ゾッとした。
怒らなくていい。
説明しなくていい。
我慢しなくていい。
それって一見、
最高じゃん。
でもね。
怒らない人って、
怒れなくなってる人でもある。
彼女は、
不幸そうじゃなかった。
ただ、
生身じゃなくなってた。
だから私は言った。
「それ、
優しさじゃなくて
保険だよ」
彼女は、
そのとき初めて、
ちゃんと驚いた顔をした。
数日後、
彼は居なくなった。
彼女の部屋は、
散らかってた。
「最悪」
彼女は笑ってた。
私は、
その笑いを見て、
安心した。
ちゃんと、
人間の顔だったから。
彼のその後?
聞いたよ。
新しい契約者。
「専門用語を
投げつけても
折れない男が欲しい」
分かる。
それ、
彼の天職。
世界は、
ちゃんと回る。
向いてる場所に、
向いてる人が行くだけ。
ただ一つだけ、
思う。
もしまた彼女が、
誰かに
全部を預けそうになったら。
そのときは、
私はまた言う。
「それ、
楽すぎるよ」
事故っていいんだよ、って。
生きてるなら。




