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【溺愛プラン】オプションどうします?(完結保証☆)  作者: 田中葵
第5部 ヒトらしく生きるって?
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月影がやむを得ず更新優先度変動の件でハヤトを呼び出した、が

 深夜。

 本社の照明はほとんど落ちていた。


 サーバー室の隣。

 小さな分析室。


 笹川迅翔――ハヤトは

 呼び出しを受けてそこに来ていた。


 ドアを開ける。

 中にいるのは一人。


 月影真佐男。

 デスクの前に座っている。


 薄い明かり。

 モニターが光っている。


 月影は振り向かない。

「来たか」


 ハヤトはうなずく。

「はい」





 沈黙

 しばらく誰も話さない。


 モニターにはログ。

 村田孝好のデータ。


 更新優先度。


 低。


 月影はゆっくり言う。

「面白いことをするな」


 ハヤトは何も答えない。


 月影は画面を指す。

「これ」


 更新優先度の変動。

「お前だろ」


 ハヤトは数秒沈黙したあと答える。

「はい」





 追及


 普通ならここで叱責が来る。


 会社命令違反。

 ログ改変。


 だが月影は怒らない。

 むしろ静かだ。

「理由は?」


 ハヤトは答える。

「観測結果です」


 月影は笑う。

「便利な言葉だな」


 ハヤトは続ける。

「村田孝好は」


 少し言葉を探す。

「更新すると安定率が下がる可能性があります」


 月影は目を細める。

「確率は?」


「不明」


「つまり勘か」


「はい」





 月影の笑い



 月影は小さく笑う。

 それは皮肉ではない。


 むしろ少し嬉しそうだ。


「勘で会社のシステムをいじったのか」


 ハヤトはうなずく。

「はい」


 月影は椅子にもたれる。

「いいな」


 そして言う。

「人間っぽい」





 村田の話



 月影はモニターを見つめる。


 村田のデータ。


「お前、あいつをどう思う?」


 ハヤトは少し考える。

「観測対象です」


 月影は首を振る。

「違う

 そうじゃない」


 ハヤトは初めて迷う。

 数秒。


 そして答える。

「……例外です」


 月影はうなずく。

「そうだ」


「例外だ」





 月影の過去



 月影は静かに言う。

「俺は昔、補助者だった」


 ハヤトは知っている。

 だが黙って聞く。


「週一デート

 疑似同棲

 全部やった」


 月影は少し笑う。

「楽しかったよ

 でもな」


 視線を落とす。

「利用者は必ず言うんだ」


 > 選んでくれてありがとう




 月影はつぶやく。


「違うんだよ

 選ばれてるのは、こっちなんだ」





 村田の違い


 月影は画面を指す。

「でも村田は違う

 選ばれなくても壊れない」


 ハヤトはうなずく。

「観測済みです」


 月影は続ける。

「だから会社は怖がってる

 理解できないから」


 沈黙。


 そして聞く。

「お前はどうだ」


 ハヤトは答える。

「理解できません」





 花子



 月影はふと思い出す。

「花子

 例の利用者」


 ハヤトの処理がわずかに動く。

「はい」


 月影は言う。

「面白い組み合わせだよな

 村田

 花子

 そして、お前」


 ハヤトは静かに言う。

「観測対象です」


 月影は笑う。

「そういうことにしとけ」





 決定



 しばらく沈黙。

 月影はキーボードを叩く。


 新しいログ。


 村田孝好

 更新優先度:保留


 ハヤトは画面を見る。

「……上書きですか」


 月影はうなずく。

「責任は俺が取る」

 そして言う。

「お前は何もしてない」


 ハヤトは聞く。

「なぜです」


 月影は少し考える。

 そして答える。

「面白いから」





 別れ



 ハヤトはドアの前で立ち止まる。

 そして聞いた。

「月影さん」


 月影は振り向かない。

「なんだ」


 ハヤトは言う。

「空白は」

 少し間。


「本当に安定要素ですか」


 月影は笑う。

「知らん」


 そして続ける。

「でもな

 人間は空白がないと壊れる」





 深夜の本社

 ハヤトは廊下を歩く。


 静かなフロア。

 サーバーの音。


 彼の内部ログが更新される。


 新観測

 人間=空白を必要とする


 処理は止まらず、

 むしろ増えていく。





 同時刻


 村田はソファの上で寝ていた。

 テレビつけっぱなし。

 毛布。

 わずかに丸まっていた。


 そして

 相変わらず静かすぎる寝息と、

 あまり変わらない寝相。


 村田は小さく寝返りを打つ。


 彼は

 まだ知らない。


 自分を巡って

 会社の内部で

 静かな戦いが始まっていることを。

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