ズレ。あっちが正しいけど…
同僚の一人が、
仕事の愚痴をこぼした。
「最近、上からの圧がきつくて」
「大変でしたね」
彼は、
即座に頷く。
「理不尽を感じる場面も
多かったのでは」
「……え?」
同僚は、
一瞬、言葉に詰まった。
「いや、
まあ、そうだけど」
まだ、そこまで言ってない。
違和感ふたつ目、話を終わらせる力
別の同僚が、
少し重い話を始めた。
「実はさ、
転職、考えてて……」
「将来を見据えた
前向きな選択ですね」
彼は、
即座にまとめる。
空気が、
止まった。
「……あ」
同僚は、
苦笑いした。
「いや、
まだ迷ってる段階で」
「失礼しました」
彼はすぐ引いた。
でも――
もう、話は戻らない。
主人公視点
私は、
ちょっと焦った。
「ごめん、
この人、
先回りしちゃう癖あって」
笑って、
場をつなぐ。
「いや、
悪くないんだけどね」
同僚は言った。
「むしろ、
優しい」
でも、
声が少し、
乾いていた。
決定的な一言
終盤、
少し酔った同僚が、
ぽろっと言った。
「なんていうか……」
間。
「正しすぎて、
話す余地がない」
場が、
一瞬、静まる。
「いや、
嫌味じゃないよ?」
慌てて続ける。
「むしろ、
ちゃんとしてる」
私は、
即座に笑った。
「でしょ?」
守るみたいに。
帰り道
外に出ると、
彼は言った。
「本日は、
不快な思いを
されませんでしたか?」
「……平気」
私は答えた。
平気、としか言えなかった。
「改善点があれば、
共有ください」
その言葉に、
私は、
なぜか黙った。
同僚の言葉が、
頭の中で、
繰り返される。
> 正しすぎて、
話す余地がない
彼は、
何も間違っていない。
それが、
こんなに、
ズレて見える夜が来るとは、
まだ思っていなかった。




