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夢幻への再臨  作者: 柴光
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08 蟲姫〜フィリアレギス

転生者、18歳、女

前世の死因、他殺


転生者、15歳、女

前世の死因、事故死

 




 新しい人生を歩み始めて十八年、平凡な家庭に転生してこの世界を知るために行商人となった。


「ねぇねぇ、次の街までどのくらい?」

「んー、二日って所かなぁ」


 馬車を引く私と友人兼護衛の女剣士、女二人の気ままな旅は気付かないもなくて優雅な時間を過ごせている。


「ワタシ達って出会ってもう何年経ったかな?」


 唐突に言い出すもんだから昔の事を思い出しながら考えちゃった。

 実は彼女も転生者で、前にいた世界の歌を口付さんでいた所、出会した私が声をかけたのだ。


「四年?くらい?もうそんくらい経つかも」

「早いもんだねぇ。あん時はビックリしたよ、まさかアンタも転生した人だったなんてさ」

「それは私もよ」


 何気ない会話の繰り返しが心地良く、モノを売ってるよりこの時間の方が大好き。

 ちなみに、前世で開発していた化粧品等をこちらでも再現して色んな街に卸している。

 どうやら私はこっちの方が性に合っているらしく、小さい頃から色々と試していたので、戦闘は不向きどころか苦手も苦手。

 水と炎魔法を駆使して商品開発を行ってはいるんだけど、それをモンスター相手に放てなんて出来る訳がなく、その為に剣と魔法に長けた彼女がいる。

 そう、彼女はそんじょそこらの冒険者より強いのだ。


「これ以上行くと森に入っちゃうからこの辺りで野営しましょうか」

「さんせー!お尻が限界来てたし、このままだと割れちゃってたよ」


 日が暮れ始め、このまま進むと森の中で夜を明かす事になるから街道から少しズレた木の下で馬車を停めて夕食の準備を始めた。

 食べ終わる頃には完全に太陽は沈み、焚き火と月明りが頼りとなる。


「ずっと馬車を引いてて疲れたでしょ。先に休んでていいよ」

「引いてるだけだったし、大丈夫だよ。何かあったら起こすから先にどうぞ」

「そぉ?じゃあお言葉に甘えて」


 モンスターも出ないどころか何もない場所とはいえ、見張りを立てずに寝るのは流石にマズい。

 何かあった時に働いてもらうために彼女を先に寝かし、私は焚き火に当たりながら夜空を眺めた。

 ふと、背中に痛みが走り、その箇所に腕を回すと、小さく膨れ上がっていた。

 もう痛みもないし痒みもない、単なる虫刺されだと思って気にしないように頭の隅へと追いやる。


「ねぇ、昨日何かに刺されたんだけど。めっちゃ痛かった」


 途中で交代して私が寝ている時に彼女も刺されたらしい。

 見てみても少し腫れてるだけで触っても痛くないとか。

 今の所、身体に異変もないし気にせず進む事にしたのだけど、森へ入って半日が過ぎたと思われる頃、突如として身体中に痛みが走った。


「い、痛い…」

「ちょ、大丈夫!? ッ!!あ、クッ…」


 私同様に彼女もお腹を押さえて痛みを堪え始め、終いには馬車から転げ落ちてのたうち回る程に。


「な、なんなのこれ…今ポーションを…出すから…待って…て」


 荷台にあるポーションを取ろうとした時、鼻と口から何かが床へ流れ落ちていった。

 白い幼虫、それも一匹や二匹じゃない。


「なに…これ…」


 混乱しながら彼女の方に目を向けると、穴という穴から白い幼虫が這い出ており、挙句には目や肌を食い破って数え切れない程の量で覆われていた。

 目の奥に激痛が走り、目の前が真っ赤に染まって行く中で私もああなるんだと痛みに悶えながら意識が遠くなっていく。





『フィリアレギス』

討伐レベル無し

体力E 攻撃力E 体力E

 小指程もない小さな蟲だが、他の生物に卵を産み付けて幼虫達にその肉体を糧とさせる。

 一度の産卵で数百匹を産み落とし、十時間程度で孵化する。




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