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夢幻への再臨  作者: 柴光
7/49

07 梦〜バク〜

転移者、25歳、男

前世の死因、転落死

 




 街灯が一切ない、月明りと窓から漏れる灯りを頼りに草刈鎌を持ったナースから逃げている。

 大丈夫、息は続く、逃げ切れると確信している自分は数台のクルマが停まっている駐車場へ逃げ込んだ。


 カンカンカンカンカンカンカンカン


 子供が棒で鉄柵を鳴らすような音が聞こえ、咄嗟にクルマの陰に身を潜める。

 目の前には火かき棒を持ったナースの姿。


「だからそっちは危ないって」


 走る俺を止める同級生。

開けた扉の先には足場がなく、空は明るいのに下は真っ暗な空間へ落ちていく。

 ふわっと感じると同時にビクつく身体。


「夢…か。なんだか懐かしい感じがしたな」


 前の世界で見ていたような夢をこっちでも見るとは、クルマなんて便利なモノがあったなと愛車を運転しながら思っていた。

 自分の愛車と同じクルマの事故現場で別のクルマに乗り換える。

 隣に乗る妻は、旅行先の計画を立てながらカーナビのテレビを眺めている。


「もう着くよー。片付けて降りる準備しときなさい」


 担任の呼びかけと同じくしてバスの扉が開き、古びた旅館を前に俺達の班はふざけあっていた。


「荷物を置いたら風呂に入りに行くぞ」


 一人の友人が俺達に号令をかけると、乾杯の挨拶が始まった。

 ガヤガヤしだした中、女の子の隣りに行きどうにか抜け出せないか悩んでいると、風俗店のベッドの上に寝そべっていた。

 店長に呼ばれて出ていく嬢に続いて俺も外へ連れ出され、剣と盾を手渡されて手を振って見送られる。


「さぁ行こうか相棒」


 竜の背に乗り大空へと羽ばたく俺は、風を感じながら太陽の眩しさに片目を閉じる。

 右手側には以前倒した風竜が共に飛び、左手側にはその時の戦いで命を落とした仲間と見知らぬ竜が。


「何で僕が死ななきゃいけなかったの?」


 原型を留めていない頭の仲間が問いかけ、俺は目を覚ました。


「はぁ…夢……なんて夢見てんだ」


 寝袋から這い出して薄暗い辺りを見渡すと、鎌を持ったナースの姿を見つけた。




「もう五日も寝たままなんです」


 僕の仲間が眠りについてから既に五日が経過しており、日に日にやつれて行くのが分かるので、この辺りで有名な治療師を紹介してもらった。


「…最近、この様に目覚めずそのまま衰弱死していく症状を訴える人が多いが…」

「原因は何なんですか!?」

「ハッキリとは断定出来ていないが…バクの亜種が原因である可能性が高い」

「バクってあの獣型の夢喰いですよね?」

「そうだ。これは私の考えだが」


 治療師の考えとは、永遠に夢をループさせる事によって自身の食事の心配を無くしたのでないかという。

 そんな事が可能なのかと思ったが、現に仲間が目覚めずにいるし、あくまでも可能性の話だと。


「支離滅裂な夢ほど美味だとも考えられているな」

「夢って元々辻褄なんて合いませんよ」

「その通りだな」

「それで僕の仲間は…」

「すまないが…私では治す事が出来ななんだ」

「そんな…」


 肩をポンっと叩かれ、祈りだけ捧げて去って行く治療師を横目に、眠りから覚めない仲間を見下ろし続けた。





『バク』

討伐レベルD

体力D 攻撃力E 速力D

 人の夢を喰らう魔獣。

寝ている者に近付いて、長く突き出した口を耳から挿入して食事する。

 大抵は気配で気付かれて喰らう前に退治される。

亜種は夢そのものに入り込み、宿主が死ぬまで夢を見続けさせる。


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