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プロローグ

田中健太、30代独身。


仕事を終えた彼は都内にある築20年の2LDKマンションに帰宅し疲れを癒していた。コンビニで買った弁当を温め、ビールをプシュッと開ける。至って平凡な、いや、ある意味で安定した日常。趣味はネットサーフィンと一人旅。


そして食料品の値上がりに伴い一昨年から始めることにしたベランダの家庭菜園もどきは毎年なぜか途中で枯れるのが恒例だった。


その夜も、健太は特に変わったことのない時間を過ごしていた。風呂に入り、リビングのソファでスマホをいじりながらウトウトと微睡んでいると軽い浮遊感に襲われた。────地震か?


それからすぐに、まるで頂上まで来たジェットコースターが凄いスピードで急降下するような、胃がひっくり返る感覚に襲われる。目を開けると、いつもの見慣れたリビングの天井が妙な光を放っているように見えた。


「ん? なんだこれ…」


一瞬の眩い光。そして、全身を包み込むようなフワリとした浮遊感。それは数秒のことだったが、健太の意識はそこで途切れた。


 次に目覚めたとき、健太は自分のベッドの中にいた。いつもの寝室。いつもの見慣れた天井。しかし、窓の外から差し込む光が、いつもと違う。


「朝か…?」


目覚まし時計に目をやると、時刻は午前7時。いつも通りの時間だ。だが、何かが決定的に違う。部屋のカーテンを開けた瞬間、健太は絶句した。


そこに広がっていたのは、普段から見慣れた東京のビル群ではなかったのだ。


目の前には、鬱蒼と茂る巨大な樹々が地平線の彼方まで連なり、空には見たこともない奇妙な鳥が舞っている。遠くには、中世ヨーロッパの城のような巨大な建築物が見えた。そして、窓から草木の匂いを連れて吹き込んでくる風は都会のそれとは比べ物にならないほど清澄だった。


「は? はぁあああ!?」


健太は自分が置かれた状況が理解できず困惑しながらもベランダに出てみることにした。自分が住んでいるのはマンションの12階、ベランダから地面を見下ろせばそこには通勤や通学のためマンションから出て駅や学校に向かう会社員や学生の姿があるはずだった。


だが、ベランダに出て下に目をやると会社員や学生たちの姿もなく、それどころか目と鼻の先、手の届くところに地面があるではないか。マンションごと異世界に転移してしまったと思ったが、どうやら異世界に転移してしまったのは健太の部屋だけのようだ。


「嘘だろ…夢か? いや、妙にリアルすぎる…」


慌てて部屋中を確認する。リビング、キッチン、風呂、トイレ。全てがいつも通り、自分のマンションの一室だ。しかし、窓の外だけが完全に“異世界”だった。


恐る恐る玄関のドアを開けてみた。目の前には、いつもなら廊下とエレベーターホールがあるはずの空間が…ない。ただ、鬱蒼と茂る巨大な樹々で構成された森が今にも健太の部屋を飲み込まんとするようにそびえ立っていた。


「ま、マジか…俺、家ごと異世界に来ちゃったのか…!?」


健太の平凡な日常は、一夜にして根底からひっくり返った。だが、彼はまだ知らなかった。この“平凡な家”こそが、異世界においてとんでもない最強の拠点となることを

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