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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§1.工法成立
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対決

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


剛の者か柔の者か。


50を迎えて尚、少年漫画をこよなく愛する谷村が提唱する、現場監督の分類だ。2つしかないが。


谷村によれば、剛の極北にいるのは、たわら建設工業の岩崎で、柔は、吉塚工務店の竹林だという。たわら建設の岩崎伝説は、川島の耳にも届いている。その内容は、()()()()()()()()()()()()とでも言うような、世に出すことが憚られるレベルだったが、どうも胡散臭い。尾ひれはひれがついたに違いない。しかし、岩崎を直接、知っているわけではない。もしかしたら、本当かも知れない。


谷村の見立てでは、川島は間違いなく剛の者だという。谷村自身も、どちらかといえば剛の者だが、川島は間違いなく剛の者だ、と断言した。自覚がないわけではないが、そこまでハッキリと言われると、少し違うんじゃないか、と異論を唱えたくもなるが、酒の席の与太話だ。じっくり議論するような話ではない。


剛の者、川島は、303号室のリビングだったところで、灰色人間と対峙していた。


顔がはっきりしない。輪郭も、はっきり見えない。コンクリートと同化して見えるくらい、ぼんやりしている。とにかく、どう見ても、()()()()()()()()()()()。だが、まぎれもなく、これから取り壊そうとしている社宅に入り込んだ侵入者だ。その思いから、灰色を、にらめつけていた。


川島は、人間ではないとわかっている者に、この場から立ち退いてもらう為には、何と言えば通じるのだろうか、と考えていた。かつて、酔っ払いが現場に侵入しようとしたのを止めたことがあるが、あれも日本語が通じなかった。こいつは、おそらく、おそらくだが、それ以上に日本語が通用しないのではないか。川島の立場としては、相手が人間だろうが何だろうが、工事を進める為に、この場から立ち退いてもらわなければならない。


とにかく、このままでは埒が明かない。話しかけることにした、


「あなたねえ、


と口に出した途端、灰色人間が目の前に現れた。いや、さっきも目の前にいたのだが、今は、本当に目の前、すぐ目の前に居る。目の前の灰色の顔の部分は、ぼやけていたが、だんだんと影のようなものがあらわれて、顔になっていった。


()()()()だ。


思った瞬間、金縛りにあった。金縛りをこれまで経験したことはない。だが、これが金縛りだとわかった。動けない。全く身動きが取れないわけではないが、動きに大幅な制限がかかっている。文字通り、動きが縛られている。


そのうち、耳鳴りもしてきた。灰色人間が、口を開けている。何か言っているのか。


あ“あ“あ“あ“…あ“あ“あ“あ“…


そして、灰色人間は、川島の両手を掴んだ。


掴まれた川島は、こいつ、()()()()()()()()()()()()のか、と思った。そして同時に、じゃあ、こいつを()()()()()()()()()()()()という疑問が生まれた。


気になったことは、試したい。それになにより、こいつに、このまま自由を奪わせておいて、いいわけがない。


川島は、身体の自由を取り戻す為、金縛りに抵抗を始めた。どうやったら金縛りを解くことができるのか、まったくわからない。とにかく、できる抵抗をやる。灰色人間の手を振りほどこうと、目いっぱいに力をこめた。


川島には、トレーニングジムのショルダープレスマシンで、どうしても挙げられない重量があった。その挙がらない重量に、挑戦している感覚だ。それまで挙がらなかった重量を、ようやく挙げられた時は、どういう感覚だったろうか。


びくともしない。重量(ウェイト)が挙げられなかった帰り、諦めた帰り、もう少し頑張ればよかったと、いつも後悔している。反省はしても、後悔をしてはいけない。それに、ここは、そうだ、わかっている。正念場だ。


中途採用の()()()社員がやってきては、よりよい条件を求めて、あるいは提示されて、転職をしていく。幹部やベテラン社員たちは、辞め癖がついた奴は、すぐ辞める、そう簡単に余所では通用しない、なんて言っていたが、半分以上は、嫉妬だろう。本当は、うらやましいに違いない。悔しいんだ。同じくらいの働きで、大袈裟じゃなく、給料が倍半分も違う。あいつは、面倒な仕事から逃げた、とも言っていた。生え抜きの自分は、いつも、逃げ遅れてしまった、と思っていた。


そのことを、つい愚痴った相手が居た。


「いや、違うよ川島。お前は、確かに仕事を知らない。知ろうとする努力も怠っている。だが、お前の一番の長所は、その()()()()ところだ。」


この言葉は、川島に呪いをかけたように、心の中に入った。


そうだ、こんな場面でも、逃げるという選択肢が浮かばない。どうにか、この金縛りを解かなければ。しかし、まったく光明が見えない。動けない。


その様子を見て、灰色人間が、笑った。


こいつ、感情があるのか。いや、そんなことよりも、


「わかりやすい笑い方をしてんじゃねえぞ。」

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