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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§5.施工事例その3 石塔のある家
202/210

飛び降りる女

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


いきつけのスナックでの二次会を楽しく終えて、表通りに出ると、いつも並んで待っているタクシーの列がない。


12月でもあるまいし、と首をひねる。


朝方まで飲んでいたわけでもない。日付も変わっていない。たまたま、タクシーが出払ったタイミングだったのだろう。珍しいこともあるもんだ。


左右確認で、少し離れたところ、反対車線に止まっている1台を見つけた。


ごめんなすって、と手刀を切り、道路を駆け足で横断。タクシーの後ろから近づくも、反応がない。気づいてないのか、と前に回り込むと、『予約』の文字。しくじった、と苦虫を嚙み潰す。


何となしに、運転手の顔を見ると、口をあんぐりと開けて、()()を見上げている。


()を見ているんだ?


運転手の視線の先を辿れば、ビルの屋上。


「あ。」


屋上に、()()()()()()()が立っている。


()をしているんだ?、と思っていたら、()()()()()()


()は、()()()、と笑った。


不味い、と直感した。


次の瞬間、()が飛び降りた。


「わっ!」


驚いたが、直ぐに我に返って、これはいかん、とビルへと急いだ。


息も切れ切れに、ビルの下へたどり着くと、()もない。間違えた?いや、そんなはずはない。きょろきょろとあたりを見回すも、()もない。人だかりもない。騒ぎもない。いつもの夜の街だ。


見間違えか?それにしては、()()()()と見えた。


いや、()()はおかしい。


()()()()と見えるはずがない。


男は、目が悪い。あんなに離れたビルの屋上に立っている()表情(かお)が、()()()()と分かるわけがない。見えるはずがない。


え?え?あれ?え?


じゃあ、あの()は、と恐る恐る、上を見上げた。


()()()()()()


「あ、」


()は、()()()、と笑った。


不味い!


()は、男目掛けて、飛び降りた。


()の歪んだ笑い顔が、物凄い勢いで迫ってくる。


「うわああああ!!!」


男の叫び声が、ビルの谷間を木霊して、夜の街に響き渡った。


「…とまあ、こういう話なんですけど。」


「あるんですよねぇ、こういうことって。」


「なんで御大の〆方なんですか。」


好きだから、と答えて、


「うん、()()だわ。俺が捕まえた()()()()()()()。」


「どうしたんですか?その()。」


「不憫じゃないか。死を選んでまでおさらばしたかったクソったれの()()()に、いつまでもとどまっているのは、不憫だ。気づかせてやりたい。もう、楽になったんだよってな。」


「幽霊に優しいこともあるんですね。」


「俺は()には優しいよ?」


「駐車場のお化けも、()だったような…。」


「男女平等の()()()じゃないか。」


「はあ。」


この世(こんなところ)に居たってしょうがないだろ、と優しく諭してさ、ちゃんとトンネルまでエスコートしたよ。」


「ご立派。」


「ジェントルマンとして当然だろう。」


「武勇伝を語りたかったんですか?」


「いや、本題はここからだ、中務君。」


改まる。


「はい。」


「中務君。」


「わたくしが中務ですが。」


「ヘッドハンティングって言葉、知ってるか?」


「存じております。」


「来たんだよ。俺のところに。」


「ヘッドハンターがですか?」


川島は、すっ、と名刺を出して、


「株式会社アップデコの、内木(ナイキ)という男だ。」


と言った。

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