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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§5.施工事例その3 石塔のある家
191/210

五つ星

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


寝るだけだから、いつも安い宿を選んでいる。


カプセルは、閉じ込められる感じが苦手だから、なるべく避けている。


年季の入ったビジネスホテルがいい。


古くても、安ければいい。


これは、割と知られた話だが、安いビジネスホテルには、()()()。古いホテルだと、どうしても雰囲気が出てしまうが、()()()。泊まっている客層が、()()()()()()()()()連中が多いからなのか、()()()。まったく出ないわけではないが、他の宿泊施設に比べて、圧倒的に少ない。


釣りでも、素人目で、パッと見は釣れそうなのに、全然釣れないスポットがある。そういう感じだ。


今回も、安いビジネスホテルを選んだ。シーズンでもなく、平日だから、料金設定も格安だった。


どうせ飲んで二日酔いになるから、朝食のバイキングはつけない。


(定義はよくわかっていないが、イメージとしての)地方都市の繁華街。


思ったより賑わっているが、通りがひとつ変われば、暗く、人気も少ない。


折角だし、地のものでもいただこう、と名物料理を出している店を検索して、評価の高い店を選んだ。


「不味くねぇか?」


「星4.2もあるんだぜ?」


「本当だ、不味い。」


「これ見ろよ。刺身が連なってる。」


「すげー生臭い。調理師免許持ってんのか?」


田舎あるあるだ。


不特定多数の人口が圧倒的な都会の母数はガチだ。店を評価する客数も多いから、平均値への信頼は高い。それにひきかえ、田舎は店を評価する客数が少なく、平均値への信頼は低い。


都会は他人社会で、田舎は身内社会だ。世間が狭い。割り出される可能性が高いから、わざわざ点を低くする者は少ない。居たとて、それは私怨が多い。高く点をつけるのは、だいたいが身内贔屓からだろう。


田舎の五つ星評価を、信用してはいけない。


「なんだよ。気分悪いな。」


「口直しに、女の子のいる店にでもいくか。」


「経費ないんじゃないのかよ。」


「それはそれ。これはこれ。」


「俺は、もうホテルに帰る。編集もしたいし。」


「じゃあ、2人で行くか。」


会計をして店を出ると、二手に分かれる前に、3人で、その店に星を1つ付けた。


「やっぱ対面で話し合って決めないとダメだな。」


少し向こうにある、やたらと明るい無料案内所が目に入った。元気なお兄さんがニコニコと笑顔を向けていた。


「聞いてみようぜ。」


「ああ。」


向かってくると察したお兄さんは、どうぞどうぞと歓迎モードだ。


「どういった店をお探しですか?ガールズバー、キャバクラ、ラウンジなんかもあります。」


「安くて、可愛くて、女の子がちゃんとついてくれるところかな。」


「そうですねー。今日だと女の子が揃っているのは…」


そう言って、パネルを吟味するお兄さんと一緒に、連れの男は、パネルを険しい表情で品定めしている。一歩引いたところから、壁一面に貼り出されたパネルたちを俯瞰的に眺めていた。


横文字ばかりの店名の中で、際立つ漢字の店名。


迎合しない佇まいが、()()()()の琴線に触れた。


「月下美人ってとこは?」


「え?ああ、月下美人さんですか。高く…はありませんが、こちらにされますか?」


「お、気になるのか?」


「ちょっと、気に入った。」


「じゃあ、ここにしようぜ。お兄さん、ここで。」


「少々お待ちください。」


今から2名様いけますか?うんぬんかんぬん、と店への連絡と、多少の交渉事を済ませ、黒服が迎えにくるということだったが、お兄さんも暇だと言うので、途中まで案内してもらって、出合頭の黒服に引渡し、という話になった。


都会より高くないビルの群れ。都会よりよく見える星空。


夜風が心地よく吹いて、今日は、いい女がついてくれそうな予感がする、なんて期待を胸に、ふたりは、お店へと連れられて行った。

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