業者選定
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
怪談で、お祓いという言葉が出てくる度に、どこでどうやるのだろう、と考えてしまう。お寺にしても神社にしても、そういう相談がくることはあるのだろうか。住職や神主に知り合いがいないから、分からない。はらうという語感から、神道なのかな、と無学ながら勝手に神社に行くのが筋と考えたが、葬式ではお経を読まれることが多い国だから、成仏ということになると、お寺に駆け込むのがよいのか。いや、何をはらうのかによるのだろうか。
そもそも、神社やお寺に駆け込んで、変な顔をされたりはしないのだろうか。
怪談をフィクションと思ってしまう最大要因のひとつに、簡単にお祓いというイベントがこなされてしまっている、という部分への引っかかりがある。いや、自分にそういう伝手がないだけで、一般の多くは、霊能者に伝手があるのかも知れない。ただ、水回りのトラブルについて、あちこちで宣伝されて、一般のご家庭にまで飛び込みの営業がくるのに、お祓いについては、まったく何もやってこない。
ああ、そういえば、たまに怪談で霊能者と言わず、霊媒師にお祓いをお願いしたと言ったりしているが、あれは霊媒なのだから、恐山のイタコのようなもので、霊を憑依などさせて話をするという能力なのだから、霊を祓うとは少し違うのではないか。いや、この思い付きは僥倖だ。霊媒の出来ると言われる人たちの存在は、はっきりしているのだから、恐山に行って、相談すればよいのだろうか。しかしそれは、いくらなんでも遠すぎる。経費も出ない。最後の手段に取っておこう。
よくもあんな簡単にお祓いというイベントをさらっとやるものだ。こうなったら、聞いた話ではなく、自分の体験談として怪談を語る有名人にDMして、話に登場する霊能者を紹介してもらおうか。芸能人なら、そういう伝手もあるだろう。なんせ、心霊番組のレギュラーだかゲストには、霊能者いるのだから。いやいや、ならば、心霊番組に出ている霊能者に、直接DMすればいいのではないか?
しかし、しかしだ。自分がフィクションだと思っている相手だ。心の底では、信じていない。信じていない相手に、仕事は頼めない。有名人も、こんな一般人を相手にしたりしないだろう。
ではどうすればいいのか。
川島は、苦悩の渦の中で、ひとつだけ、伝手があることを思い出していたが、それは恩人を巻き込むことになるかもしれないと、躊躇していた。
だが他に当てもなく、恩人の話を思い出しながら、インターネットのマップサイトを開いていた。




