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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§4.施工事例その2 鉄橋
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山彦

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


「それ、何かの鳴き声だったんじゃないの?鳥とか。」


「クマとか?」


「クマはいないっしょ。聞いたことない。」


「いるぞ、クマ。」


「マジで?」


「鳴き声も聞いたことがある。」


「どんなよ。」


「はい、コグマです。」


「それは小椋さん(が電話に出た時)の奴でしょーが。」


小椋さんは、今、何やかんやでサークルエンドに残って、ダンプを転がしている。


「山で聞こえてくるような鳴き声だったら、西川は怖がらないよ。」


「Aさんじゃないのかよ。」


川島が海の子というなら、西川は山の子だという。山に囲まれて育ち、親は狩猟免許を持っていて、何やら罠の免許も持っているのだとか。


「罠の免許?」


「あるんだってよ。よく知らないけど。」


「本人は?」


「ただのアウトドア派だ。」


だが、山育ちの山の子だ。山の子が、地元の山で、聞き分けられない妙な声を聞いた。


「信憑性あるだろ?」


「うーん、まあ、そうだな。よし、じゃあ富士登山にしますかね。」


というわけで、川島は次の日曜日に、軽装で山に入った。()()()()に時間は関係ないから、と真昼間に乗り込んだのだ。


初心者コースを選んで、すいすいと山に登ったが、慣れない山道で、心肺機能に大きなダメージを受けた。


ぜぇぜぇと息が乱れ、汗も噴出したが、山頂は気持ちよかった。


「とても()()とは思えん。」


行楽シーズンから少し外れているが、天気のいい日曜日だったので、登山客もちらほら見かけた。山頂には、城跡もあった。


「ガセか。」


しかし折角なので、山彦に挨拶でもしておくか、と大きな声で、


「やっほー!」


と叫んだ。


高い山でもないし、山々が連なっていく山岳地帯はもう少し先。山彦は、ハッキリ聞こえなかった。


もう一度。もっと大きな声で。


「やっほー!!」


山彦が返ってくる音を拾う為に、耳を澄ませていると、


「ん?」


誰かが呼んでいるような気がした。


暫し思案して、山頂にある案内図の前に立った。


「Bコースって言ってたな。」


Bコースに照準を合わせた。誰かが呼んでいるような気がする。


「ほう。」


Bコースに向かって歩きはじめると、おじいさんが声を掛けてきた。


「初心者の人は、向こうですよ。」


「え?」


「そんな軽装(かっこう)で、上級者向けのコースから下りたら危ないですよ。」


「あー、そっか。」


パーカー短パンスニーカー。


「ありがとうございます。」


「気を付けてくださいね。」


「おす。」


お礼を言って、Aコースから下り始めた。危ない危ない。Bコースから下りたら、Aコースの駐車場まで、めちゃめちゃ歩かなければならないところだった。


腹も減ったし、これはきっと、ビールが美味しい。


ちょっとは登れる格好で、次はBコースだな。


川島は、颯爽と下山した。

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