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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§4.施工事例その2 鉄橋
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手形

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


手形をつけようとしている。


怪談で、手形が出てくるエピソードの定型は、心霊スポットへ肝試しに行くところから始まる。案の定、お化けが出てきて、慌てて逃げる。お化けが車を追いかけてくる。車の窓にたくさんの手形がつく。逃げ切って、ガソリンスタンドに行く。店員さんが窓をいくら拭いても、手形が消えない、と伝えてくる。手形は、内側からついていた、というオチ。バリエーションは多岐に渡るが、概ねこんなところだろう。


それから他には、シンプルに、夢でお化けに腕を掴まれて、ハッと目が覚めて、なんだ夢か、と安心していたら、掴まれた腕に手形がくっきりと残っていた、という奴。


さて、手形というと、約束手形を思い出す。


近ごろでは、すっかり聞かなくなった。まだ手形を使っているのは、木村建設ぐらいではなかったか。廃止されるという噂を聞いたが、定かではない。


五輪建設は、創業以来、()()()()()()()()()()()だから、社員一同、経理ですら、手形というものには疎い。しかし、まったく使わなかったわけではない。川島の記憶によれば、たった1度、使ったはずだ。それも、一度くらいは使ってみたい、という理由だったと聞いている。相手は、()()()()の関係にある協力会社。


手形というのを一度やってみたい、と伝えたら、ああ、いいですよ、やってみましょう、と向こうもノリノリだったという。


現金払いを数十年。その実績と信頼は、厚くて強い。五輪建設の注文書は、現金と同じ、と言われるほどに。


何が言いたいのかというと、()()()()()()、という行為は、呪いのようなものなのだ。約束、約定、先約、どう言ってもいい。()()は、()()()()()()()()()、という証し。証明、表示、表明、どう言ってもいい。


()()()は、川島の右肩に、手形をつけようとした。川島は、直感的にそう思った。


そして、()()()()()()()()()()()、とも思った。


右肩を掴まれた瞬間に、ほんの僅か、左目の傷跡()()()()()()が、疼いた。


見なくても分かる。川島の右肩に、手形はついていない。()()()は、そっと引き下がって、気配を消した。


藤田家では代々、()()()()()()()ことになっている。


川島勇次郎は、次男だ。


律儀にも、()()()()()()()()()()ようになっているのだろう。


「この者を取ってはならぬ。」


「取らせはせぬ。」


そういう強い念を感じた。


傷跡()()()()()()は、その()なのだ。


今さらまた浮かび上がってきた()()()()は、()()()だろうか。それとも、周期があるのだろうか。


この件に詳しいのは、母親か。


それは、()()()()調べるとして、目下、解決すべきことはなんだ。


ユウカのドレスが、パステルグリーンだった、ということだろうか。


「グリーンのドレスだったんだな。」


と川島が言うと、中務も、


「本当だ。グリーンのドレスだ。」


と言った。

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