表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§3.施工事例その1 石田邸
117/210

社風堂々

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


草木も眠る丑三つ時に、幽霊が出る、と昔の人は言った。調べてみると、鬼門と呼ばれる北東の方角が、丑と寅の境目で、時間にして朝の3時。陰陽五行では、丑が陰で、寅が陽だから、陰の丑の方が()()()()。鬼門に最も近いのは、丑四つだが、陰の気が満つ(三つ)、という語呂で、丑三つに、死者や鬼が活発に動くとされた。


()()()()()()()()ので、丑三つ時の採用は見合わせた。何より眠い。夜勤でもないのに、そんな時間に活動するのはナンセンスだ。おじさんは眠い。


確かに、人目を避けるには、その時間がいいかもしれない。しかしそれは、採用に至るほどではない。


いっそ仕事帰りでいいかな、と思った。


五輪建設の社風として、勤務中以外の制服姿は、(よし)とされていない。制服には、社名の刺繍がある。その制服を着たまま、パチンコに行ったり、飲みに行ったりなど、言語道断である。五輪建設の社員として、恥ずかしくない立ち振る舞いをせよ、立派であれ、という社風である。制服を着ている以上は、五輪建設の社員として、()()()あらねばならない。要は、建前に重きを置く会社なのだ。


川島は、若い頃、昼休みに制服のまま床屋に行って、大先輩の山根さんに、拳骨を食らわされた。吉塚工務店なんかは、社風が緩いから、制服のまま飲みに行くのが()()だというのに。


一度着替えるか、刺繍の入った上着を隠すか、脱ぐか。川島は、こんなこともあろうかと、常に、パーカーを車にのせている。


川島は、ブラインドの隙間から、西へ傾く太陽を見るのが好きだ。


太陽に目を細めて、


「パーカーを着るか。」


と呟いた。


定時上りに、港へ行くことにした。


川島は、石田さんのことがあって、次の現場へ配属されていない。石田さんの件が片付くまでは、忙しい現場に放り込まれないのだから、勤務状態は、いたって平和なもので、気が楽だ。会社としては、稼いでくるべき社員がのんびりしているのだから、大損だが、それでも、石田さんの件に専念せよ、とのことなので、これはもう、石田本部長様様である。


そういえば、丑三つ時ともう一つ、この夕暮れ時、明暗がぼやけて薄い黄昏時も、逢魔時などと言って、()()時間帯だった。


見たものを信じる。見てないものは信じない。とするなら、活発になるならない、見える見えないは、時間帯での縛りではない、と暫定する。


さて、定時である。


明るいうちに帰れる素晴らしさよ。


定時に会社を出ると、当然だが混む。渋滞するということは、世の中の大半は、定時に帰れているということだ。世の中の大半は、ホワイトなんだ。そんなことを考えると、転職が頭をよぎることもある。しかし今さら、転職したとして、何をすると言うのか。潰しのきかないおじさんに、何ができるというのか。


あ、()()()を仕事にすればいいのか。


いやそれも、ノウハウがないとだめだ。


よし、やろう。


まずは、腹ごしらえだ。


ラーメンでも食おう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ