第3話 仲間
「…は…く…」
「わ…しは…かない」
(なんだかいい匂いがする…)
少しずつ鮮明になる音と香り。目を開けるとすでに日は昇り始めて明るかった。
「あっ、やっと目を覚ました…」
そういって近づいてくる女性は昨日背中を貫かれていた新人だった。羽織っているローブがなければ冒険者だとわからないだろう。
「体…大丈夫ですか?一応、回復ポーションを寝ている間に飲ましておきましたが…」
顔を覗き込むように影を作る。横に目を向けると少しガタイのいい青年がパンを焼いていた。その横には丸太に座って何かを食べている魔法使いの姿があった。青年がこちらに近づいてくる。
「おはようございます。いま、シチューを作っているんですけど、パンは焼いておきますか?」
膝をついて丁寧に伺いをたててくる彼に僕はゆっくりと頷いた。
起き上がると空は完全に朝を迎えていた。僕の分の椅子と料理が用意されていたのでとりあえず座って、ともに食べることにした。
彼らはDランクの冒険者パーティで薬草の回収をするために森にいるらしい。そして、昨日は採集中に色付きの奇襲を受けて陣形を崩されてやられてしまったという。
「ジンさん、昨日は本当にありがとうございました。昨日は自分が戦士職でありながら一撃でやられてしまい、目を覚ましたときにジンさんがヒナに回復魔法を唱えていて…ジンさんは自分たちの命の恩人です!」
目を輝かせて料理をふるまってくれた戦士の名はツルギというらしい。一緒にいると明るくなれるようなまっすぐな言葉には少し照れてしまう。人と話すのは数日ぶりということもあって少しだけテンションが上がってしまう。そんな僕ら3人の会話を黙って食事をしながら聞く魔法使いの名はサナ。ときおり見せる笑顔は3人の親密な仲を感じさせる。
「ジンさんはこんな森で何をしていたんですか?」
「ああ、僕は軍都に向かっている途中でね。悲鳴が聞こえたから森に入ったんだよ」
「そうだったんですね…あの、よければなんですがご同行してもよろしいですか?」
「同行…?何か理由はあるのかい?」
「自分たちは今修行の身でしてより強くなるために旅をしているんです。ただ、現状は昨日のようなありさまで…。自分はジンさんから魔物との戦い方を学びたいです!そしてもっと強くなりたいんです!」
「……」
まっすぐ向けられた視線は1人からのものではなかった。ただ、正直この話は受けたくない。軍都の周りには強い魔物も多い。彼らにはまだ早いし、何より僕の強さは個人技である。彼らに教えられることは少ないだろう。色付きレベルの魔物であれば援護しながら立ち回ることもできるが、軍都周辺にいる魔物の中には正面から戦えば僕自身も勝てないやつがいる。
「自分たちは足手まといになってしまうと思います。ジンさんには何のメリットもないだけでなく、デメリットもあります。それでも…自分たちは強くなりたいんです!」
「私からもどうかよろしくお願いします!」
「…お願いします」
彼らがなぜそこまで強くなりたいかはわからない。昨日だって死んでしまう可能性は大いにあった。より強い魔物に会いたいという心が死期を早めることはわかっているのだろうか。そして、死なせてしまった場合の僕の苦しさも。止めるのが僕にとっても彼らにとっても正解なのだろうな。ただ…
「…わかった。同行を認めるよ」
「ありがとうございます!」
「ただし、僕の判断で危険だと思った時にはすぐに引き返すこと。これが条件だ」
「はい!」
…朝食はとてもおいしかった。
ーーーなんであのとき同行を許してしまったんだろうな。僕はとても冷静だったはずなのに。いや、冷静だったからかな。




