師匠
(今の話は・・・ 本当なのか?でもこんなとこまで連れてきておいて嘘って事はないだろうけど・・・)
「い 今 弟子になれと仰いましたけど どうして会ったばかりの俺なんですか?学園の生徒だって沢山居るのに 」
葉重玄の考えが見抜けない星河は すぐに返答するに至らず うつむき加減にその真意をさぐろうとした
「ふむ 理由が知りたいと言う事かな それは簡単な話で ただの直感だ」
特に迷う様子もなく答える葉重玄に対し更に疑念は積もる
「直感・・・俺に 何を感じたんですか?」
顔を見あげて言葉を絞り出すと やはりすぐに答えは帰ってきた
「君に強者になる者の素質の片鱗を感じたのだよ もちろん君は今 とても弱い まだ見てはいないが恐らく他者と比べて特別に優れている長所も特に無さそうだ」
田舎の村で生まれた星河には修練資源も環境も何一つ恵まれてはいなかった
競い合う若手も居ない状況で他者との違いなど比べるべくもなく 若くして一心境に到達した事以外はいたって並々だったのである
ただ 強者になりたいと強く思い続けるその心の一点を除いて
「君は言ったね 九霄境の強者になると そのように願う若者はこの世に数多いるが その多くはそれだけだ すぐに挫折し諦める そんなものなんだよ」
「言ってしまえば君もそんな有象無象の一人に過ぎない その辺を自身で分かっているから なぜ自分が? と言う疑問になるのだろう 」
「だが目標が無い人間の前には道すらない 大陸中の強者も皆 力無き時代はその有象無象の一人 そこから這い上がって来たんだ」
「そんな強者達にはある共通点があると思っている それは君が短い人生で学んだ事と同じだ」
それを聞いたその瞬間 星河の脳内に浮かび上がるあの言葉
何も持たない星河にとって唯一の武器であるあの信念
「気合いと・・・根性・・・」
星河は自分を鼓舞し続ける言葉を口にした
「うむ それが君を選んだ理由だ 齢十五で既にそれを理解しているのだから子供にそれ以上は求めはしない」
星河の方に向き直るとそっと右手を差し伸べる
「私の弟子になれ 君の夢が叶う様に 私が導こう」
力強い言葉で葉重玄は再度 星河に問いかける
(俺は・・・間違っていなかったのか 真に武者に必要なのは才能や資源ばかりじゃなくて自分自身の気の持ちようだと言うのなら 俺は・・・)
気持ちを固めた星河は両手両膝をつき頭を下げながら口上を述べた
「葉重玄様 どうかこの清星河を弟子にしてください そして武道の高みまでお導きください」
迷いの無い真っ直ぐな言葉を聞いた葉重玄は 少しの微笑みを浮かべた
「うむ 本日よりこの葉重玄は 清星河を弟子として迎える しっかりとついてくるんだぞ 星河」
「はい!ありがとうございます!誠心誠意やらせていただきます!」
こうして星河は 葉重玄の正式な弟子となった
星河の辛く険しい武道の道に光が射し込んだ瞬間であった




