初めての清心城
「おい あんちゃん もうすぐ着くから準備しときな」
御者に声をかけられ気だるい中目を覚ます
歩くのとは違い寝ているだけで目的地に着いてしまう
馬車って凄く便利な乗り物だな と心の中で呟きながら体を起こすと 身を乗り出して外を見てみる
大きな城壁が見たこともない程長く広がっている
そう ここが星河の目的地 清心国の国都 清心城である
「これが清心城か!田舎の村とは全然違うな!」
見たこともない景色に興奮してしまう
「おやおや あんちゃんは清心城は初めてだったか ワシも昔 初めてここを訪れた時は胸が高鳴ったわい」
「せっかくだからワシのおすすめの場所を教えてやろう まずは――」
御者の有益な話を聴きながら景色を眺めている内に城門前までたどり着いた
流石に馬車というのは速いものである
御者に運賃を支払いお礼を述べて別れると早々に城内に向かって歩き出す
城門は東西南北に一箇所ずつ 計四つあり ここは南の城門なのだそうだ
意外にも門番的な人というのは居らず 誰でも自由に出入りが出来る
国都と言うだけあり人の往来も多く 栄えているんだな と肌で感じられる
――清心城――
「ようやく着いた 清心城!」
城門を潜り中を見渡すとあっちもこっちも屋敷が建ち並び 整地された街道沿いには商店や民家が所狭しと続き 田舎の村とは別世界のように賑わっている
「へへへ・・・久しぶりにワクワクしてきたな 色々覗いてみたいけどまた後にしてあそこに向かうか」
御者に聞いた話だと南門からつづく街道を真っ直ぐ向かえばあるという場所
星河のとりあえずの目的地は清心国唯一の武者養成施設 大道学園 である
清心国出身の修練者は大体この学園の卒業者で ここで良い成績を修めると軍人であったり良家のお抱えになる大きな近道になる
だが星河の目的はそうでは無い
しかし思わずお金を手にしたので選択肢としてまずは行ってみる事にしたのだ
「ここを足がかりに鍛えまくって旅に出るってのも悪くないな まずは行ってみよう」
歩きながら眺めていると 薬屋 武器屋 道具屋 食事処 宿屋 等が一通り揃っている
お金さえあれば生活には困らなそうだ
懐のお金を想ってニヤニヤしていると気付けば大道学園のそばまで着いていた
「ここが大道学園か 中々歩いたけど道中あれもこれも珍しくて退屈しなかったな」
周りに目をやると白に薄い緑の服を着た若者が割合多い
「あれは・・・学園の制服なのかな どれどれ」
星河は制服を着た若者達をジッと観察してみる
どの程度の実力者が居るのか確かめる為だ しかし・・・
「ありゃあ・・・どいつもこいつも武徒ばかりだぞ・・・」
武徒とは武者になる為に訓練をしている者達である
元力の波動をチラつかせているので一般人との見分けは簡単につくが 武者が居ない
目につく生徒のどれもこれもが武徒しかいないのである
「もしかしてこの学園って結構程度が低いんじゃ・・・」
「ま まぁ とりあえず中で話を聞いてみよう 中には強い奴らだっているはずだ・・・はず」
一抹の不安を覚えながら学園の敷地内へと踏み入る
門をくぐると 来客棟はこちら と書いた看板が目についた
「ここに行けば良さそうだな せっかくだから色々聞いてみたいし」
来客棟へ入ると応接用の机椅子に受付等があった
壁には大きく学園の歴史のようなものが書いてあったりする
「受付で話聞いた方が早そうだな」
「あのーすみません」
「はい こんにちは 本日はどのようなご要件でしょうか」
受付のお姉さんに声をかけると とても丁寧に対応していただいた が
話を聞いてみた結果
この大道学園には全部で五学年あり各学年平均六百人程在籍していて 総数は三千人にもなるという
しかし武者の数は全体の二割も居らず 五年生でも二百人程しか居ないらしい
二儀境の数ともなると更に少なく 三界境に至っては一人も居ない有様
つまりこの学園に入ってもその程度にしかなれない可能性が高い
今から五年後が頑張っても二儀境で二十歳を超えてから三界境を目指すような話になる
更には清心国の軍の話
一心境であれば軍に推薦で入隊出来るらしく 二儀境なら入隊後すぐに部隊長になれる水準らしい
そもそもこの国の軍は数人の五陰四至境の修練者が率いているらしく六道境に至っては清心国に存在しないという
話を聞いた星河は学園を後にし 宿屋を探して帰路につく
「はぁ・・・清心国ってやっぱり というか かなり国力が低いらしい・・・」
「九霄境を目指してるのに周りだったり教えてくれる先生がこの水準じゃ それを跳び越えて強くなるなんて出来る気がしないな・・・」
「どうしたもんか・・・おや 喧嘩か?」
前に目をやると大道学園の学生三人に背の高いおじさんが絡まれているような状況だ
「おいおっさん!ぶつかっといて詫びも言えねーのか?あぁん?」
「そうだそうだ 一般人のくせによ 俺達は大道学園に通ってる武徒だぞ?謝らないと痛い目みるぜ?」
「もちろん謝るだけじゃなくて慰謝料も払って貰うぞ 俺は肩が外れちまったよ」
上から目線の学生三人は好き勝手な事をまくし立てているが おじさんの方は全く意に介さない様子で佇んでいる
学生の方は武徒のようだがおじさんは元力の波動を感じないところを見るに一般人だろう
「私がぶつかったのでは無く君達がぶつかってきたのだろう そんな輩のような真似はするべきでは無い」
仮にそうだったとすれば至極真っ当な意見だ
あの学生達は因縁をつけて喝上をしているのかもしれない
だが更に勢いを増す学生の汚い言葉にイラついた星河が止めに入った
「おいオマエら 武の道をゆく者が一般人になんて事してるんだ 恥を知れ!」
学生とおじさんの間に割って入り学生達を睨みつける
(ヤバい こいつ武者だ 元力を纏ってやがる)
「な なんだお前は 関係ない奴はどっか行ってろ!」
星河の修位に気づいた学生はたじろぎながらも弁を立てる
「そういう訳にはいかない オマエらみたいなクズはこのおじさんに代わって俺が成敗してやる 三つ数える間に消えなかったから容赦なく潰す」
虎狼剣を取り出し学生に向かって剣を突き立てる
「ま まてよ 俺の親父は親衛隊の士官だぞ 俺に手を出したら親父が黙ってない――」
「さんっっ!」
「いいぃぃーっ!おまえ怖くないのか!?今なら許して――」
「にぃっっ!」
「あっあっ!こ こいつイカれてやがる!許してやるからその――」
「いちっっ!」(力強く睨みつけて)
「あぁぁぁぁーっ!逃げろーっ!速くっ!」
学生三人は脱兎のごとく全力で逃げて行った
脇目も振らず真っ直ぐに
「ふぅー・・・良かった逃げてくれて 来て早々暴力沙汰は避けたいからな」
剣を空間指輪にしまい後ろのおじさんに向き直る
「おじさん大丈夫でしたか?ケガはありませんか?」
見たところ無事のようだが一応尋ねておく
「あぁ問題ない ありがとう 君のおかげで余計な騒ぎにならずに済んだ」
「・・・ところで君 少し質問してもいいかな?」
おじさんは星河に問いかける
「あーはい 大丈夫ですよ」
一体なんだろうか と思ったが悪い人では無さそうなので聞いてみる
「君の名前は?」
「清星河です」
「城内に住んでいるのかい?」
「いえ 今まで城外で暮らしていて今日初めて清心城に来ました」
「ふむ・・・両親と来たのかな?」
「両親はもう亡くなっていてここには一人で来ました」
「ここに来た目的は?」
「武者として強くなる為です」
(グイグイ聞いてくるな・・・何が目的だ?)
「ふむふむ・・・修行するにあたって今後どうするかは決めたのかい?」
「それはまだ・・・さっき大道学園で話を聞いてきたんですが 俺が求めてる水準では無くて決めかねているところです」
「ふむ・・・君は齢十五くらいだろう 学園に入れば既に一心境の君は将来有望だろうに」
「別にこの国で出世したい訳じゃありません 求めているのは純粋に強さ それも並々ではありません」
(なんで一般人が俺の修位を知ってるんだ!?)
「ふむふむ・・・目指してるのは五陰境くらいかな?」
「いえ 九霄境です」
「・・・九霄境ね・・・どうしてそこまでの強さを求める?」
「強くなれば 誰も逆らえない 何も奪われない 今まではずっと貧しい暮らしをしてきたけど未来の自分までそうありたいとは思いません 未来は自分の手で変える その為に武者の頂点に立つ必要があるのです!」
「・・・もし出来なければ?」
「出来るまでやるだけです 今までの短い人生で学んだ事はやる気と根性があればやってやれない事は無い という事です ただ・・・」
「ただ?」
「自分の力だけでは限界があるんじゃないかとも思ってます・・・だから導いてくれる強い師匠を探しています 学園には居なさそうでしたが・・・」
(この少年・・・面白いな これも何かの縁か・・・)
「そうか 君の考えは理解した 君の求める答えになるかは分からないが 興味があるならついてくるといい 面白い経験をさせてあげよう」
「面白い経験・・・ですか?それは一体」
「行けば分かる ただ・・・君を失望させたりはしないから安心してついてきたまえ」
「・・・分かりました」
こうして星河は見知らぬおじさんについていく事となった
向かう先は城外 はたして




