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闇に飲み込まれた謎のメトロノーム  作者: 八戸三春
第一章
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80話 組織の正体

彼は顔を曇らせ、しばらくの沈黙の後、口を開いた。


「分かった、話します。私の名前は浅井鈴美です。シンフォニアという政府を監視する組織に所属してます」


鈴美はしばらくの間、深い息を吸い込み、目を伏せたまま話を続けた。


「私たちは、政府や大企業が行う不正や陰謀を暴露するために活動している。ただ、今回は...少し事情が違ったんだ。私たちのリーダーが、ある情報を入手して、そのために動いた。アリスが標的になったのも、その情報に関わっているからだ」


ムラトと空は真剣に耳を傾けた。鈴美はさらに言葉を紡ぎながら、次第に自分が関与してしまった出来事の深刻さを理解していくようだった。


「その情報は、ある巨大企業が軍事兵器を違法に取引しようとしている証拠だった。アリスは、その情報を知ってしまった。彼女はもともと、私たちのメンバーだったんだけど、彼女がその企業と関わりを持っていたことをリーダーが知った。だから、彼女を襲ったのは、彼女が情報を流すのを防ぐためだったんだ」


鈴美の言葉は、ムラトと空にとって重要な手がかりとなった。彼女たちは、ただの犯罪組織ではなく、より大きな政治的陰謀の一端に関わっていることを知った。


「なるほど。つまり、君たちは正義のために戦っていると信じている。でも、その方法が間違っていると感じたことはないのか?」


ムラトは冷静に問いかけた。鈴美は少しの間沈黙した後、目を伏せて答えた。


「...わかってる。けど、私たちは正義を信じている。だからこそ、こうするしかなかったんだ」


鈴美の言葉に、ムラトは小さく息をついた。


「正義かー。株式市場を乗っ取ったり、違法に密輸するそんな正義がどこにいるの?政府監視と名乗る行為が人を傷つけ、法律を無視するものだとは思えない」


「そうですね罪人ですもんね。実は、ある集団が日本を滅亡しようとする計画を立ててたのです。私たちはそれを阻止するため活動していたんです。でも、その過程で私たちのやり方が正しいのかどうか、疑問を感じることもありました。特に今回の件で、アリスに危害を加えたことは許されない行為だと思います。それでも、私たちは止まるわけにはいかなかった…」


鈴美の声は次第にか細くなり、彼女の罪悪感が表れていた。ムラトと空は彼女の話を聞きながら、シンフォニアの活動や動機についてさらに深く掘り下げようとしていた。


「君たちが追い求めている正義が真実だと仮定しても、そのために無関係な人々を傷つけることが正しいとは思えない。法律や秩序を無視して自分たちのやり方を押し通すことは、結果的に新たな混乱を生むだけだ。」ムラトは冷静に、しかし断固たる口調で続けた。


空もまた、鈴美に向けて問いかけた。


「今日の件はアリスが秘密の資料を知ってしまったからではなく、君たちが何か大きな脅威を阻止するための一部であり、その情報を知ってしまうとアリスがその秘密を暴露する可能性があったからだと、そういうことでよろしいでしょうか?」


鈴美は困惑した様子で頷いた。「そうです。私たちは彼女がその情報を外部に漏らすことを恐れていました。彼女はその企業と深い関わりを持っていたため、私たちはリーダーの命令で行動しました」


鈴美の言葉と気持ちに考慮し、空は深く考え込んだ。彼らは鈴美の言葉に誠実さを感じつつも、彼女の組織が行った行為の重大さを無視することはできなかった。彼女が行った行為がどれだけ大きな代償を伴うものであったか、そしてそれが正義として許される範囲を超えていたことを指摘せざるを得なかった。


「浅井が何を阻止しようとしているのか、僕たちはまだ完全には理解していません。でも、浅井が言ったように、日本を滅亡させる計画が本当に存在するなら、それを阻止する方法は他にもあるはずです。暴力や違法行為に頼らずに、正しい手段でその脅威に立ち向かう方法を見つけるべきではないだろうか?」


鈴美はしばらくの間、空の言葉に耳を傾けていた。彼女の表情には迷いと葛藤が見え隠れしていた。やがて、彼女は小さく息を吐き出し、静かに答えた。


「そうですね、私たちは恐らく間違っていたのかもしれません。正義のためにと信じて行動していたけど、結果的には多くの人々に害を及ぼすことになってしまった。今のあなたたちの言葉で、少しだけ自分たちの行いを見直すことができました。」


鈴美の言葉にムラトと空は一瞬の沈黙を挟んだ後、空が口を開いた。「今、君がこの事件について話してくれたことは大きな進展だよ。それに、君の言う『日本を滅亡させる計画』についても詳しく調査していく。その情報が真実であるならば、我々一同その阻止に協力する。」


鈴美は涙ぐみながら、「ありがとう」と小さな声で言った。彼女の顔には決意の表情が浮かんでいた。その時、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。ムラトと空は、これ以上の情報を得る時間がないことを悟った。警察が到着し、鈴美を引き渡すことになるだろう。


鈴美は手錠をかけられ、警察に連行される準備が整った。その間も、彼女の目には複雑な感情が浮かんでいた。ムラトは彼女に最後に何か伝えたいことがあるかと尋ねた。


鈴美は一瞬考えた後、静かに言った。


「アリスをお願いします」ムラトは軽く頷き、鈴美の言葉を心に刻んだ。パトカーと共に去った後、ムラトと空は改めて今回の事件の全貌を考え直した。シンフォニアという組織が抱える正義の名の下に行われた活動がどれだけの影響を及ぼしているのか、そしてそれがもたらす危険性を理解した彼らは、さらなる調査が必要であることを痛感していた。


「彼らの言う日本を滅亡させる計画、空知ってるか?」



「日本を滅亡させる計画について詳しい情報は持っていないが、シンフォニアのような組織がそれを阻止するために活動しているとすれば、それは相当な規模の危機だろう。なので全く分からない」


空が分からない以上同じ質問を聞くことはなかった。ムラトと空は、鈴美から得た情報とシンフォニアの存在が示す潜在的な脅威について考えを巡らせた。彼らはシンフォニアがどれほどの力を持ち、どのような情報を持っているのか、そしてその情報がどのように日本を滅亡させる計画に結びつくのかについて深く掘り下げる必要があると感じた。


その時、空のポケットから着信音が鳴り響いた。空は急いでポケットからスマートフォンを取り出し、耳を当てた。


「はい、神薙です」


「空!どこ行ってたの!あたしは今病院だから速く来てよね!あと焼きそばパン買ってきて!」


電話の向こうから、アリスの元気な声が響いた。空は一瞬驚いたが、すぐに安堵の表情を浮かべた。ムラトもそれを見て、ほっとした様子で肩の力を抜いた。


「はいはい、今すぐ行くよ。焼きそばパンも忘れないから、安心しろー」と空は優しく答えた。


通話を終えた空は、ムラトに向かって、「アリスが無事らしいから今すぐ病院に向かおう。ついでにコンビニ寄っていく」と微笑んだ。ムラトも微笑み返し、二人は一緒に病院へ向かう準備を始めた。c

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