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闇に飲み込まれた謎のメトロノーム  作者: 八戸三春
第一章
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73話 作戦計画案書

俺たちはババ抜きのゲームを楽しんだ後、時計を確認すると既に夜8時を指していた。時が経つのも忘れるほどにゲームに熱中していたことに、俺たちは驚きとともに笑い合った。アリスが立ち上がり、「そろそろお風呂入りたいから、空。先に入ってくるね~。あ、ムラトも一緒だよ~」と言った。その言葉に、俺は少し驚きながらも笑みを浮かべた。


「アリス、それは無理だよ。ムラトもびっくりするから」と俺は冗談めかして言った。


ムラトはそのやり取りを静かに見守っていたが、彼女は入りたい衝動が顔で分かったけどやはり冷静な表情を崩さなかった。「そうですか。まぁ、私も丁度入るところだったので」と静かに返事をした。


アリスはその答えに納得し、「わかった。じゃあ一緒に入ろ~。空は不審者だから来ちゃだめだよ!」と強く宣告した。


「アリス…言葉の変化球を投げてくるな…」と俺は苦笑いを浮かべながら言った。アリスは舌を出して笑い、ムラトも少しだけ微笑んだ。


「わかったよ、アリス。俺はここで待ってるから、二人でゆっくりしてきな」と俺は諦めの表情で言った。


「ありがと、空!じゃあ、ムラト行こう!」アリスはムラトの手を引いて浴室へ向かおうとした。空はその間リビングで作業をした。


部屋の空気は重く、薄暗い蛍光灯の光が一つだけ机の上を照らしている。神薙空は書類の山に囲まれ、眉間にしわを寄せながらパソコンの画面に集中していた。ベータ144の拠点制圧案を作成するという任務は、想像以上に複雑で困難だった。


机の上には、ノヴァシティの地図や組織の配置図が広がっている。空はそれらを何度も見比べながら、効率的な攻撃ルートを考えたが、どれもリスクが高すぎるように思えた。頭を掻きむしりながら、再度資料に目を通す。


「もっと簡単な方法があるはずだ…」空は独り言をつぶやいたが、答えはすぐには見つからなかった。ベータ144の拠点は複数の防御層で守られており、直接的な攻撃は無謀だった。


机に広げたノートには、空の手書きのメモがびっしりと書き込まれている。各防御層の特徴や弱点、侵入経路の可能性など、あらゆる情報が詰まっていたが、それでも全体像を掴むのは難しかった。


ベータ144は特殊な遺伝子組み換え技術によって生み出された生物で、その名前の由来は彼らがベータレベル(音調)の遺伝子改変を受け、144の異なる遺伝子セットで構成されていることにある。彼らの設立理由は、科学的な研究と実験によって新たな生物を創造することであり、医療、農業、環境などの分野での進歩を目指している。先進的な遺伝子編集技術によって、ベータ144は通常の生物とは異なる特徴と能力を持ち、身体的な特徴や外見、知覚能力、生理的な機能、さらには特殊な能力やパワーを持つ。


ふと、アリスとムラトのことが頭をよぎる。彼らが風呂に入っている間に、この難題を解決しなければならないと焦りが募る。だが、焦りは冷静な判断を妨げるだけだった。


「冷静になれ、俺…」深呼吸をして、自分に言い聞かせる。ベータ144の拠点は、単なる物理的な障壁だけでなく、心理的な罠も仕掛けられている可能性が高い。彼は再度、ノートに目を向け、潜在的な心理的罠について考え始めた。




――空は資料に没頭していると、時間の感覚が次第に薄れていく。気づけば、机の上にはコーヒーの空き缶がいくつも転がっていた。それでも、彼は諦めることなく資料と格闘していた。


「ここで諦めたら、何も変わらない…」自分に言い聞かせ、再びノートにペンを走らせる。彼の目は少し赤く、疲労の色が濃くなってきているが、彼の意思はまだ折れていなかった。


空は、ノヴァシティの地図を広げながら、潜入経路をシミュレーションしてみた。主要な防御層を回避するルートを考えつつ、効果的な妨害策を模索する。敵の注意を引きつけるためのフェイク攻撃や、電子戦による混乱作戦など、あらゆる戦術が彼の頭の中で交錯する。


「このルートなら、なんとか…」一つの案が頭に浮かんだが、そのデメリットもすぐに明らかになった。もし、敵がこのルートを察知した場合、彼らの反撃に対抗する術がない。


空は頭を抱えながら、再度資料に目を通した。ベータ144の能力は計り知れず、彼らの反撃を受けるリスクを最小限に抑えるためには、もっと詳細な作戦が必要だった。


彼はさらにいくつかの作戦を考案したが、どの案も決定的な解決策にはならなかった。例えば、主要な防御層を回避するルートを考えたが、そのルートには見張りが多すぎて通ることが不可能だった。また、電子戦による混乱作戦も試みたが、ベータ144の高度な技術に対抗するのは難しかった。


「もっと別の視点から考えなければ…」空は焦りを感じつつも、自分を落ち着かせるために深呼吸を繰り返した。これまでの案は全て現状の問題を解決するためのものだったが、もっと根本的な解決策が必要だと感じていた。


「あと少しで何か見えるはずだ…」空は自分に言い聞かせながら、最後の修正を加える。彼の目は集中力を失わず、手元の資料に釘付けになっていたが、まだ全体のプランは完成していなかった。


彼は再び、机の上に広げられたノートに目を通し、新たなアイデアを模索し始めた。しかし、頭の中は疲労と焦りで混乱していた。何度も何度も同じ情報を見返し、異なる視点から考えようと試みるが、どれも決定的な解決策にはならなかった。


「どうすればいい…」空は頭を抱えたまま、途方に暮れていた。途方に暮れていた。ベータ144の数は想像よりも多く、その能力も未知数だった。彼らの特殊な遺伝子改変技術によって、生み出された生物は一筋縄ではいかない。通常の攻撃や侵入作戦が通用しない可能性が高かった。


「どうすればいい…」空は深いため息をつき、資料に再び目を通した。ベータ144の拠点は、科学者たちによる長年の研究と実験の成果であり、その守りは非常に堅固だ。彼らは物理的な防御だけでなく、心理的な罠や高度な技術を駆使している。


「電子戦による妨害はどうだ?」と空は自問する。だが、すぐにその案は頭の中で却下された。ベータ144の技術は非常に高度であり、普通の電子戦では対抗できない。かえってこちらが逆に操作されるリスクがある。


次に、空は偽の攻撃を仕掛けて敵を混乱させる作戦を考えた。フェイク攻撃を複数箇所で同時に仕掛けることで、ベータ144の注意を分散させる。しかし、この作戦にも大きなリスクが伴う。敵がその意図を察知した場合、本攻撃が始まる前にこちらの戦力が壊滅する可能性があった。


「どうしてもリスクは避けられない…」空は再びノートに目を落とし、他の作戦を考えた。ベータ144の防御を突破するためには、彼らの弱点を突くしかない。しかし、その弱点を見つけるのは容易ではなかった。


彼はベータ144の特性をもう一度考え直す。特殊な遺伝子改変技術により、彼らは多様な能力を持っている。だが、その能力が彼らの弱点にもなり得るのではないかと考えた。例えば、音波に対する感受性が高いのであれば、特定の周波数を利用した攻撃が効果的かもしれない。


「音波攻撃…これなら可能性があるかもしれない。」空は新たな希望を見出し、音波に関する資料を探し始めた。特定の周波数がベータ144にどのような影響を与えるのかを調べるために、過去のデータを丹念に洗い直した。


しかし、音波攻撃も完璧な解決策ではなかった。特定の周波数を使った攻撃は、タイミングや精度が重要であり、一度でもミスをすれば失敗に終わるリスクがあった。それでも、他に有効な手段が見つからない中、空はこの作戦に賭けるしかないと考えた。


時間はどんどん過ぎていく。空は一つ一つの資料に目を通し、メモを取りながら作戦を練り続けた。ムラトとアリスが風呂から上がる頃には、空の机の上はさらに多くのメモと資料で埋め尽くされていた。


「もう少しだ…」空は自分に言い聞かせ、最後の調整に取り掛かった。ベータ144の防御を突破するための音波攻撃の詳細を詰める作業は、容易ではなかったが、彼の集中力はまだ切れていなかった。

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