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闇に飲み込まれた謎のメトロノーム  作者: 八戸三春
第一章
56/85

55話 たった一つのミス

「あ、近付いたぁ」


エリザベスが言葉を紡ぐと同時に、レオナの目の前で手榴弾が爆発し、閃光と爆風、そして煙が辺りを覆った。レオナは爆風に巻き込まれ、身体が宙を舞いながら地面に叩きつけられた。


「痛い……何で……」


炎と煙の中から、彼女の苦悶の声がこだまする。エリザベスは冷酷な笑みを浮かべ、優雅に歩みながら言葉を投げかけた。



「紐で繋がれた手榴弾の落とし物だよー」


エリザベスの言葉にレオナは施設に仕掛けたブービートラップだと気づく。地面に倒れたまま、レオナは身動きが取れなくなった。身体を確認すると手と腕の肉は裂け、立ち上がろうとしても足の感覚がない。


服は爆発で燃え散ったと思うし、レオナの制服は爆風で燃え尽き、彼女の傷ついた肉体が露わになった。煙と炎の中、エリザベスは冷徹なまなざしで倒れたレオナを見つめた。


「愚かな軍人さん。風邪引くよ? あでも、大事なところは見えてないか安心安心」



エリザベスは冷笑しながら近づき、レオナの無力な姿を見下ろした。


「君の正義がこんなものだとは、ちょっとがっかりだわ。でも、仕方ない。運命はこうなったってことよ」


「嫌だ……こんな最後の運命……」


瀕死の状態で念願していたはずの正義が崩れ去り、レオナの目には絶望がにじんでいた。


エリザベスは嘲笑いながらレオナに寄り添い、彼女の耳元で言葉を囁いた。


「君の望んでいた未来はもう見えないんだね。このまま消えてしまいなさい。どうせ勝てないと見込んでるのに」


一抹の哀れみを込めて、エリザベスは言葉を続けた。


「私は最高の楽園を用意しているの。君のような弱者はここではもう要らないけど、安心して。この痛みもすぐに消えるから」


エリザベスは冷酷な微笑を浮かべ、レオナを絶望へと追い込んだ。


「怖い……死ぬのが怖いよ……エリザベス……」


レオナの声は弱く、絶望と死の恐怖に彩られていた。エリザベスは、彼女の苦しみを見つめ、その状況を楽しんでいるようだった。


「そうだね。貴方はまだやることだってあるはずものね。でも、これは戦闘であり死は避けられない宿命さ」


「私を助けて……死んじゃう……」


レオナの声が弱々しく漏れる中、エリザベスはふーんっとため息をつき、興味深そうに彼女を見つめた。


「貴方のために助けを呼ぶ?それはちょっとつまらないわ」


エリザベスは冷淡に微笑みながら、彼女のもとを離れると、屋上から静かに立ち去っていった。残されたレオナは死に耐えながら、無力感と絶望に包まれていた。


「私の手が無い……どうしてこんなことに……」左腕を確認すると既に手が消えており、更に左頬から隙間風が吹き抜ける。この身体の怪我で悟ったのがゾンビのような存在になったこと。手榴弾の爆風で部分的に死んだ身体が、不気味な生命力を保ちながらも軍人としての力を喪失していく。


「爆発の後ってこんな形なのか……」


レオナは自身の身体に触れ、変わり果てた姿に戸惑いを覚える。助けを求める術も手立てもないことを痛感していた。屋上にただ一人残され、エリザベスの挑発が心に突き刺さった。


「もう……私の未来は……」


彼女の声は小さな囁きとなり、絶望の淵で彷徨っていた。


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