43話 犯人特定
犯人の特定場所を既に捉えた空は走り出す。
相手は一人で、残りの部下が何処かに展開していると考えられる。
あのビルから見えるその姿は、明らかにあの少女だった。
しかもあの銃声はただのライフルではない、明らかに爆発したかのような威力だ。間違いなく、犯人は組織的な少女に違いない。
すると再び銃声が鳴り響く。それは明らかにこの屋上に向けて撃っているものだった。
1秒毎に一発の銃弾が空たちに向けて放たれる。
それをなんとか避ける空を心配し、救助隊員は声をかけようとしたその時、一発の銃弾が空を襲った。
足に命中し、抉れたような傷から大量の出血が引き起こされる。そしてそのまま重力に従い、地面に落下していく。
足を負傷し、建物の影に隠れながら座り込む空は再度足元を確認すると飛び出た骨の破片と突起。
破裂した跡の肉が散乱し、辺りに血液を飛び散らせていた。
ライフルではない威力だ。この銃の正体はわからないが、空には一つ思い当たるものがあった。それは装甲用による遠距離攻撃によるものと空の憶測は確信となった。
足踏みができるよう、落ちてあった棒を足に縛り付ける。止血し、移動を再開した空は思わず言葉を漏らす。
ライフルが撃ってこないタイミングを狙って、空は建物から離れる。
ピストルの射程圏内は50メートルだが、「この9mmマテリアルパーフォレート貫通弾を使用すればこの500メートルのビルくらいの距離を狙える」
そう呟きながら、空はその武器を手に持ちながら慎重に動いていた。
だがそれと同時に、空は何かに気がついた。それは狙撃してこない理由だ。
恐らくそれは、空が死亡判定したからだろう。その死亡判定のおかげで空は生き残ることができたし、敵の意識外へと移動することができた。
だが、このまま逃げ続けていれば狙撃されるのは時間の問題だ。
それを悟った空は何か対策をしようと思い、壁に寄り掛かりながら考え始める――あのライフルの正体は対物ライフルの弾丸の威力が向上されたものだった。
機関砲に搭載されてる弾丸と同等の威力を持っていた。あれを喰らえば骨と内蔵は破裂し、生存の確率は非常に低かった。そもそも対物ライフルは人を撃ものでもないし、対戦車武器でもない。ライフルとの違いは射程だ。対物ライフルは装甲車両や地面などの障害物を破壊するために使用されているものだが、あの狙撃手は飛んだ残虐性を持っていた。
―もし罪悪感あるなら、あんな武器で人を殺したくはないのだろう。だからわざと狙撃してこないというのも納得が繋がる。
どうにであれ、狙撃してこないってことは退避したってことだ。あいつは恐らく、建物の外から撃ってくるはずだし、その方向に警戒すればどうにかなる。
後は弾丸を避けつつ誘導し、あいつのライフルを無力化すれば狙撃手に勝てる。
潜入作戦は中止し、次の作戦を正確に整ったら突撃だ。空は尊殿の方に戻ろうとしたが、その時にはもう尊殿の姿は見えなかった。
治療が早いが、尊殿が助かるならならそれでいい。その方は、神の子で、尊殿がいれば安心だし、何かあれば警護隊などが助ける。
あの方が自分のことをどう思ってるかは知らないけど。
そう言って最後に笑う空であったが、その笑顔は一瞬辛そうな様子だった。それを見た空は胸が少し痛くなるのであった。
とあるコンビニの中買い物し終えた空は片足が覚束ないまま一人で帰るのは危なかった。
足の負傷の後、自ら病院にて治療を受けたにも関わらず傷はやはり大きかった。
それでも空は医者に一応完治したと言われたので大丈夫だと安心はしていたけど、やはり痛みはまだあった。
特に左足の爪先から痺れるような痛みはいまだに感じられている。
しかし、それでもまだ戦わないといけない。と空は自分に言い聞かせる。
そして、病室に戻ろうとする最中、病院の建物から外へ出る時、後ろから気配を感じた。それは間違いなく狙撃手の気配だった。
下を見るとやはりレオナだった。
レオナは自分の右手から何か飛ばしてきた。それは光棒のような不思議なものだったが、受け取るとライフルより一回り大きい薬莢だった。
渡した理由がよくわからなかった。
「命中したのによく生きてるね。普通、あんな距離から撃たれたら一発で絶命するのに」
(こいつも狂人なのか?)
とレオナの発言を聞いて空は驚く。レオナが言っている命中したという言葉にもだ。そんなはずはないと思った空だが、なぜか不安が襲ってきた。
彼女の狙撃が本当に命中していたのか、それとも何か別の意図があるのかを理解できず、空は急速に状況を把握しようとした。
「なぜ俺を狙っているんだ?何が目的なんだ?」と問い詰めるも、レオナは微笑みながら答えることなく、一歩も引かないまま彼女の視線が空を貫いていた。
その時、レオナが口にした言葉が不気味に響いた。
「君は選ばれた者。戦いは終わらない」
空は言葉の意味を理解できないまま、彼女の前に立ちはだかっていた。彼女の言葉が象徴する謎めいた使命や戦いに巻き込まれたことに、空はますます混乱していく。
「君の中に眠る力はまだ覚醒していない。戦いの中でそれが必要になる」とレオナが囁くように言った瞬間、空は何か強大な力に引っ張られるような感覚を覚えた。
「君は私たちと共に未知の戦いに挑む者。運命の糸が交わることを知っている」レオナの言葉が神秘的でありながらも、納得感が生まれていく。
「私たちは選ばれし者同士。君の中に秘められた力は、この戦いにおいて重要な役割を果たす」
再び彼女の言葉が重みを帯び、空は自身が抱える運命の意味を考え込んでいた。
しかし、空には未だに多くの疑問が残っていた。何故彼女たちとの戦いが必要なのか、そしてなぜ自分が選ばれし者とされてしまったのか。
混沌とした感情の中、彼は自身の過去や未来に照らし合わせて理解を試みた。
「まだ分かってない?」
「まぁ……な。もっと分かりやすく」
レオナは微笑む。その微笑みには深い意味が込められているようで、空はますます混乱していく。
しかし、彼女の存在が不可解な魅力を持っていることも確かだった。
「それより、今なら殺せれるけど私を殺さないのか?」
空は混乱と疑問の中、レオナの問いに答えることができず、しばらく黙り込んでしまった。
彼女の存在が何か異次元的であり、戦いの意味が未だに掴めていない中、生死をかけた選択を求められることに、心が揺れ動いていた。
「君は私を殺せるかもしれないし、できないかもしれない。でも、それが君の力だと私は信じている」レオナの言葉には確信が込められており、彼女の目は強い意志で輝いていた。
空は深いため息をつき、「俺はただの普通の人間だ。何もわからないし、戦いたくない。お前もそう思うだろ?特に意味もない人を殺す理由もないだろ?」と言い切る。
しかし、レオナは微笑みを崩さず、深い哲学的な視線で彼を見つめていた。「そう……」表情を変えると爽やかな微笑みで上に目線を向けた。
「それと、また空が作ってくれた焼きそばまた食べたいな」
そんな意外な言葉に、空は戸惑いと同時に安堵の感情が湧いてきた。何故なら、それは戦いや選ばれし者の複雑な宿命から解放され、普通の生活への願いが込められていたようだった。
「焼きそばか……?」
空は思わず目を見開き、彼女の言葉に驚きながらも微笑む。
「それなら、また一緒に食べよう。ただし、戦いのことはもう考えたくないんだ」
レオナは微笑みを増して、空の言葉に頷いた。
「分かってるよ、空。君に強制するつもりはない。ただ、未来の戦いに巻き込まれるかもしれない」
彼女の言葉には未来の不確かさと同時に、対峙するべき運命が空を待ち受けていることが感じられた。
しかし、焼きそばの一言が意味する通り、彼女との関係はただの敵対的なものだけではなく、何かより深いものが結びついているように思えた。
「君にとっての普通の生活が、どれだけ尊いものであるか分かっているよ。でも、時には力を解放し、立ち向かうことも必要かもしれない」
そんな言葉に、空は再び不安を感じつつも、自分の選択を信じる覚悟を決めた。
未知の戦いが待ち受けている中で、焼きそばの味を分かち合いながら、二人は新たな旅路に身を投じることとなった。
「それじゃあ、焼きそばでも食べに行こうか。ここは病院から出る前に立ち寄ったコンビニだから、もう少し買い物をしよう」
彼女の提案に、空は微笑みながら同意する。それに、焼きそばの味を感じることができれば、少しでも現実の平穏な時間に逃れることができるだろうと、彼は希望を胸に抱いていた。




