38話 気配
包丁を握りしめ、後ろから突き刺そうとしたその瞬間、右腕を捕まれ、床に倒れる。
全く何が起きてるのかさっぱりわからなかった。でも弾力のある手の皮膚を予測すると10歳前後の少女のものだとわかった。でも誰か分からなかった。ユキが驚いていると、耳元で声が聞こえた。
「君が輪上ユキね」
その時、ユキは背筋が凍り付いた。力が強すぎて抵抗もできなく、このままでは殺されると本能的に感じた。「き、君は誰?」とユキが聞くとその少女は手を離した。
「レオナ・ローレンス。国家公務員だ」
レオナは冷静に答える。
その少女は前に香りと気配を感じが似ている。ユキはそのまま呆然とするしかなかった。
レオナが再び手を出した瞬間、ユキは抵抗しようとするが、身体が動かない。
「異様な人だったがいざ戦闘では別に大した強い能力ではないみたいね。君の記憶や過去も調べて分かった。君はまだ病弱のまま化け物にされたのね。それでも私は容赦はしない」
ユキは震える。その少女の目つきが恐ろしかった。
ユキは再び質問する。
「何で知ってんの?」
すると少女は少しの間を空いてフッと微笑すると口を開いた。
「全てを知る人だよ」
あまりの恐怖で唖然とした。ユキは何も言えず黙り込むしかなかった。
レオナはユキの髪の毛を持ち上げると顔を近付けた。
「神薙空は何処だ?答えろ」ユキは思った。
どうやって生き延びようとするかを必死で考えた。
「輪上ユキ。私は君の敵ではないんだ。君と同じ目的で一緒に協力しようと思ってる」
レオナの優しい言葉にユキは安堵すると肩の力を抜いた。
「私たちと協力ってどういう?」
ユキは少し落ち着いた様子をしている。
レオナはユキが冷静になったと感じたら再び警戒した。レオナはユキの顔色を窺った。ユキは心配そうな顔つきをしている。
「まぁ、少しの調査だ。神薙空は何処にいるか、というのは私も知りたいことだよ。でも、君が思っているように彼はただの人間ではないんだ。彼は神の力を持つ存在なんだ。だから、彼を見つけるのは簡単なことではない」
レオナはユキに説明した。
「神の力?何を言ってるの?神薙空はそんなことしないよ? 普通の大学生だったはずよ。彼は何故神の力を持つようになったの?」
ユキは驚いてレオナに尋ねた。
「それは私も詳しくは分からないけど、彼はある日突然姿を現れたんだ。その後、世界中で奇妙な現象が起こり始めた。空が赤く染まったり、地震が頻発したり、怪物が現れたり。それらのことは全て神薙空が関係しているという噂が広まったんだ。彼は神の力を使って世界を変えようとしているのかもしれない」
レオナは深刻な表情で言った。
「そんな…神薙空はそんなことをする人じゃない。彼は優しくて、厳しいけど正義感が強くて、友達思いの人だった。彼は何故そんなことをするの?」
ユキは涙ぐんでレオナに訴えた。
「私は君の気持ちが分かるよ。でももし、この世界が神薙空の手によって支配されたら、君はどうする?君は神薙空に従うの?それとも反抗するの?」
レオナはユキに問いかけた。
「私は…私は…」
ユキは答えに詰まった。彼女は神薙空に対してまだ愛情を持っていたが、彼が世界を破滅に導くとしたら、彼女はそれに加担できなかった。
彼女は自分の心の中で葛藤した。
「君は決断しなければならない。私は君を助けたいんだ。私は神薙空を止めるために戦っている。私は国家公務員として、世界の平和と秩序を守るために、彼に立ち向かうのだ。君も私と一緒に来てくれないか?」
レオナはユキに誘った。
「私は…私は…」
ユキは迷った。彼女はレオナの言葉にも一理あると思ったが、彼女は神薙空を裏切ることができるだろうか。
彼女は神薙空に対してまだ信頼を持っていた。彼女はレオナの目を見た。レオナは真剣な表情でユキを見つめていた。
「君はどうするの?」
レオナは再びユキに尋ねた。
すると玄関を開く音がして、ユキは空が帰ってきたことに心の中で喜んだ。




