2話 アリス・ローナー
その頃、金髪少女は空を探して、ノヴァシティの中を歩いていた。すると、誰かに危ないよっと声が聞こえたので振り向くと、そこに50代の男性を見かけたので、彼女に話しかけた。
「お嬢ちゃんそこは危険だよ! お家に帰りなさい!」男性はそう言って、両手をバツ印にして首を横に振りながら危険だと合図をした。彼女は笑顔を浮かべだけど、突然恐怖の表情を浮かべた。なぜなら、男性の後ろには、ペットサイズのベータ144の化け物がいたからだ。だが、男性の方は、ベータに気付かなかった。
彼女は恐ろしくなって、その場から離れようとした。だが、男性が追いかけて彼女の腕を掴んで逃げられないようにしたのだ。
すると、ベータが男性に飛びかかってきた。彼女は思わず悲鳴を上げた。男性の頭にかぶりついて、肉を喰らおうとしている。男性は叫ぼうとしたが、声が出せなかった。彼女は必死に抵抗したが、何もできなかった。やがて、男性は動かなくなり彼女の目の前には、血まみれになった男性の頭があった。彼女はすぐ、インナーパワーを解放し、手をかざして男性ごと圧力で押し潰そうとしたが、ベータはそれを察知するとすぐに逃げ出した。彼女は悔しそうな顔をしていた。
この世界では、人々はインナーパワーと呼ばれる力を持っている。いわゆる覚醒能力というものだ。彼女の能力なら、小さいベータでも跡形もなく消し去ることができただろう。だが、今回ばかりはそうはいかなかった。
ベータは察知して逃げて、男性を破壊してしまったが、アルファは彼女を襲わなかった。彼女は安堵したが、目の前にベータの親分がいることに気付いた。それは、巨大な蛇のような怪物で全長は10メートル近くあり、体表は黒に近い紫色をしている。
そして、頭部からは2本の角が生えていた。おそらく、これがベータの本当の姿なのだろうと、彼女は思った。ベータの親分の目が赤く光った次の瞬間、彼女に向かって突進してきた。彼女は慌てて驚くが、なんとか避けることができた。だが、ベータの親分に攻撃された建物は崩れ落ち、瓦礫が地面に散らばっていた。
彼女はベータの親分に飛び上がり、拳を振り下ろしたが、ベータの親分からすれば、ハエのようなものだった。ベータの親分は尻尾を使って、彼女を弾き飛ばした。彼女の体は宙に浮き、地面へと叩きつけられた。
それでもなお、彼女は立ち上がったが、全身に痛みを感じて動けなかった。そんな彼女に、ベータの親分は再び襲いかかってきた。その時だった。
足音と共に、誰かの声が聞こえてきた。
「居たぞ! 武装解除を許可する、攻撃しろ!!」
武装した男たちが銃を構えて巨大な蛇に向かって発砲する。銃弾を受けた大蛇は悲痛な叫びを上げ、暴れまわってるが、倒れる様子はない。それどころかますます怒り狂っているように見える。
空は辿り着くと発泡許可を止めるように言った。
「武装止め!! 全員銃を降ろせ!!」
すると、発砲していた者たちは一斉に動きを止めて空の方を向いた。そして、40代らしき男が話しかけた。
「何故武装停止した?お前は一体何を考えている?」男はそう言いながら、空に問いかけると答え始めた。
「9mmNATO弾じゃあ、この装甲を貫くことはできない。この怪物を倒すにはこの弾丸を使うんだ」
説明し終わると拳銃のマガジンを取り出し、弾丸だけ抜くと手のひらを見せた。先端は赤、緑、青の三色に光っており、まるで宝石のようである。それを見ていた男達はざわめきだした。
空はマガジンを装填して、チャンバー内の薬室に特殊な弾丸を送り込んだ。そして、銃を構えて化け物に目掛けて引き金を引いた。すると、銃弾は発射され、化け物の腹を命中すると大穴を空けた。甲高い声でもがくと血を流しながら倒れた。
空の撃った弾は対物ライフル並の特殊弾頭であり、威力はアルミニウム3枚貫通するよりも遥かに高いものであった。この特殊な弾薬を使用する理由は敵の装甲を貫くためである。
通常であれば、このような大型の銃器を使用すれば反動により、使用者の身体に大きな負担がかかる。そのため、使用するには専用の訓練が必要となり、素人の人間では扱うことができない。
だが、この特殊な弾丸は使用時に発生する衝撃を吸収できる素材で作られており、反動試験ではクリアしている。
ただし、この弾丸は特殊な加工が施されており、一度使うと数十万の金額になる。つまり、一発限りの切り札であり、この特別な弾丸を使用して敵を倒せるのは一回だけだ。さらに、特殊な技術を使用しているため、量産化が難しいのだ。
「手応えはあった。だが、まだ生きているかもしれない」空はそう言うと、すぐに次の行動に移った。彼は腰につけていたポーチかスモークグレネードを取り出すとピンを抜いて、化け物に投げ込んだ。空中で爆発すると、大量の煙を発生させた。空は煙の中に入ると、敵の位置を確認しようとした。しかし、煙のせいで視界が悪く、どこにいるのか分からなかった。だが、怪物は生きていて、こちらに向かってきていることだけは分かった。空は拳銃を構えて、引き金を引いた。銃声が鳴り響き、銃弾が発射された。しかし、銃弾は敵に当たらなかった。空は舌打ちをした。そして、再びリロードをしようとしたが、その前に敵が攻撃してきた。その瞬間、横からアリスが出てきて、蹴り飛ばすと大蛇は吹っ飛んだ。
アリスは空の方を見ると、「大丈夫!?」と心配そうな顔で言った。空はアリスに礼を言うと、彼は立ち上がる。スーツに付いた砂を払うと、急に彼女は手の平を出した。ご褒美にパンを持ってこいって意味だ。空は呆れて、財布を確認。すると、財布にはもうお金がなかった。空はアリスに謝ると、アリスは首を横に振った。
「いいよ。それより、早く逃げよう。ここは危ないわ」
空は頷くと、アリスと一緒にその場から離れた。
アリス・ローナー。名前に反して性格は元気で明るい自由奔放な少女だ。サラサラの金髪に青い瞳、そして整った顔立ちをしている。年齢は14歳であり、身長は150cmほどしかない。彼女はノヴァシティの片隅にある小さな家で暮らしている。
家はノヴァシティの中でも治安の悪い地域にあり、危険な場所だ。そのため、彼女のような幼い子供が一人で暮らすには危険すぎる環境である。しかし、アリスは組織に狙われているため、誰かに守ってもらわなければ生きていけない。そこで自らアリスの護衛を引き受けることになった。
アリスの保護者として、彼女を組織の手から守ることを決意する。アリスにノヴァシティのことや自分のことを色々と教えた。アリスは空のことを信頼しており、よく懐いていた。アリスに優しく接し、彼女を守り続ける。