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闇に飲み込まれた謎のメトロノーム  作者: 八戸三春
第一章
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11話 アリスの状態

そのまま徒歩で帰宅する。道中、タクシーを呼ぶと運転手が話しかけてきた。

「今日は寒いですね」

空はそうですねと返事をした。すると、車の後輪に空気が破裂した様な音がした。運転手は慌ててハンドルを切り、そのままUターンしたが、電柱にぶつかる目前で急停止した。空は何が起こったのか把握する間も無くドアをこじ開け外に出た。すると、後ろからハイヒールを鳴らす音が聞こえてきた。エリザベスだ。銃を構え、後ろを振り向く。そこには予想通りエリザベスがいた。

「また会ったね。私のペットにならない?」

エリザベスは笑顔だった。空は後退りしながら答える。「お断りします」

空は手を震わせながら引き金を引いた。銃口から煙とが出ると、エリザベスはジャンプして避け、空に向かってくる。空も距離を取りつつ、銃を連射する。

しかし、エリザベスに当たる気配はなかった。空は焦りながら引き金を引くが弾切れだった。

その隙に敵は間合いを詰めて銃剣で切りかかってくる。ギリギリのところで避けて腰にあった銃を取り出し、敵の脇腹に向けて撃ったが当たった手応えはない。

撃たれた地点に目を向けるとそこには誰もいなかったからだ。

「上か?いや、違う!後ろか!?」

後ろを振り向くとエリザベスは空の顔面に目掛けて蹴る時、アリスが間に割って入り彼を守った。アリスの反撃に、空気をも切り裂く高速の蹴りを繰り出すが、エリザベスは身を翻し、これを回避。

距離を詰めて余裕の微笑みをした後、顔を90傾けて、笑い声を混ぜる様に喋る。

「つれないなぁ!」

空は怯えながら距離を取る。エリザベスが二人に銃口を向けようとするが、急に手を下ろした。

それが何を意味しているのか空は分からなかったが、アリスは意味を理解していた様だった。すると、エリザベスは距離を離れた。

「少し交渉の時間が欲しいんだ。いいかな?」

エリザベスは両手を広げたまま、笑顔で語り掛ける。空は警戒しながら話す。

「交渉とは? 具体的には何を話そうと言うんだ?」

エリザベスは笑顔のまま答える。

「大したことじゃないよ。貴方達は確か~生活費に困ってるんでしょ? それなら私が助けてあげるよ。学費と住居、それと日用品も提供してあげる。悪くない条件だと思うけど、どうする?」

エリザベスが提案してきた内容に、空は驚愕の表情を浮かべる。確かに彼女は明らかに自分たちにはできないような力を扱っていたが、まさか金で雇うよりも、手を組む方が何倍も良いとは思いもしなかったのだ。

だが、肝心のアリスはなぜか浮かない顔をしていた。彼女は何か裏があるように感じているのだろう。空とアリスが迷っていると、エリザベスは言葉を続ける。

「どうする? 話乗ると今から生活費支給するけどどう?」

空は意を決して答える時、アリスが空を庇うかのように前に出た。そして、口を開く。

「黙って聞いていれば、ふざけた話をほざいちゃって! 金なら一応有るけど、アンタからは特に貰う義理は無いわね!」

そう言い放ったアリスは、エリザベスに対して強い敵意を向ける。そして、そのまま空の方を向いた。

「ねえ、ソイツきっと何かを企んでる。その証拠に魔法をチラつかせて私たちに圧力かけてるでしょ?」確かに彼女の言う事は正論だ。

だが、今のこの状況だと流石に言い過ぎだと感じた空は彼女を止めるが、時すでに遅しだと言わんばかりにエリザベスが後退りをする。

「仲間にならないんだね、残念。将来的に雑草を刈り取ることにならなきゃいいけど」

そう言って、エリザベスは道路から去っていった。その際、空中に魔法陣が出現するのを見た空は目を疑った。それは明らかに魔法にしか見えないもので、映画で見たような色の光を発していたからだ。空は急いで彼女に駆け寄るも、そこにはもう彼女の姿は無かった。


 

翌日、朝食は大皿に塩コショウを振った焼きそば一人前だけだった。アリスは朝から元気がない様子だ。だが、それも無理はないと思った空は優しく声を掛けることにした。

「無理するなよ」

アリスが朝食を食べ終えると、早速アリスは学校に行く準備を始めた。空はアリスを説得して装甲車で学校を送り迎えしてもらうことで、二重の安全を確保できるのだという。

だが、今日もまた朝食が一食分しかないとなると話は別だ。仕方なく、アリスは1日2食生活をすることが決定されてしまい、彼女はため息をついた。

空は申し訳ない気持ちになるも、今更どうにもならない。今日の昼食代は、アリスが帰りに買ってきてくれることになった。

空としては、せめて昼食くらい食べて欲しいと思っているのだが、エリザベスに襲われたことにより、アリスはすっかり怯えてしまっていて、夜も眠れていないらしいのだ。

講師の授業を聞いても彼は上の空だった。先生からは、時折鋭い視線が投げかけられるが、空は気にしていないふりをしていた。

昼になると、アリスからメッセージが届いた。アリスからのメールは珍しく、まだ携帯を持って電話の使い方すら知らないアリスが、どうにかしてメールを送ってきているのがわかった。

内容はこのような形で書かれていた。

【先生から学校のお金のこと聞かれた。でも、もうお金がなくて払えないよって言ったら、先生からもう明日から学校来なくていいよって言われた。どうしよう、お金ないけど。どうしたらいいかな?】

アリスからのメールの内容は、彼女が今日学校で言われたことであった。空は、それを聞いて少し不安になり、アリスにメッセージを返すことにした。

【分かった】

スマホの上に机を置いて授業を聞く、授業料をどうにか払えるには焼きそばを抜いて道に生えてる山菜で節約するしかない、転売されてる野菜や米を買うしかないと伝えた。

もしそれでも足りない場合は、ホームレスになるか学校を辞めて自分でなんとかするしかない。



講師の授業を終えると事務所に戻り、学費のため、化物退治の仕事を手伝い始めた。

だが、その翌日、事態はさらに悪化する。アリスの学校が終わる時間なのに事務所に現れなかった。

空は、アリスに連絡を送ったが、メールの返事は帰ってこなかった。

空は慌てて自分の電話番号に電話をかけた。だが、電話口から聞こえてきたのは、音声ガイダンスだけであった。

通話が切れた後、空は不安になり奥の席で作業する上司のレナに聞いてみる。

「レナ、アリスを知らないか?」

レナも同じ考えで、何か事故と事件に巻き込まれたのかもしれないと言っていた。

でも、考えてばかりいても仕方がないのでその後、空とレナは会社を後にしてアリスを探すことになった。


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