10話 男性の不審な行動
――ノヴァシティ西区。高層ビルが立ち並ぶ、オフィス街の一角。上を見ると前後左右、広告板だらけ。赤信号の時が人混みが多く、四方八方から人の話し声や音楽、車の騒音が聞こえる。
歩行者も若者が多いが、成人した社会人も目立つ。中にはスーツ姿のサラリーマンもいて、駅に向かう交差点を渡ろうとしている姿がある。ファッションビルの中に入れば流行を知ることもできるし最新技術で作られた家電製品などを見ることも出来る。ゲームセンターやカラオケなどの娯楽施設も充実している。
空は仕事を終えて帰りにアリスと寄り道するのだが、常に電車やタクシーを利用する生活であるため、この街でお金を使う事はあまりない。
「空! 美味しそうなクレープ屋があるよ! 行ってみよう!」アリスはそう言いながら空の手を引っ張って、その店に向かって走り出す。空は彼女に引っ張られるままについていくことになった。店に着くと、メニュー表を見てから注文して、出来上がるまで店内で待つことになった。二人は席に座ると、他愛のない話をして待ち時間を潰すことにしたようだ。しかし、空の表情はどこか憂鬱そうに見えたのだった。
あのエリザベスを一人で世界を支配したら、どんな感じなんだろうか。おとぎ話と聞いていたが、もし一人で支配して楽園のような場所だったと思ったが、あの恐怖の笑顔的に、それは違ったようだ。だが、本当にたった一人で世界を支配できるのだろうか。そもそも、どうやったらそんなことができるのか? 何か手掛かりはないだろうか。空はそう思いながら考えていたら、突然目の前にクレープが出てきて、そのクレープを食べることにした。アリスが美味しそうに食べているので、空もつられて食べ始めた。
「美味し~い! フルーツマシマシで超最高だよ~!」アリスはそう叫びながら、食べ続ける。
「いや、マシマシはしてない」
空は冷静に突っ込みを入れた。アリスは楽しそうに笑って、また食べ始めるのだった。
その後、洋服を買ったりゲーセンで遊んだり、アリスが行きたがっていた本屋にも寄って、謎に男性同士と戯れるの本で興奮していたのだ。そして夕方になって帰る時間になった。
空はまた手を引っ張られながら帰路につくことになるのだが、その途中で空の顔が厳しいものに変わっていた。なぜかといえば、視線を感じたからだ。
何者かに見られているような気配を感じたのだ。空は周囲に注意を向けてみたが、特に怪しい人物はいないようだったので気のせいだと思ったようだ。
だが、人の叫び声が聞こえると目の前の横の路地裏から通り魔が現れて、女子高生の横腹に包丁を突き刺して逃走したのだ。
空は即座に動いた。アリスの手を引っ張ると、女子高生のところに駆け寄って、傷の具合を確かめる。しかし、ショック死で事切れていたようだ。
空は悔やんだ表情を浮かべつつ、すぐに警察に通報した。救急車も呼んでおいたが、間に合わないだろう。
もうちょっと早くあの犯罪者が通り魔だということに気付いていれば、もっと早く対処できたかもしれない。
だが、後悔してももう遅い。
とにかく今はアリスを守ることを優先しなければならないだろう。
空は気を引き締め直して、アリスとともに現場を離れたのだった。
「空。その人アヴァリスね」と、アリスが空を見て言う。
アリスはそう言うと、ポケットから自分のスマホを取り出して、写真を撮り始める。現場の証拠写真を撮っているようだ。空はそれを見て感心する。
こんな小さな子でもしっかりしてるんだなと思ったらしい。だが、アリスが急に女子高生に頭を撫で始めたのを見て、空は動揺した。
空は慌ててアリスを止めようとする。しかし、アリスは微笑みながら首を振った。
「ううん、違うの。絶対になおして見せるから、この人に勇気をあげたいだけ。私、治せるかもしれない」とアリスが話す。
「すまないが、人間を治すのは無理だ」と、空はアリスに話す。だが、彼女は首を振って、話を続けた。
「絶対に治せるよ。私は、治すことに自信があるから」と、アリスが答える。
「でたらめ言うな」と、空はアリスに話した。アリスが、違う!っと返されて、空はなぜと言って聞く。
無言になったアリスは、空を見つめた。すると、空は、そんな真剣な目をしたら説得されるだろうがと思いながら、アリスに諦めるように言う。
「そんな錬金術、俺でもできるわけない」と、空は話す。すると、アリスは、急に大きな声で言い返してきた。
「私を嘘つきだって思うの?私のことを信用してないの?」
空が否定しようとするが、その時にパトカーのサイレンが近づいてきた。状況がややこしくなりそうだったので、アリスを引き剥がし、一般人を装う。
警察官が到着すると調査を開始せず頭を掻いてすぐに去っていった。警察官が、本当に困ったなと愚痴を言いながら女子高生の遺体に身分証と財布を回収すると急に遺体を引きずってパトカーに乘せてるのが分かる。
一般人は考えが纏まらなかったせいか、平然と歩き、その場から離れていった。
「遺体を乗せるのおかしい!なんで証拠隠滅してるの!」と、アリスは急に叫び出した。
空は、独り言だろと思ったが、自分も叫んだから人のことを言えないと思った。でも確かに遺体を乗せるのおかしい。
「行くぞ、アリス。あのパトカーを追跡しろ」空は、アリスに指示して追跡し始める。
「こっち!」
アリスの得意技、千里眼を使って、パトカーが向かっている先を突き止める。空とアリスはパトカーを追い、その先には廃ビルがあった。
空はそこで何があるかを考える。嫌な予感しかしないが、警察官たちが何をしたのかを知りたいという思いでその建物の中に足を踏み入れることにした。
そこは何の意味もない廃墟だったと感じたのはすぐだった。これはなんだ?背筋が凍りそうな寒気と威圧感を感じる。
空の本能か、それとも別の何かが警告を出していた。空は、廃ビルの入口の玄関に入る。そこには、ロープで吊られた遺体が三つあった。それを見た空は絶句した。この光景は酷すぎると感じたからだ。
「どうしたの」
アリスが近付いて遺体を見ようしたので目隠しをする。空はあまりにもトラウマを植え付けるものだと思ったからだ。
手を離し、通り過ぎるとその奥の広い部屋に入る前に武器を取り出し、構えながら静かに入室する。そこでは、20代の若い男が、下を見ながらなにかゴソゴソとしていた。
男が見ているものを角度を変えて見ると女子高生の遺体を……、
「アリス見るな」
空はアリスの目を手で覆う。
男がこちらを振り返る。目の焦点が合っていない。頭の形が腫れてるように変形しているようにも見えた。
誰かが怪物に入れ替わったのか?
空は少し怖くなったが、この男は視界が悪そうな感じで通り過ぎていった。
そして、手の遠近で女子高生の身体を隠し、顔を調べる。
特徴としてはターゲットが女子高生、顔、髪はボブカットで青白く生きているような印象はない。目は閉じているが12歳程度の顔だろう。
「犯人がタイプなのはこの顔なのかな? それともこいつの体に惹かれたのか?」と考えるだけで少しゾッとした。
廃墟の外に出て今回の事件をメモ帳に記した。こういう仕事にも慣れてきたけど、後々の悲しい気持ちになることには慣れなかった。
アリスも隣で難しい顔をしていた。すると、アリスは急に気分が悪くなったようで地面に座り込んでしまった。空はアリスの背中をさすってあげながら話しかける。
「ちょっと休もうか」
こんな恐怖な場所でアリスをここに連れてくるべきじゃなかったなと後悔した。
しかし、単独行動は危険だし、何より新しい場所を探索したほうが依頼人の彼らも喜んでくれるだろうと思っての行動だったが失敗だったようだ。
こんな場所でいつ襲われるかわからない状況だから冷静に考えてやればよかった。
「ごめん」
空はそういうことしかできなかった。しばらくアリスの体調が落ち着いてきたら救急車に連絡して帰ってもらおうと思った。
まだ女子高生の脈や微かな声、呼吸が確認できるのでまだ助かる見込みはある。




