9話 エリザベス・シルフィー
そんな4人の反応を見た少女は微笑し、ゆっくりと口を開く。「Bonjour tout le monde comment allez-vous?(皆さんこんにちは。ご機嫌はいかがですか?)」
そして、彼女の発言を聞いた4人はさらに驚きの表情を見せる。というのも、その言葉がフランス語であり、少女の口から発せられたものとは思えないほど流暢な発音だったからである。しかし、その驚きも束の間でエリザベスが3回指を鳴らすと彼らは恐怖に染まった表情で悲鳴を上げた。
「皆笑顔で元気いっぱいですね。とても素敵です」
男は少女の言動に違和感を感じ、冷や汗をかきながら必死に言葉を発する。
「あ、あの、君は一体誰なんだ?」
それは彼の心の底から出てきた疑問だった。その言葉を聞いた少女は可愛らしく首を傾げてから口を開いた。「私? 私はこのおとぎ話の世界を支配する者です」
すると4人の顔色が一変した。その反応を見てエリザベスがくすくすと笑う中、男たちの一人が叫んだ。
「ふざけんじゃねえ!!てめえのようなガキに世界が支配できる訳ねえだろ!!」
その言葉を聞いた少女は、蔑むような視線を送りながら口を開く。
「あら、失礼ですね」
するとエリザベスの瞳が赤く光り輝き、次の瞬間には4人全員の首が吹き飛んでいた。地面に転がった彼らの頭を見て、少女は不満げな表情を見せた後、ため息混じりに呟いた。警戒してた別の少女は鞘ごと持って、裏口に帰った所を空は目撃した。戦わずして逃げたのかと不思議に思った。
残りの組織の人間を一人ずつ指差して選んでた。
「どれにしようかな~? よし決めた!君にしよ~」
そして指を鳴らし、瞬間的にその男の前に移動すると、人差し指を鼻先に突きつけた。
男は悲鳴を上げて逃げようとしたが、時すでに遅しで銃剣が男を串刺しにした。結局、少女が遊び始めたのは僅か6人だけだ。そう、5人は既に死んでいるのだ。
空は尊殿を護衛するため、銃をエリザベスに向けながら裏口に逃げるように伝える。
尊殿を裏口に誘導したあと、空は銃を取り出しエリザベスと向き合った。
そして、空はエリザベスとの攻防を繰り広げた。空は銃弾を何発も撃ち込むが、エリザベスは全て剣で弾き返した。そして銃弾を弾き飛ばすと、右足から回し蹴りで顔面を狙ってきた。空は咄嵯に腕で防ぐと剣を生成しそれを使って何度も斬りつけるが、それを全て受け流された上に腹を蹴られて勢いよく飛んで行った。そこで空は初めて、エリザベスとの能力の違いに気付いた。空は立ち上がると拳銃を構え直した。すると再び踏み込まれ、剣で首を狙ってきたが、間一髪の所で躱すことができた。空は後退しながら銃弾を何発も撃ち込むが、彼女はものともせずに2丁発砲していた。2丁拳銃の扱いは非常に早く、目で追うことができなかった。なんとか躱したかに見えた空だったが、銃剣が左肩に突き刺さった。
「ぐぁっ!」
空は叫びながら至近距離で銃を撃つが、エリザベスは次々と銃弾を躱していった。距離を取ると彼女は標準を定めずに発砲すると左手を負傷した。空も反撃を試みるが、エリザベスは銃を回しながら右手と左手を交互に発砲し続き、空を圧倒した。
しかし空も負けじと応戦するが、エリザベスの早撃ちには敵わなかった。空は腹を撃たれるとそのまま倒れ込んだ。倒れながら反撃しようとしたが、視界的に無理だと判断したのか攻撃を止めた。
そして再び立とうとしたが足に力が入らず立てなかった。エリザベスはそんな空の左脇腹に銃口を突きつけると、その様子を近くで見ていた黒マスクがエリザベスに声をかけた。
「殺しはするなよ」
黒マスクが言うと、エリザベスは「Okay」と抑揚なネイティブの英語で返事をした。「あ、神薙空って呼んだっけ? 顔は覚えとくよ。君と遭遇したら、殺すから」蠹毒は笑いながらそう言うと、エリザベスと一緒に建物の奥へと消えていった。
空は、撃たれた脇腹を押さえながら立ち上がると後ろからレナとアリスの声と共に、息を切らしながら壁の側に背中をもたれかかった。そして2人は空を見上げると、空は血がにじみ出たシャツを見て、何か言いたそうにした。
「大丈夫!? すぐ応急手当しないと」
アリスはそう言うと、鞄の中からハンカチと水の入ったペットボトルを出した。
「止血しないといけませんね。ちょっとじっとしててください」空は応急手当されている間、2人を見ていた。アリスの真剣な眼差しを見て、思わず目をそらした。
「あの二人何者なんですか? 何処から来たのでしょうか?」
レナは眉をしかめながら空に聞くと、空は息を呑み、覚悟を決めたように口を開けた。「奴等はこの世界を壊そうと企む組織の一員だ。さっき襲ってきた奴の名は黒マスク野郎とエリザベス。奴は、俺と組織を殺すためにこの世界に来たらしい」空はそう言うと、2人は驚いて声を上げた。「どうして私達も?」どうやらレナは心当たりがないようだった。すると空は眉を寄せて、口を開いた。「――尊殿を暗殺。それか人質にして、組織を壊滅させようと企んでいる」そう言うと2人の表情は険しくなった。突然の事態に呆然としながら、空の話に耳を傾けていた。「その話が本当だとするならば、この二人のアビリティーインデックスはどちらも1位クラス。かなり手強い相手です」
「強いだけじゃない。あいつらのエレメントホルダーはどれも規格外だ。そして、俺は今まで奴等と戦ったことがあるが、一度も彼奴等に勝ったことがない」空の言葉に二人は驚きの声を上げた。すると空はレナの方に視線を向けると、口を開いた。「だからお願いがあるんだが、いいかな?」空は真剣な表情で言うと、レナは警戒しながら聞き返すと、空は小さく息を吐き、 すると、空は体を僅かに震わせながら、両手で自分の肩を抱き、心細そうにする。
「あの二人を国家テロ組織と認め、武力行使も厭わないと公表してほしい。そうすれば、神薙機関は優位に立ち回れる筈だ」空はそう言うと、レナは困った表情を浮かべた。「しかし、それは国際問題になりますよ?」すると空は苦笑いしながら口を開いた。
「仕方ないだろ? 今の俺たちじゃ奴等には勝てないんだ」
その言葉にレナは黙り込んだ。少しの間が空くと、しばらくしてレナは真剣な表情で答えた。
「あの人達との戦闘がこれほど困難とは、私達も考えを修正しなければなりませんね」
レナはそう答えると、空は頷いて口を開く。
「そうだな。だが、俺達には時間が無い。その間にも奴等は何もしてこないという保証も無いんだ」
空はそう言うと、レナは頷く。すると、レナは何かを思いついたのか、口を開いた。
「分かりました。あなたがそう望むのなら、その様に公表します」
彼女はそう言って話を終えると、沈黙が訪れた。暫くしてから空は口を開くと、いつもの真面目な口調に戻る。
「分かった。それじゃあ、頼んだ」
そしてそう言うと、彼女と別れて事務所に帰ることにした。




