〔第1章〕 bouton 1 :それでも蝶は舞う
今思えば、彼女に声をかけたのは、僕のきまぐれだったんだ。
彼女は知らないだろうけど、僕は彼女が思っているほど純情な人間じゃない。
でも、今はこんなにも彼女に執着している。
きまぐれだった。本当に僕の勝手だった。
最初は、全部遊びだったんだ。
僕は才能のある人しか選ばない。
それに、もうその才能が花開いている人にしか、僕は全くもって興味がない。
そうじゃないと、僕が育てなきゃならないし。
面倒なことが僕は1番嫌いだ。
だから、彼女のことはどうでもよかった。
彼女が僕の身勝手な都合でどうなろうと、僕には関係ない。
はずだった。
けど、彼女のまっすぐな心だとか、絶対に揺るがない夢だとか、憧れだとか。
夢物語だと思っていたことも、彼女なら叶えられるんじゃないかってどこかで期待してる自分がいる。
今更、責任をとろうなんて思ってないし、そもそもそんな柄じゃないし。
僕は僕で、彼女は彼女だ。
でも、彼女は僕の後ろをついてくる。
1ミリも疑うことなく、僕を信じきっている。
そんな彼女に応えてあげたいと思うのは、僕が偽善者だからなのか?
それが僕のやらなきゃならないことだからなのか?
けれど、僕がアシストしなくったって、彼女はいつかこの世界に入ってきただろう。
彼女はもともと、この世界の住人だ。
僕以外の誰かが、彼女をプロデュースして、彼女を引っ張っていく。
そして、僕のことなんか頼らないまま、その頂点に君臨するのだろう。
それを、僕がやるのか、別の人間がやるのか、それだけの違いだ。
最近、時々そんなことを考えるけれど、そうやって悩んでも、現実は何も変わらなくて。
むしろ、僕が彼女に深く関わっていることを、再確認するだけで。
彼女に惹かれている自分をなんとか誤魔化そうとして、彼女に根拠のない嘘をついて、訳のわからない罪悪感に苛まれる日々。
なのに、無情にも、僕の頭には毎日のように彼女がいる。
彼女のことを想って詞を書くと、いつも「いい歌だね」って言われる。
彼女にこれっぽちも悪いなんて思ってないのに、罪滅ぼしをするかのように、歌をつくる。
そうして、僕は今日も生きていく。
長い長い前置きですいません。
書いておいたほうが、これから便利かと。
あらすじも簡潔すぎて、わかりづらいですが。。。
あまり書きすぎるとネタばれしそうなので。
まぁ、気ままに読んでください~。