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第52話 シアと看病 その三

 


 

 渋々引き受けることにすると、シアは嬉しそうに返事をして脱いだパジャマを胸に抱いて、もそもそと動いて背中を俺の方に向ける。


 こうなったらもう無心だ。看病するって決めたのは俺だし、サッと拭いて早く立ち去ろう。


 水にタオルを浸してギュッと絞る。


 意を決して顔を上げれば、細いうなじに、普段は服に隠れているシミ一つない真っ白な背中と、キュッとくびれた腰から尾てい骨までが露わになっていた。


 思わず、息を飲むほど綺麗だと思った。画家がみたら絵に残したいと思うんじゃないだろうか。


「天斗? もういいですよ?」


「あ、あぁ‥‥‥今やるよ」


 触ったら壊れてしまいそうで躊躇しそうになるけれど、ゆっくりとシアのうなじに濡れたタオルを当てる。


 シアの身体がびくりと跳ねた。


「——ひゃんっ」


「お、おい! 変な声出すなよ!」


「ひんやりくすぐったくてびっくりしちゃったんですよ! ——んんっ!」


 うなじから背中にかけて、優しく撫でるように拭いていく。


 時折、身体がびくびくと跳ねたり、甘い吐息のようなくぐもった艶声が漏れてくるけど、無視だ無視!


 これは看病で決していかがわしい事じゃないんだから、毅然とした態度で当たり前のように振舞うんだ!


 背中から腰まで移動してきて、一度濡らし直してから同じように丁寧に拭いていく。


「——っん~~っ!」


「ほい、背中終了と。次は腕な、ちゃんと前押さえて置けよ」


「わかりました! ちょっと気持ちよくなってきました」


「汗かいてたんだろ」


 くすぐったさに慣れてきたのか、腕を拭いている間は妙な反応をすることはなかった。脇腹に差し掛かった時はまたぴくぴくしてたけど、俺のシアの肌色に耐性がついてきたのか特に動揺もしなくなってきた。


 右腕から、今度は左腕に移ってブランとしてる腕を支えながら拭く。


「天斗、結構手馴れてる感じですね‥‥‥も、もしかして私以外にもこんな風にお世話してたんですか!?」


「まぁ、そうだな」


「ええっ!? こ、こんな裸でベタベタ触れ合うんですよ!? けしからんです!!」


「お前が言うなよ‥‥‥」


「それで誰の身体をまさぐったんですか!? も、もしかして千結ですか!?」


「言い方っ! その言い方だと変なニュアンスにしか聞こえないだろ! あと、夢原じゃないぞ」


 夢原とは、風邪とか引いたときとかにお見舞いくらいは行くけど、流石にこんな付きっ切りで看病はしない。


「なんだ‥‥‥え、それじゃあその人は誰ですか!? まさか、まだ見ぬ敵‥‥‥」


「何考えてんのか知らんけど、妹だよ妹。実家にいた時に面倒見てたの」


「あ、そういうことですか! そういえば天斗にもご兄弟がいたんでしたね」


「シアにもねーちゃんがいるんだっけ? こんな風に面倒見てもらってたろ」


「‥‥‥いえ、私の姉は厳しい人でしたから」


 あんまり仲が良いとは言えなかったんだろうか? 顔が見えないからどんな表情をしているかわからないけど、シアの雰囲気は少しだけ寂しそうに見えた。


「‥‥‥」


 なんて言おうか悩んで、結局何も言わないことにした。


 向こうの世界のことは暗黙の了解というか、なんというかあまり話題にださないようにしているから、シアが話してくれたら聞けばいい。


「ほい、腕も終わりっと」


 そうこうしている間に両腕も拭き終わった。


 俺は身体のこわばりをほぐすように息を吐く。


 慣れてきたとは言っても、やっぱり異性がほぼ裸でいて、しかもタオルごしとはいえ触るのは緊張せざる得ない。


 それに妹の世話をしていたって言っても、それは小中学の時の話で、同年代のしっかりと凹凸のある身体をしたシアとは差がありすぎる。


 我ながらなかなか頑張ったんじゃないだろうか? 金髪美少女の身体ふきふき看病なんて、これが俺以外の盛った男子ならすぐさま邪な欲望をさらけ出してシアに吹き飛ばされていたに違いない。


 ‥‥‥いや、魔法の制御ができないって言ってたし、吹き飛ばされるだけで済めば御の字だな。


 とにかくエロ同人でもよくありそうな、こんなえちえちフラグシチュエーションを耐えきった俺を、俺はよく褒めてあげたい。


「それじゃあ次は前の方をお願いしますね!」


「‥‥‥えっ」



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