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第13話 シアと嫉妬

 


 ◇◇シアside◇◇



「ふんふんふんっ♪ ——はっ!?」


 今日の晩御飯を作っていると、私の天斗大好きセンサーがビビッと来ました。そう——。


「——これは、天斗が他の女といますね。‥‥‥ふむ」


 私は顎に手をあてて考えます。


 これまでも何度かこのセンサーに反応があったことがあります。天斗の身に何かあった時や、天斗が私のことを強く思ってくれた時、そして‥‥‥天斗が私以外の異性とお近づきになった時。


 これは魔法や呪いの類ではありませんし、特に私が何かをしてるわけではないですがなんとなくわかるのです。敢えて理由を述べるのなら、そうですね‥‥‥愛、でしょうか? えへ♪


 そして、このセンサーが反応するときはだいたい天斗に女が近づいた時ですが、まぁ外に出るのなら人間の女の一人や二人、関わり合いになるものでしょう。


 私は良識のある吸血鬼ですから、二メートル以内に異性を近づけたら殺す! みたいなことは言いません。センサーが反応してもなんとなくわかるくらいなので、天斗と深い関係ではないことは分かりますし。


 しかし、今回は違います。明らかに私のシナプスが弾けました。


 これはもう、はっきりと天斗と深い関わりがある女だということがビンビンと伝わってくるのです。


「‥‥‥もしかして、恋人とか? ‥‥‥うぅ」


 自分で言って自分で凹みます。


 でも、でもっ‥‥‥もしもそうだったら‥‥‥?


 別にうぬぼれているわけではありませんが、これでも私は自分の容姿に結構自信を持っています。少なくとも今まで会った人間の中で負けたと思う人間はいません。


 そんな私が割と本気で毎晩迫ってるのに、天斗とはいっこうにそういう雰囲気にならないのです。どうしてなのか理由が不明でしたが、天斗に恋人がいたのなら納得できてしまいます。


「そんな‥‥‥」


 これまで天斗から恋人がいることなど聞いたことはありませんが、もしいたとしても不思議ではありません。


 なにせ天斗は凄くかっこいいですし、優しいですし、一緒にいるとぽわぽわと温かい気持ちになります。そんな天斗に人間のメスがキュンキュンしてしまうのは道理でしょう。


「くっ、迂闊だった‥‥‥こうなったらどのような手を使ってでも正妻の座だけは奪わなければ‥‥‥」


 ——ピロロロロ! ——ピロロロロ!


「——っ!?」


 その時、突如リビングで警報のような音が鳴り響きました。


 まさか、敵襲‥‥‥?


 警戒しながら音の発信源に行くと、そこには数字の書かれたボタンがいくつかある四角い機械。


「電話、というものでしたっけ?」


 天斗からは遠くの人物と話し合う道具だと聞いています。確か、使い方は‥‥‥。


「受話器? を取って、耳に当てて‥‥‥もしもし? 月城ですっ♪」


 なんだか天斗の家名を私が言うのは照れ臭いですね。まるで結婚したみたいですし。


『‥‥‥なんですっごい嬉しそうなのかわからないけど、もしもし?』


「——っ!? この声は、天斗!」


 耳元から聞こえてきたのは、寸前まで考えていた天斗でした。


『そうだけど、よくわかったな』


「それはもう! 私は天斗の声ならどんな騒音の中でも聞き分けられます!」


『そ、そうなんだ、スゴイネ』


「はい! ところで、どうしたんですか? 今、人間の女と一緒にいるようですけど」


『‥‥‥何で知ってるのかわからいけど、まぁいいや。知ってるなら早いし。これからそいつと飲みに行ってくるから悪いけど今日の晩御飯はいらないってことを伝えようと思って。もし作ってたら明日食べるから保存しておいて』


「えっ‥‥‥あ、はい」


『うん? おい、こっち見てニヤニヤするな! ‥‥‥それじゃあ、なるべく早く帰るから大人しくしていろよ』


「‥‥‥あ、あの‥‥‥その方とはどのようなご関係——」


 ——プツッ‥‥‥プープープー。


 聞き終わる前に無慈悲にも響き渡る電子音。


 そんな中、私の頭の中では天斗の言葉がグルグルと渦巻いていました。


 これは、もう‥‥‥うぅ‥‥‥。


 天斗には秘密ですが、見た目は天斗より少し年下に見えるくらいですけど私だってそれなりに長く生きている吸血鬼です。私自身に経験はありませんが、男女のそういうことくらいは知ってます。


 そして、天斗は飲みに行くと言っていました。男女で飲みに行くなんて、もうそういうことでしょう。お酒に酔った男と女のすることなんて一つしかありません。


 これは、相当まずいのでは‥‥‥?


 先ほど何としてでも正妻の座を! と、言いましたが、私は未だに天斗からの寵愛を受けてません。


 それに対し、今天斗と一緒にいる女は‥‥‥。


「ぐぬぬ‥‥‥負けられません!」


 こうなったら、今すぐにでも天斗の下へ向かいましょう!


 そうしてどちらが正妻の座に相応しいかを思い知らせるのです!


 酔った天斗なら、あわよくばその後があるかもしれませんし♡


「よし! そうと決まればさっそく行きましょう!」


 私は戸締りをしっかりと確認してリビングに出ます。


 空は既に陽は落ちて、夜のとばりが降りています。これなら直接飛んで行っても目立たないでしょう。


「天斗の居場所は‥‥‥向こうですね!」


 神経を研ぎ澄ませれば、天斗の居場所はなんとなくわかります。細かい場所は分かりませんが、近づけば後は匂いで特定できるでしょう。


「翼を出すのは久しぶりですね」


 今着ている服は天斗と買いに行ったものなので翼を出せば破けてしまいますが、形状変化の魔法をかけて身体の形状に合わせて変化できるようにすれば問題ないです。


 少し背中に力を込めると、バサリと羽音を響かせて私の翼が顕現します。


「今行きますね、天斗! そして覚悟してください、泥棒猫! 正妻の座は絶対に譲りませんよっ!」


 そうして私は天斗の下へ飛び立ちました。



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