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第45話:魔女の最期

「ア……ア……」



魔女は無くした両手をクライブへと向ける。

そして枯れ枝のような脚で1歩目を踏み出すが、生技が折れるような音を立てて魔女の両足は膝の辺りから反対の方へと折りたたむようにへし曲がる。そして、魔女はうつ伏せの体勢で地面へと転がる。だが、魔女の動きは止まらない。折れた脚を引きずりながら、這いつくばってクライブへとにじり寄る。



「ひぇ……」



クライブは思わず飛び退く。魔女はゆっくりとではあるが、眼球のない眼孔から血の涙を流しながら近づいてくる。その背にハコミは最後の酒入り水筒の中身をぶち撒ける。そして口から灼熱の吐息を吐き出すと、強いアルコールまみれの魔女の体は火炎に包まれていく。



「……ようやく魔女、いやこの(ひと)も眠れたんだな」



「ハコミ、どういうこと?」




「いや、伝承通りにこの人が魔女ならさ、ずっと人を恨んでこの状態だったわけじゃない? やったことに対して"ざまぁみろ"、なんて思わないしね」



 燃え盛る魔女の死体を見つめながら、ポツリとハコミは呟く。パチパチと枯れ木を燃やす音が鳴り響いたかと思うと、手のひらほどの真っ赤な宝石が燃えた魔女の死体から飛び出してくる。ハコミは地面に落ちたそれを手に取ると、クライブへと手渡す。その宝石は以前、ゴブリンの死体が持っていた"賢者の石"と呼んでいたものとそっくりであった。クライブもそのことを理解すると、胸から真っ赤な宝石のついたネックレスを取り出す。




「……これって」




 クライブがネックレスを近づけると、手に持った赤い宝石は不定形のスライムのようになる。そして、意思があるかのようにクライブの手に持つネックレスの宝石へと吸い込まれ、一体化する。




「前と一緒、だね。ハコミ、君はこれをどう思う?」



「さあ? 想像もつかないよ。少なくとも俺が知ってる神話伝承にはこんな性質なんてないし」



 ハコミはふと、部屋内の柱へと視線を向ける。その柱には以前、アグナの角で見た、『小さい子が描くような形の雲とその中に8つの丸』の紋様があった。『またこの紋様?』、なにかしら関連がありそうであったが、今はまだ似ている紋様が2つの遺跡迷宮(ダンジョン)にあったことしかわからなかった。



「……ハコミ。魔女も倒したし、街に戻らない?」



「……そう、だね。そうするか」




 2人は燃え尽きた魔女の死体を見届けると、地上へ戻るために元来た道を引き返す。罠は出来るだけ避け、安全な部屋や道には目印を書いた。罠を毎回確認した来たときよりも、そのまま帰るだけのほうが易しい。()()()()()()()()()()()()



 ガチンッ。

行きで罠がないかを確認し、安全な部屋を2人が通り抜けようとしたとき、どこからか金属音が辺りへと響いた。そして同時に四方の出入り口は金属格子が降りてくる。



「あ?」



「は、ハコミ! 天井、天井が落ちてきてる!」



 クライブは天井を指差し、ハコミも天井を見やる。

真っ平らで分厚い天井がゆっくりと落ちてきていた。ハコミは眉をひそめながら考える。



(おかしい、罠を踏んだ様子はないぞ? 入ってすぐアウトならなぜ魔女のところに来たときに反応しなかった?)




「さあて、死にたくなければ"賢者の石"を渡してもらおうか?」



 突然、格子の向こう側から声をかけられる。そこには漆黒のスーツを着た高い身長の痩せぎすの男と、胸を肌けさせた青髪の女が立っていたのだった。



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