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第18話:聖地の罠

「はぁ〜。にしてもウエディングドレスって動きにくいなぁ」



 ハコミはドレスの裾を持って辺りを探索する。

オオアマナに似た花の一輪を手に持ち、小さな広場ぐらいしかない広さの"聖域"を探索する。見た目は荘厳な気配を感じるものの、あくまでそこはただの花園。端から端まで歩いても、大人なら跨いで渡れるほどの綺麗な小川が数本流れているだけで特にこれというものもなかった。



「…生贄が風習化してたなら、なにかしら痕跡とかあるかと思ったんだけどな」



 ハコミは木樽によじ登り、そこで腰を下ろして1人呟く。そよ風が花を揺らし、花びらが舞う様はここが『生贄を置いていた"忌地"』だとは到底思えなかった。たいてい、生贄を捧げる場所にはそれなりの痕跡や貢物の残りなどが時間が経過しているとてあるはずであった。




「…まあ、俺のことを騙したって意味はないし。土地神なんかへの"生贄"伝承を直接検証できる良い機会かも、って思ったんだけどなぁ。 …あっ」



 突然、ハコミを突風を襲う。白い花びらが風に舞い、小川は白波立つ。ハコミの頭のヴェールがその突風で飛ばされて、咄嗟に掴もうとしたが僅かに届かない。ヴェールは少しばかり宙を舞った後、ふんわりと花の上へと落ちる。



「あっぶな。もうちょっとで川に落ちるとこだった」



 ハコミは勢いよく木樽から降りると、慌ててヴェールを取りにいく。そして花の上に落ちたヴェールを手に取ってまた木樽のところに戻ろうとしたとき、足が非常に重くなっていることに気がついた。ハコミが足元を見やるとタールのように粘着質のようなものにいつの間にか変化していた。そしてハコミ自身の体重で足が地面の中へと埋まっていく。




「うわっ、うわっ。底無し沼みたいになってる!?」




 ハコミはそこから脱出しようと足掻くが、それによってさらに沈んでいく。ふと、木樽のほうを見やると木樽もまた半分程沈んでいくのが見える。つまり、それは離れた場所にある木樽の辺りまで同様の地面へと変わっているということを示していた。



「うっ、ぐっ」



 そして脚は完全に沈み、次には腰が、遂には首元まで埋まる。ハコミはこの場から脱出するのを諦めると、思い切り息を吸い込んで地面の中へと自ら沈んでいくのだった。


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