4話.秘密の夜明け
―――次の日…
夜明け前は、人があまり外にいないから見つかりにくい。
俺は、その時間帯を目処にして準備をした。
「雲杏、お前は風愛朱を連れて、早く家を出ろっ。」
「うん!りょーかいっ!!」
俺は家族あてに置手紙を書いた。
[父さん、母さんへ
俺と雲杏はしばらく旅に出ます。
何も言わず出て行ってごめん。
でも、絶対に帰ってくるからな。
飛翔より]
こう書いた置手紙をテーブルの上にそっと置いた。
「ごめん…母さん。」
俺は気付かれないように静かに家を出た。
「ツバサー!早くっ!」
「あわっ、そんな大きな声出しちゃだめっ!」
「あっ、ご、ごめん…。」
(相変わらずだな…エアリスは。)
俺は、雲杏とエアリスが待っている場所まで走った。
「じゃ、行こっかっ!」
「そうだねっ!」
エアリスは、お母さんと会えるのがとても嬉しいらしく、ハイテンションだった。
「んじゃ…まず、この村から出ないとな。」
「あっ、待って!私ね…ちょっと寄りたいところがあるん…だけど…。」
「うん!いいよっ!そこに寄ってから行こうっ!」
「ありがと、クラン!ツバサも…いい?」
「俺は別にいいぜ。」
「ありがとっ!クランたちも行こうっ!」
「うん!」
「で…その行きたいところって何処なんだ?」
「えっと…もうちょっと!」
エアリスはそう言いいながら、昨日までとはまるで別人のように颯爽と駆けていった。
昨日の今日でここまで走れるとは思っていなかった。
「エアリスちゃーん!待ってぇー!」
「雲杏、エアリスさ…昨日あんなに走れたか?」
「ううんっ!昨日は全然、走るどころか歩くのも一苦労だったぐらいだったよっ!」
俺の見間違いではないらしい。
「だよな…。」
俺たちは考えながら野原を走り下っていった。
やっと、エアリスに着いたとき…目の前には湖があった。
(エアリス…この湖で何かするのか…?)
「ツバサ、クラン…お母さん、私に会ったら喜ぶかな…?」
エアリスは、さっきまでとは別人みたいになっていた。
「エアリス…ちゃん…?」
「エアリス…。」
「私ね、封印されてから会ってなかったから…お母さんの顔、あんまり覚えてないの。」
「そう…だよな…。」
「だから、お母さん…私のことも覚えてないかも…。」
「それはないって…!」
「でも、100%ではないから…絶対に覚えてるってことはないと思う…私でも。」
言葉をなくした…。
俺は、エアリスがこんなことを思っているなんか、思ってなかったから。
「だからね…私、お母さんに会うの…怖いんだ。」
「大丈夫だよっ!エアリスちゃんがお母さんを想っているなら、きっとお母さんもエアリスちゃんのこと、想ってくれてるよっ!」
涙目のエアリスに、雲杏は力強く言った。
「うん…そうだよね…。私、お母さんを信じる。」
俺は、落ちていたペットボトルに湖の水を入れた。
「エアリス…これ持って行こう…!」
そして、それをエアリスに渡した。
「え…これ…。」
「うん、ここの水。思い出してくれることもあるかと思って。」
「そうだねっ。ありがと!!」
エアリスは涙を堪えながら、精一杯笑った。
俺は、その笑顔が忘れられなかった。
「じゃ、しゅっぱーつっ!」
「おーっ!」
エアリスは、柔らかな笑顔に戻っていた。
無事、出発した3人。
これからどうなっていくのか?!