2話.人魚の秘密
なないろの人魚に出会ったツバサ。なないろ人魚の秘密が解き明かされる――
『じゃ…私のこと、もっと教えてあげるね。』
その言葉に俺は一瞬ドキッとした。
『私ね、人間と人魚の…ハーフなんだ。』
「へぇ…すごいな。」
『生まれたときは普通の…人間だったから、普通に歩いてたの。』
「で、それから人魚に変わったのか?」
『うん。人魚になってからは、ずっと昔からこの湖にいたの…お母さんと一緒に。』
「お母さんも…一緒…だったんだね。」
『でも…誰かが…お母さんをどこかに…連れて行かれちゃったの…!」
「………」
『それで、分からないけど…私は‥封印されてたみたい。』
「で…、さっきの地震で封印が解かれたの?」
『そうみたい…ごめんね。』
俺は話す言葉がなくなった。
『えっと…言い忘れてたんだけどね…、私…あまり、人間に見られちゃ駄目って掟なの。』
「そうなんだっ。」
『でね…私、人間になりたいの!』
「えっ?!なれる…の?」
『うん…こうすれば…。』
風愛朱は俺の唇に自分の唇を重ねてきた。
彼女の唇はとても冷たかった。
「え…?」
キラリーン――…
エアリスは黄金に輝き、宙に浮いた。
「エアリスー!!」
その光は地上に降りてきた。
「会いたかったよ、ツバサ。」
「エアリスっ!大丈夫だったんだね。」
「えっと、さっきのは、人間になるためのね…儀式みたいなものなんだよ。」
「そうなんだっ!っていうか…その…キ…キス…//」
俺は、顔を赤くして言った。
「えへへっ。あれ、私のファーストキスだったんだよ。」
エアリスも顔を赤くして、照れを隠しながら言った。
「…俺も。」
「じゃ、一緒だね。」
「んで…えっと、これからどうするの?」
俺は迷いながら言った。
「うーん、どうしようかな…。」
「とりあえずさ…俺んち…来るか?」
「うんっ!行く!」
エアリスは初めてのように喜んだ。
(あ…皆兎を忘れてた。)
皆兎は後ろで、寝ていた。
「皆兎も行くぞ!」
「お、おう!…あれ?その子は…?」
「え…ええっと…。」
「わ、私も、さっきの光で駆けつけてきたんだよっ。」
「そうなんだっ。俺らと一緒だな。」
「う…うんっ。」
「じゃ、俺は帰るな。何もなかったみたいだし。」
「そっ、そうか。じゃなっ。」
(ふう…なんとか気付かれなかったみたいだな。)
「んじゃ、俺らも帰ろうか。」
俺が先に歩いて俺んちへと行こうとした瞬間――
どてっ!!
「きゃうっ!」
振り返ってみると、後ろではエアリスが転んでいた。
「エアリスっ?大丈夫かっ??」
「いたたたた…久しぶりに歩いたから、感覚が戻らなかったみたい。」
「んじゃ、負ぶってくよ。」
「ううん。いいよっ。私、ちゃんと歩けるようにならなきゃ駄目だから。」
その後も、エアリスは転んでは立ち、転んでは立ちながら、必死に歩いた。
(俺も、最初はこんな感じだったのかな。)
無事、家に着いたときには、エアリスの着ていた真っ白なワンピースは泥だらけになっていた。
人間になった、エアリス。これからどうなっていくのか――…