1話.人魚との出会い
俺が住んでいる村の奥には森がある。
その森の奥には、神秘的な湖があるらしい。
俺のおばあちゃんのいいつたえによると‥その湖には七色の人魚がいるらしい。
夏―――
「おーい!雲杏ー!早く帰るぞ!」
「待ってーっ!お兄ちゃん早いよう。」
そう言いながら、森から帰ってきたのは佐橋兄妹。
いつもはしゃぎっぱなしの、妹の雲杏と、
雲杏にいつも無理やり連れて行かされる、兄の飛翔。
家に帰ってきた俺たちは、4つ切りにしてあったすいかを頬張った。
今はもうすでに夕方というより、夜。
今から出かけるには遅いという時間に事件は起こった。
ガタガタガタ…!!
「きゃっ、何…?!地震っ?」
「雲杏!ほら、こっち!テーブルの下に隠れないと‥!」
数秒後…地震の揺れはおさまった。
俺と雲杏はテーブルから出た。
ガチャン…!
扉が豪快に開く音がした。
「佐橋ぃー!佐橋っ!!」
「なんだよ…こんな地震の中…。もしかして…お前が暴れたのか?!」
「ちげーよ。つか、それどころじゃねーんだ!」
「あら、皆兎くん。どうしたの?」
「こんばんはっ。」
「で、なんだよ。」
「あっ、あの森の奥の湖…、なんか分かんねえけど、光ってんだ!」
「はぁ?んなわけねーだろ。」
「本当だって!お前も見に行こーぜ!」
「待って!雲杏も行くの!」
「雲杏は、家で待っとけ!」
「えぇー…。んー、んじゃ、待っとく。」
「んじゃ、行ってくっから!」
俺と皆兎は外に出て森の方へと向かった。
「佐橋、あれだよ、あれ。」
皆兎が指したところには確かに光を放っている湖があった。
「おい…皆兎。本当だったんだな…。」
「お前、嘘だと思ってたのかよっ?!」
俺は、返事も返さず、ただただ光に見とれていた。
「どうやら、さっきの地震は、あの湖の所為らしいぜ。」
「俺ら以外に気付いた人はいねぇの?」
「そうみたいだな。俺らだけだっ。」
辺りを見渡しても俺ら以外は誰もいなかった。
俺は、光り輝く湖にそっと手をつけた。
すると、湖につけた手は誰かに繋がれた。
「えっ?!」
『ツ……ツバ…サ…』
「おっ、俺の名前‥?」
『私…は、風愛朱。この湖の…人魚…なんだぁ。』
「風愛朱…さん?人魚…?」
『そう…私は、この湖に…昔からいるの。』
「ってことは…君がなないろの人魚なのか?」
『うん‥私がなないろの人魚。ツバサは…知ってたんだね。』
「昔、おばあちゃんから聞いたんだ。」
『じゃ…私のこと、もっと教えてあげるね。』
風愛朱が知っていた、なないろの人魚の秘密とは…?!