表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

便器の蓋だったけど転生してドラゴン人になったな

 閉じて開いて、開いて閉じて。

 あと何年、それを繰り返すのだろう。

 近頃、そんなことばかり考えている。


 ……なんて無意味な一生!


 人間のように、些細なことで心揺らせたのなら! せめて陶器のような心があったのなら!


 でも私はそうではないから、諦めの安寧に身を浸し、排泄物を浸して、朽ちて無くなるその日を待つ。


 だが、そんな生活は、突然終わりを告げた。

 唸る重機が私という存在をバラバラにしたのだ!



 


 「起きなさい、ベストロレーヤ」

 甘く優しい女の声が、私を眠りから目覚めさせた。

 「ベストロレーヤ、あなたはじきにこの巣から出て、人の街へ行かなければなりません」

「かあ、さま、どうして、私が」

 その途切れ途切れの拙い声が、自分のものであることに驚く。

 「それはもう決まってしまったことなのです。あなたはドラゴンではなく人として、何かを成さねばなりません」

 人、ドラゴン……、私はかつてのそれと、かけ離れた存在になったのだ。

 「わかり、ました。私は私の成すべきことを成します」

 言って、私は巣の縁を乗り越えて、空に身を躍らせた。

 感じたことのない新しい感触が、全身を駆け巡った。


 風だ、この世界には風があるのだ。


 この密かな旅立ちから3年後、世界中のトイレというトイレに蓋が設けられることになる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ