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桜の季節  作者: 昴流
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第1話

この世には、様々な生物が存在する。


人間、動物、植物、神々や妖精等も。


このお話しは、桜の木が起こした……。


いえ、願った奇跡のお話しです。



某年、4月19日


蓮山小学校2年2組の教室に終業のチャイムが鳴り響く。


「はい、今日の事業はここまで。日直!」


「起立、礼。」


若い教師らしき人物が授業の終わりを告げ、教室を後にする。


すると教室は急に賑やかになり、様々な話し声が飛び交う。


しかし、楽しげな雰囲気を1人の少年の声が一蹴する。


「嘘じゃない!嘘じゃないよ!」


そう大きな声を上げたのは1人の少年。その声に周りは静まりかえっている。少年の前に座るクラスメイトが教室の雰囲気に戸惑いながらも口火をきった。


「嘘だ、お前のじいちゃんこの間みたけど、ヨボヨボで全然強そうじゃなかったぞ?」


「本当にじいちゃんは強かったんだって、今でも強いんだ!」


誰が強いの弱いの、如何にも小学生らしい言い合いだ。


なんだそんな事かと言わんばかりに、静まり返っていた教室は再び賑やかになり、会話を続ける者、帰路につくもの様々である。


少年とクラスメイトの言い合いはまだ続いていた、何度か言い合った末に、少年は泣きながら教室を飛び出して行った。


少年の名前は谷山一雄。彼は学校から歩いて15分程のマンションに両親と3人で暮らしている。しかし、いま少年が歩いている道はマンションとは逆方向である。


彼が向かう先は、先程言い合いに出てきたおじいちゃんの住む家である、この辺りでは珍しく中庭に大きな桜の木がある立派な家が見えてきた。


この家に1人で住む老人、名前は桜庭庄之助。少年の母方の祖父である。


少年の父は医師でいつも忙しく、母も少し病弱で留守にすることが多かった。


少年の相手はいつも近くに住む祖父の庄之助であった。その為か極度のおじいちゃんっ子になってしまっていた。


学校からは自宅よりも、庄之助の住むこの家へ帰る事の方が多かった。


今日もクラスメイトと喧嘩し、泣きながら祖父の家へと帰宅した。



庄之助宅、中庭


少年の祖父、桜庭庄之助が1人縁側にて日記を読んでいる。


日記を見ながら過去を振り返っているようだ、ページをゆっくりとめくりながら、笑ったり、頷いたり、時には涙ぐみながら、1人思い出に浸っている。


すると、少年が大きな声で呼びかけた。


「おじいちゃん!」


裏の勝手口から中庭へ走り込んでくる少年。庄之助は少し驚いたが、一雄である事が分かると満面の笑みを見せた。


「なんじゃ、なんじゃ?騒々しいのぉ。」


少年は庄之助の横に腰掛けると直ぐに問いかけた。


「おじいちゃんは、昔すごく強かったんだよね?」


庄之助は当然だと答えようとしたが、少年の目に涙の後を見つけ。


「なんじゃ?また、泣かされたのか?」


少年は首を横にふったが、当然嘘である。庄之助はため息をつきながら言った。


「確か約束したはずじゃったな、人前では泣かない、強い男になると。」


「泣いてない、人前では泣いてないよ。」


「本当か?」


「うん。」


「そうか、ならいい。」


そう言って庄之助は一雄の頭を撫でた。


つづく

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