表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/87

5、守人

 家に戻り、私は早速魔界に行く準備をしようとしたが、メイドさん達が妙に騒がしい。

私はシャーロットを見つけ、訊いてみた。


「シャーロット、どうかしたの? 家の中が騒がしいね」


「アンナ⋯⋯。魔界の守人のことは聞いたかしら?」


「うん。さっきセイフィード様のお屋敷で聞いたよ。セイフィード様も、セイフィード様のお父様も魔界の選抜に参加するんだって」


「アンナはその事を聞いて大丈夫なの?」


「私、もしセイフィード様が守人に選ばれたら、私も魔界について行くって決めているから」


「そう⋯⋯。ゾフィー兄様も守人の選抜に参加するの。それを聞いたエレナ姉様はショックで倒れてしまって、それで家の中が騒がしくなってしまっているの」


「エレナ様が⋯⋯。そんな⋯⋯。私、エレナ様の様子を見てくる」


「えぇ、そうして頂戴」


 エレナ様は実は今、二人目を妊娠中だ。

待望の二人目の妊娠で、とても喜んでいたのに。

もし、ゾフィー兄様が今、魔界の守人になってしまったら⋯⋯、離れ離れになってしまうのだろうか⋯⋯。

そんなこと、絶対にダメだ。

でも、エレナ様も、エレナ様の長男スカイも、魔界に行くことは容易でないだろう。


 私とシャーロットは、そっとエレナ様の部屋に入る。

エレナ様は大きなベットで一人、お腹に手を当て、涙を流し寝ていた。

エレナ様のお腹の赤ちゃんは、シャーロットの話だと、問題ないらしい。


 毎晩、この大きなベットでゾフィー兄様と一緒に寝てるんだろうな⋯⋯。

エレナ様一人じゃ、このベットは大きすぎる⋯⋯。

早く、ゾフィー兄様が帰宅して、エレナ様を慰めてあげて欲しい。

守人には選ばれなかったよ、大丈夫だよってエレナ様に早く言ってあげて欲しい。


 暫く、私とシャーロットはエレナ姉様を見守っていたけれど、シャーロットのお母様に呼び出されたので部屋を出ることにした。

すると、すぐにシャーロットのお母様は私をギュッと抱きしめ、背中を優しくさする。


「アンナ。きっと、きっと大丈夫よ」


 シャーロットのお母様は私を慰めてくれている。

でも、私は魔界に行くことに、全く躊躇(ためら)いがないのに。

どうして、シャーロットも、シャーロットのお母様も、私を哀れんでいるんだろう。

私は大丈夫なのに⋯⋯。


 その後、私は自室に戻り、魔界に持って行くものを、大きな鞄に入れ始めた。

魔法陣ノート、ネックレス、ドレス⋯⋯、どれもセイフィード様から貰ったものばかり。

でも、このドレス一人で着られないんだよね⋯⋯。

うーん、取り敢えず持って行くだけ持って行こう。

やっぱり、自分で着られる服とか多く持って行くほうがいいよね。

あと、お菓子も。

もしかしたら今後、食べられなくなるかもしれないから、多めに持って行こうかな。

大きな鞄が物でパンパンに膨れ上がった時、私の部屋の真ん中に突如魔法陣が現れた。

その魔法陣中央にセイフィード様が現れた。


「セイフィードさまっ、びっくりしました」


「アンナ。決まったよ」


 セイフィード様の顔は真っ青で、魂が抜けたような虚ろな目をしている。

話し方もいつもの優しさはなく、私を拒絶するような響きがある。


「決まったって、魔界の守人の事ですか? 誰に決まったんですか?」


「俺に決まった。魔界の守人は俺に決まった。だからアンナとの婚約は解消する」


「⋯⋯⋯⋯どうしてですか? 私はセイフィード様と一緒に魔界に行きたいです。だから婚約解消なんて絶対に、絶対にしたくないです。今すぐに私と結婚して下さい」


「アンナは何もわかっていない。魔界の恐ろしさを」


「セイフィード様だって、魔界のこと知らないですよね」


「俺は知っている。何度か行った事があるから」


「⋯⋯私は、魔界が恐ろしくても、私はセイフィード様と一緒に行きます。絶対に離れないんだから」


「アンナ。魔界に行けば必ず後悔する。後悔してからでは遅いんだ」


「後悔なんてしませんっ。私はセイフィード様と一緒にいられるだけで幸せなんだから」


「アンナ、違う幸せを見つけるんだ。『サーム・サーム・アーティア・ソーム』」


 セイフィード様は突如、私に向かって魔法を唱えた。


「何をしたんですか? どんな魔法を私にかけたんですか?」


 私の体がほのかに暖かくなり、瞼が重くなる。


「いい夢を見られる魔法だよ、アンナ」


 段々と私の体の力が入らなくなり、セイフィード様に寄りかかる。

私はセイフィード様と離れないように、セイフィード様の服を掴みたいのに、手に力が入らない。

私の胸が死んでいくかのように重く苦しい⋯⋯。

そんな私をセイフィード様は抱え、ベットへと歩き出す。


「いやだ⋯⋯、いやだよ⋯⋯。お願いっ。私を置いていかないで⋯⋯。私も一緒に魔界に連れて行って⋯⋯。お願い⋯⋯、セイフィード様」


 私の目から涙が溢れ落ちる。

とめどなく溢れ落ちる。

けれど、セイフィード様は泣いている私を一切見ようとしない。


「おやすみ、アンナ。俺のことは忘れて、いい夢だけを見るんだ」


「いやだ、いやだっ。セイフィード様にもう迷惑掛けないから⋯⋯、腕輪も、腕輪の魔力もいらないから、一緒にいて⋯⋯、離れないで⋯⋯」


 セイフィード様は私をベットにそっと横たえる。

私は、寝ないように必至に耐えていたけれど、もう限界だった。

私の瞼が閉じ、体の力が全く入らなくなる。


「さようなら。俺のアンナ」


 セイフィード様は私のおでこにキスをした。

同時に私の意識が深く闇に沈んでいく⋯⋯。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ