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ファンタジーな世界に転生したのに魔法が使えません  作者: 花が咲く
第2章<セイフィード様との出会い>
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1、奴隷

 コルベーナ侯爵邸の隣にも大きいなお屋敷がある。

ネヴィリス伯爵家の屋敷だ。

私と同じ伯爵家だけど、格が違う。

伝統も、名誉も、財産も全て揃っている上流貴族である。

ネヴィリス家の当主は魔法長官だ。


 そんなネヴィリス伯爵家に、魔法鑑定士トマス先生を仲介して、ゾフィー兄様が魔力のない私のことを相談していた。

まぁ、それがきっかけでお隣に住むエレナ様と知り合ったみたい。


 そのゾフィー兄様の相談のお陰で、私の腕輪はネヴィリス伯爵家で作られた。

今もなお、魔力を随時(ずいじ)付与してくれるのはネヴィリス伯爵家だ。


 私は早く自分自身でキチンとお礼をしたかったが、ゾフィー兄様が忙しく2年の月日が流れてしまった。

だが、ようやくゾフィー兄様の時間に余裕ができたため、私を連れ立って、ネヴィリス伯爵家の屋敷に伺った。


「久しぶりだな。ゾフィー。親衛隊での活躍聞いているぞ」


聡明そうなネヴィリス伯爵がゾフィー兄様に挨拶した。


「長い間、挨拶が遅れて申し訳ございませんでした。この子が私の妹、アンナです」


ゾフィー兄様は私を紹介し、私に挨拶するように促した。


「挨拶が遅れて申し訳ございませんでした。私はアンナ ・フェ・シーラスです。腕輪を作って頂きありがとうございました。私には、なくてはならないものになりました。心より感謝しています」


コルベーナ侯爵家で培ったマナーを遺憾(いかん)無く発揮し、私は礼を述べた。


「あぁ、その腕輪は私の息子が作ったんだよ。応接間にくるように言ったんだが。おそらく図書室にいると思うから行ってきてはどうかな」


ネヴィリス伯爵はどうやら私を追い出して、ゾフィー兄様とお話がしたいらしい。


「はい。そうさせて頂きます」


 ネヴィリス伯爵の御子息セイフィード・フォン・ネヴィリスは、私の二つ年上の11歳で、かなり魔力が高いと、ゾフィー兄様は言っていた。

魔力が高く、なおかつ私の腕輪をわずか9歳の時に作ることができたなんて、天才に違いない。

私はネヴィリス伯爵の御子息に会えるのが、楽しみでしょうがなかった。

あわよくば友達⋯⋯それ以上になれたらと、淡い気持ちを抱いていた。


「こちらに、セイフィード様がいらっしゃいます」


メイドさんが私を図書室手前まで案内し終わると、そそくさと怯えながら去ってしまった。


なんだ、なんだ。

普通、中まで案内してくれるのがマナーじゃないか、とモヤモヤしながら私は図書室に足を踏み入れた。


図書室の奥で、窓辺に寄りかかりながら本を読むセイフィード様がいた。

セイフィード様は、静けさをまとっており、完璧に整った顔をしている。

髪はダークブロンド、目はダークグリーン。

ちょっと影のある美少年である。

ただ、魔力が強い証である痣が首筋からかなり下までありそう。

服を着ているので、その痣がどれほどの大きさかわからない。


「わぁ! なんて大きな痣。うらやましい」


つい、私は大きな声を発してしまった。

私ってば、バカすぎっ。

手紙の件もそうだったけど、考えるよりも行動、いや今回は考えるよりも言葉が先に口からでてしまった。


「誰だ? おまえ」


「わっ、わたしはゾフィー・ティ・コルベーナの妹、アンナ ・フェ・シーラスです。コルベーナ侯爵家でお世話になっています」


「ふぅーん。おまえがあの⋯⋯で、何のよう?」


「あの、腕輪のお礼を言いにきました。腕輪を頂いてから私は明るく過ごせるようにまりました。ありがとうございます。心から感謝してます」


私が感謝の意を伝え終わらないうちに、突如、セイフィード様が呪文を唱えた。


『ブルーム・イ・ベントス』


呪文を唱えたと同時に私の腕輪がセイフィード様の手に移動した。


「これ、結構大変だったんだよね。作るの。それなのに感謝の言葉だけ?」


「か、返してください!!」


私は思っきりセイフィード様に詰め寄り手を伸ばした。

手を伸ばしたが、セイフィード様も腕輪を持った手を高く伸ばしたので、奪い返せなかった。


「おまえ、俺が怖くないのか?」


「は? 何が怖いんですか? それより早く返してください」


「あぁ、そうかおまえは⋯⋯。まぁ、いい」


セイフィード様はそう言うと、私の手を取り、奪った腕輪をつけてくれた。


「おまえ、俺に感謝してるなら、俺の奴隷になれ」


唐突にセイフィード様は偉そうに私に命令した。


「は? 嫌です。なんで奴隷なんですかっ」


「おまえ、お金持ってないだろ。そうすると肉体労働ぐらいしか俺に貢献できなさそうだし。だから奴隷」


「最低ですね。私、失礼しますっ」


「あ、そう。じゃあ別にいいけどね。でもその腕輪に魔力付与してるのも俺だけどね」


「もし私が奴隷にならなかったら⋯⋯⋯?」


「当然、魔力付与なんてしないよ。俺にとっては面倒くさいだけだし」


「奴隷って、私はいったい何をすればいいんですか?」


「うーん、そうだな。そのへんのくだらない学校の宿題をやってもらおうかな」


「私は2歳年下ですよ。できるわけないじゃないですか」


「たしか、おまえって座学だけは優秀って聞いてたけど。もちろん実技を伴う宿題なんかやらせないさ。呪文を覚えるために何回も書かせるような宿題をやってもらう」


「なるほど⋯⋯」


って納得してどうするんだ。私。

でもまぁ、それくらいならいいかな。

タダで魔力付与してもらってるし。


「で、どうする? 奴隷になる? ならない?」


「わかりました。でもせめて、“おまえ”ではなく“アンナ”と呼んでください」


「ふん、生意気だな、アンナ。言っておくが、俺の命令に否定はなしだ、肯定だけしろ。奴隷だからな」


セイフィード様は私を馬鹿にしたように笑みを浮かべた。


「わ・か・り・ま・し・た。セイフィード様」


「じゃあ、契約をしようか。アンナは魔力がないから血の契約だな」


セイフィード様はペンと紙とペーパーナイフを持ち、それを私に見せた。


「え、嘘でしょ⋯⋯本当に?」


「あははは、そう、嘘だよ。アンナは面白いな。表情が丸わかりだ」


く、悔しい。

完璧にセイフィード様にからかわれている。

言い返してやるっ。

うーーーんっと、えーーーっと⋯⋯⋯⋯。

ダメだ、何も思いつかない。

こんな11歳の子供にからかわれるなんて、私ってなんて間抜けなんだっー。



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