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2.
夜の町を一人歩く。数日前は付いていた街灯も既に切れ、辛うじて空に浮かぶ満月の光によって夜の町は照らされていた。
真っ暗な世界、ありふれる周囲の人工物に人の声も自動車の走る音も一切ない。あるのは風が吹く音だけだ。そんな中、無性に大声を出したくなった。ただ感情のままに叫びたい欲求。こんな事人がいた時は、周りから白い目で見られてしまう。変人として見られてしまうだろう。だが、今そんなことをしてもそんな目で見る人は誰もいない。
・・・それでも叫ぶことはやめておくことにした。理由は特にないが、数秒前まで叫びたがっていた感情は急に冷めてしまった。
街路を歩いていると、正面に小学校か中学校か、校舎が見えてきた。なんとなく、今日の寝床はここにしようと決めた。校門に錠がかかっていたが、来賓用の小扉の方は閂が外れていた為すんなり入ることが出来た。
校門を抜けるとピロティの一階部分があり、2階は校舎と校舎を繫ぐ廊下になっていた。ピロティを抜け、グラウンドにいったん出て、そして校舎の入口から中へと入っていく。