いきなり死ぬのか
目が覚めると俺は見知らぬ場所にいた。どうやら俺は生きているらしい。辺りを見回すと、どうやらどこかの路地裏のようだった。俺は頭の中にハテナマークを浮かべていた。電車に引かれて生きているなら、普通線路の上に寝てるか、病院のベッドの上のはず。なのだが、ここは明らかに違うし、それどころか全く見たことのない場所だった。体に異常な所がないか確認した後、俺はこの路地裏から出てみた。すると、辺りは見たことのない場所だった。露店が立ち並び、様々な建物がレンガ作りだった。ここはどこか外国なのか?と思ったがそうでもないことに気付いた。文字も喋る言葉も全く見たことも聞いたこともないものだった。多種多様な人達がいるが、皆が同じ言葉で話し、同じ通貨で買い物をしている。そしてその通貨は明らかに今の時代にそぐわない物だ。その通貨は鉄のようなもので、重さを計りその重さによって軽い鉄をお釣りとして渡している。どう見ても俺の知ってる世界とは違う。
そんな風に周りを観察していると、後ろから声をかけられる。悪そうな人相のやからが3人。どうやら金を出せと言っているようだ。言葉が通じないので、通じたらいいな~と思っていたら、突然そいつらの声が聞き取れるようになった。そしてこう言われていた。
「変な格好の兄さん、早く金目のものだしな。」
突然言葉がわかるようになって、俺はラッキーと思いながらこう言った。
「あの鉄みたいなの俺持ってないんだ。他を当たってくれ。」そう言ってその場を離れようとしたら、「舐めてんのか、コラ。」と背後からプスっと。
え、と思ったが下を見るとナイフが俺の心臓を貫いていた。あ、俺今度こそ死んだんだ。と思い倒れようと思ったその時、俺は彼らを見ていた。彼らも俺を見ていた。刺したはずのナイフからは血が滴り落ちていた。刺さっていたはずの俺の心臓部分は、何事もなかったかのように鼓動を刻み、血がつき破れていたシャツも新品同様になっていた。
「おまえ、確かに刺したはず。なんで生きて、なんで無傷で、なんでそこで俺たちを見てる!」とまくし立てる。俺も状況がわからず、頭を掻く。すると、3人組は一斉にこちらに向かってナイフを持って動き出したみたいなんだが、そいつらの動きはめちゃ遅い。まるでスローモーションのように見える。一歩進むのに10秒以上の時間を要している。3人とも俺を今度こそ刺してやろうとしているみたいだが、あまりにも遅いので3人にデコピンでもしてやろうと思い左から順番にデコピンをしていった。最後の3人目にデコピンをすると、時が動き出したかのように、動きが戻る。そしてデコピンを喰らった3人は、うわーと悲鳴を上げて吹き飛んでいた。壁に人形が残るほどの勢いでぶつかっていたので、3人とも意識を失っていた。俺は何これ?と思いながらこれからどうするか考えていた。するとまた後ろから声を掛けられた。
「路地裏で3人組が恐喝してると通報があったから来てみてたら、君がやったのか?」
俺はその声の主を見た。騎士のような格好をした、顔立ちの整った青年だった。聞かれた事に答えるなら、そうだ。と答えるのだが、そう言っては良くないだろうと思い、どうしたものか?と考えていると。
「いや、とりあえず詰所まで4人とも連行させてもらおう。」そう言われ、そりゃあまずいと思う。何分状況がまだ飲み込めていない中、色々聞かれても答えられない。これは一時撤退した方がいいな。と思い一歩後ろ向きに下がる。すると俺の体の前を風が走ったかと思うと、俺のシャツとズボンが真っ二つに切られていた。
「逃げようとするなら裸で逃げることになるよ。」それは服を切る前に言えよ。と心で悪態をつきながら、服直らないかなと思った。すると切れて地面に落ちるはずたった服が何事もなかったかのように、戻っている。俺は少し驚いていたが、切った相手はもっと驚いていた。
「なぜ服が、確かに先ほど服だけを切り裂いたはず。」と少し物騒な事を言い、「どうやら少し本気を出さないとダメみたいだね。」と笑顔で話す。すると剣に手を添えこちらに向かってきた。のだが遅い。さっきの3人組とまではいかないが、遅歩きのようなスピードで突っ込んでくる。俺は先ほどの反省を生かして、直接当てるのではなく、すんど目をしようと思い、彼の顔の前にすんど目のジャブを放った。すると、時間が元に戻り、彼はすんど目した俺のジャブの威力で顔面が羽上がった。
そして彼は俺を見て笑いだした。